定年後の読書ノートより
再生産論と恐慌(第7回)、不破哲三、雑誌「経済」7月号
資本論全3部は、マルクス生前中に、全巻マルクス自身の手によって、完成されたものではない。マルクス死後、エンゲルスは、発見された遺稿に基いて、再編集し、第2部、第3部はエンゲルスの手によって完成されたものである。しかし、執筆した本人ではない別人が完成した第2部、第3部であるだけに、いろいろと不具合な箇所がある。不破さんは、これを追求しながら、改めてこういう視点で、資本論を読んで欲しいと読者に示唆している。

本シリーズで一貫しているテーマは、マルクスは恐慌に関してどこまで資本論で書いているかである。何故恐慌が起きるか。結論はいうまでもなく資本主義的生産様式の根底に働いている生産と消費の矛盾である。即ち大衆の貧困と資本主義的生産様式の衝動の矛盾が恐慌を起させるという原則は誰もが認識している通りである。

問題は、資本主義的生産様式の衝動の矛盾とは何かである。エンゲルス自身が再規定しているこの衝動について、不破さん自身、どうも不明確で理解困難ともらす。

そこで、不破さんは「ロンドンノート」の草稿を丹念に再読し、「再生産過程の撹乱」とは、再生産過程と貨幣資本の運動のことであると再定義している。

即ち、ある時期まで健全な土台の上で活動してきた再生産的諸資本が、自己資本だけに頼ってきた時期には考えられなかった他人の貨幣資本をあてにして、大儲けを企てる「資本の過多」にこそ、恐慌の解明すべき問題点があり、これを「再生産過程の撹乱」と不破さんは再定義する

マルクスは商業信用そのものの中には、「資本の過多」を引き起こす要因は存在しないと結論づけている。それでは何故恐慌が起きるのか、「生産と消費の矛盾」が資本主義的生産様式の根底に働いていて、再生産過程に信用制度を通じて、外部から投入される貨幣資本が、再生産過程を膨張させることが、「再生産過程の撹乱」の解明にむすびついていくのだと不破さんは言う。しかし、マルクスはこの問題を体系的に進めたのか、それとも進める積もりであったが、最終的に未完のまま人生を終えたのか、今となっては判らないとし、それだけに我々はこの点に注意して、資本論、第2部、第3部を読んでいかねばならないと言われる。

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