定年後に読む資本論

エンゲルスと「資本論」 (上・下)、 不破哲三著、新日本出版社、各2400
1872年ツァーリ・ロシアの首都ペテルブルグで「資本論」ロシア語版が発行された。何故、当時のロシア専制政府検閲を通過出来たのか。検閲官曰く「本書は疑うところなき社会主義的性格を帯びているとはいえ、その述べるところは何人も理解出来るとは決して称し難きゆえ・・」さもあらん。フランスの検閲では「資本論はドイツの形而上学であってフランス人は全然理解しないだろう」と出版許可。

確かに資本論は難しい。非常に難しい論文である。これを理解するには哲学用語・古典派経済学の基礎知識のマスターは当然のこと、当時の歴史的背景そして何よりもマルクスやエンゲルスに興味を持たないととてもではない。

不破さん、しばしば青年達から「資本論はとてもでは…」という声をいたる所で耳にする。そこで不破さん、もっと若い人達に資本論のいろいろな背景を体系的に語らねばならないと考えられて、「雑誌経済」に「エンゲルスと資本論」を連載されたのが 199510月、その15回のシリーズを1冊にまとめて出版されたのが本書。

だからこの本の内容は資本論を読むために必要な幾つかのマルクス・エンゲルスのやり取りも生々しく、知らず知らずの内に資本論の世界に引き込まれていく。マンチェスターのエンゲルスの生活を詳しく知ったのもこの本によってでした。20年間の紡績工場支配人としてのビジネス生活を終えてマルクスの元に帰ってきたエンゲルスの喜び様が目に浮かぶ。

反デューリング論こそ資本論を理解するための最高の参考書であり、そこに書かれたイデオロギーの定義、「結論を頭の中で構成し、それを基礎として、そこから出発し、ついで頭の中でそれらのものから世界を再構築するのはイデオロギーであって、これまで唯物論者は、こういうイデオロギーにとりつかれていた。」の一節は深く味合いたい。

かってソ連から発行された新書版の経済学教科書、そして哲学教程の2種類の参考書は自分達の学生時代金科玉条の如く信じて疑わず、自分の頭で考えることなどむしろ危ないこととし、如何にオーソライズされた基本概念に自分の考えを合わせ納得し、かつ幾つかの亜流に飲み込まれないようにするか、それが進歩的知識人の第1歩であった40年前。あの当時今の様な古典への学習態度が確立していたならば、ソ連のスターリン独裁主義も中国の毛沢東独裁主義ももっと早く崩壊し、ソ連も、中国も大国覇権主義におちいらず民主的な社会主義建設が出来ていたかも知れないと思ったりする。古典を学ぶ、この大切さをもう一度しっかり意識し、これからも自分の頭で考えて整理していきたい。

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