定年後の読書ノートより
現在人の作法、中野孝次著、1997年岩波新書
著者はあとがきで次のようにまとめている。戦後日本経済は、高度経済成長という、日本史上かってなかった文明の転換を経験し、大量生産―大量消費―大量廃棄という生活上の大変化に人間の心のほうが対応しきれなかった。戦後50年間、日本では昔からの作法と美徳をことごとく封建的として破壊してしまった。壊すだけ壊しておいて、それに代わる新しい規範、作法を創りだしてこなかったところに今日の混沌状態がある。作法とは、倫理観が形にあらわれたものである。倫理観を新しく創造せずして、作法だけを正すことは出来ない。だからこれは手にあまる問題でもある。しかし見過ごしてもおけぬ

自分はこの本を読んで、我々人生の幾つか経験を重ね、今や人生の大半を終了し、残りわずかな時間しか持たない人間にこそ、声を大きくして、自らの恥辱感もかえりみず、次世代のマナー確立を叫ぶべきではないかと発言したら、哲学セミナーにて、吉田千秋先生いわく、今の世の中、欲望を刺激して、何が大切かを判らなくさせている社会では、人々に求められるのは、しっかりとした自己制御能力であり、これをしつけという言葉で言えるかどうか、これをしつけという言葉でくくるのはどうかと思うと言われた。しかし、じぶんも、このまま見過ごしてもおけぬと考える。

哲学者中野孝次氏はマナー箇条書きとして下記のようなものを新書内であげている。

  1. ジュース缶をやたらあちこちに捨てるな。公共の場所で飲食するな。
  2. 携帯電話でところかまわず電話するのは、珍しい玩具を手にした子供のようだ。
  3. 巧妙な新製品購買の商業戦略に踊らされるのを止めたらどうか。
  4. クルマは便利だが、公害を発生させる道具でもあることを忘れるな。
  5. マナーの基本原則は自分がして欲しいことを他人にもすることにつきる。
  6. 自分のことしか考えぬ人間は人間社会に生きていく資格がない。
  7. 作法はまず親が教えよ。作法を知らぬ子は、人間社会に迷い込んだ猿だ。
  8. 食事は子供に作法を教える最も良い機会である。
  9. 日本には世界に類のない型の文化があった。型から入って奥義に達した。
  10. 教育の目的は人間としての品性を養うことだ。
  11. その国の歴史と文化を勉強しないで、浅薄な感想を軽々口にするな。
  12. 他人と語る時は、微笑とありがとうを忘れるな。
  13. 人の世には守らなければならない掟がある。個を越えた価値体がある。
  14. 社会にはしてはならないことがある。それを尊重するのが、作法の始まりである。
  15. マナーとは人を美しくするためのものである。
  16. 正しい言葉使いはその人の品性を高く見せる。

ここをクリックすれば、読書ノートの目録に戻れます。