定年後の読書ノートより

再生産論と恐慌(5)、不破哲三、雑誌経済5月号
エンゲルスはマルクスの死後、マルクスが残した8部の草稿を基に、「資本論」第2部、第3部を書き上げている。再生産論と恐慌の問題では、マルクスの思考の発展を追跡する上で大事な意味を持つのは、第1草稿第3節である。マルクスは、この第1草稿では「経済表」という図解には頼らず、全てを文章で説明しています。経済図表では単純再生産についての1年かぎりの表ですから、拡大再生産への踏み込みが難しいと感じたかもしれない。

マルクスは、拡大再生産が、資本主義生産様式のもとでは、それ以前の生産諸様式にくらべて特別に大きな規模をもつ。マルクスは、「資本論」第2部における再生産論のなかで、再生産過程の順調な発展とその諸条件の研究だけでなく、その撹乱の過程―均衡諸条件が「不均衡」に転化する過程の研究―運動論的な研究を課題とし、そのことを第2部での再生産論の重要な構成部分の1つのことにしています。

本来なら、その商品が、最終的な消費者によって購入された時にはじめて、資本家Aにとって、資本の循環の最終局面であるW−Gが完了したことになり、手にいれたG‘を投入して次の生産過程を開始することができるということが、流通過程の普通の進行です。しかし、その過程に商人と銀行が介在することによって、商品が消費者の手元にまだとどいていないその中途の段階で、つまり商品が流通段階に留まっている段階で、資本家AにとってはW−Gの流通が実現したことになる。マルクスがまず「流通過程の短縮」あるいは「再生産過程の加速」と規定したこの運動形態には、W’―G‘は未解決なのに、流通過程あるいは再生産過程は表面上では順調に進行できるという重大問題が秘められている。

流通過程が「短縮」されるということは「販売」が「現実の需要から独立」し「架空のW−G−Wが現実のそれにとってかわる」ことであり、それによって「恐慌が準備される」ことであり、それによって「恐慌が準備される」というマルクスのこの指摘は、大変重要です。商品の商人への販売という行為は、きわめて単純な経済行為ですが、マルクスは、これが「現実の需要」から再生産過程を独立させるもっとも簡単でもっとも基礎的な形態となること、言い換えれば、再生産過程のなかで恐慌を準備する萌芽的な運動形態となることを、発見したのでした。そこにあるのは、恐慌の可能性を現実性に発展させるうえで、きわめて重要な要をなす危険な運動形態の誕生でした。マルクスは、「流通過程の短縮」における信用制度の働きに目を向け、この運動形態との関連で信用制度の重要性を改めて意義付けた。

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