定年後の読書ノートより
「文学入門」再読、桑原武夫著、岩波新書
優れた文学は、面白い。何故か。そこには働きかける心の動きがあり、必ず緊張感がある。人間のインタレストが満足されるとは、人間と環境が葛藤を経たあと、一定の均衡状態に達したことを意味し、その時人間はひとつの満足感を得る。

生きるとは、人生をもっとも充実した仕方において、理性も、悟性も、感性も、そして身体を含めて全的に、生きるということである。

よき行動とよき人生を産み出すためには、人生にインタレストを持ち、感動する心と常に新しい経験を作り出す構想力とが必要である。

我々の理想は、人間をせばめる克己ではなく、人間性の充実した全的な展開でなければならない。

優れた文学とはどういうものか。

内から染み出たおもしろさが優れた文学の自己目的である。

文学は常に新しいものを持っていなければならない。人が文学に惹かれるのは、かたくなになった心のカラを打ち開いて、新しい人生を発見せしめ、あるいはあらたに人生を再発見せしめることである。人間は陳腐なものにインタレストを感じることは少なく、これに全身を打込んで把握しようという熱意は起こりにくい。人生を生きるということは、不断に新しい状況に対処して、新しい経験を形成していくことである以上、生活欲のある人間が新しさにインタレストを感ずるのは、自然の健康な要求であって、文学はこれに満足を与えなければならない。偉大な作品は、常に新しい発見がある。真に優れた作品は、題材の新しさの外に、新しい発見を持っている。大小の発見によって、文学は人間の世界を大きくし、深くし、その実質をます

トルストイは誠実さを芸術の最も大きな要素とした。誠実さとは、作者が対象に対して全人的働きかけをしているということである。明解でない作品は人を喜ばせない。人間は理解出来ないものには感動しない。苦悩に満ちた真剣な経験こそ、人に感動を与えることが出来る。

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