現代資本主義と資本蓄積論 東京都立大学名誉教授 金子ハルオ著

経済学ゼミナール T 現代資本主義と資本論 より

読後感

経済学ゼミナール6篇の論文の中で一番判りやすく、内容豊かで素晴らしい論文だと思った。

出来るだけ自分のまとめとして、記録しておきたいと思う。

はじめにー資本蓄積論の理論的位置と性格

資本論とは、資本主義社会の経済的運動法則を、科学的な論理で解明し今も規定し続ける古典。

第1篇(商品論及び貨幣論)・・・・・ 商品流通が、資本成立の前提

第2篇(貨幣の資本への転化論)・・・・・剰余価値は労働という商品によって生まれる

第3、4.5篇(剰余価値論)・・・・・資本は労働の一部を不払いにして、剰余価値を生ずる。

第6篇(賃金論)・・・・・賃金は資本による賃労働の搾取を隠蔽する仕組みである

第7篇(資本蓄積論)・・・・・ 剰余価値の資本への転化、資本主義的拡大再生産の過程

第2部では、資本家は商品を如何に価値通りに売り、生産手段を価値通りに買うかを論ずる

第3部では、資本家は如何に剰余価値を流通部門と分配するかを論ずる

第1節 生産と再生産、再生産の型と形態

どの様な社会でも、人間は生産手段と生活手段を生産する。資本主義のもとでは、資本家は剰余価値を追求し、互いに競争しながら、資本の拡大再生産を続ける。

第2節 資本の単純再生産過程 資本の再生産過程一般の本性の解明

資本の拡大再生産は、規模の拡大という本性を持つ。

  1. 生産を反復過程としてみれば、可変資本の源泉は労働者が生産した価値の一部である。
  2. 資本は他人の不払い労働の体化物であるが、この事実は平凡な意識には上らない
  3. 資本家はますます資本を増大するが、労働者は何処までも労働力しか売るものがない無産者

第3節 資本の蓄積過程 商品生産の所有法則の資本主義的取得法則への転換・

資本家の蓄積衝動と享楽衝動

資本の拡大再生産過程は、資本の蓄積過程に他ならないが、資本家と労働者とのあいだでは、実質的には不等価交換が行われるが、建前は等価交換である。資本家個人の気高い胸の内では、蓄積衝動と享楽衝動との間でファウスト的葛藤が展開される。やがて奢多が信用の手段にもなっているとのたまう。

第4節 資本の有機的構成とその高度化

不変資本と可変資本の比(c/v)が大きいほど、資本の構成が高いといい、高度化するという。

相対的剰余価値を高める為に、資本家は労働の生産性を高める。この結果、有機的構成は高度化する。

第5節 可変資本の相対的減少と相対的過剰人口の形成

資本家が労働の生産性を増大させる途上で、労働者は一方で吸収され、他方で反発される。この過程で相対的過剰人口が生み出され、産業予備軍が形成される。産業予備軍は剰余価値蓄積のテコになり、条件となる。

6 相対的過剰人口の実存形態

流動的、潜在的、停滞的過剰人口は労働者階級の重石であり、更に沈殿層には極貧民がある。「勧善失業者」

は、相対的過剰人口のごくわずかな部分をなしているに過ぎない。

第7節 資本としての富の蓄積とそれに照応する貧困の蓄積

資本のもとに富が蓄積され、それに照応した様々な形態で貧困が蓄積される。労働の生産力が高まった中での貧困であり、豊富の中野貧困をもたらす。

第8節 資本の本源的蓄積と資本主義の歴史的な性格

最初の資本は、資本の本源的蓄積によって生じた。それは経済外的な強制力という意味での暴力を用いて、一挙に遂行された。英国による植民地収奪、囲い込み運動による農業からの労働者供給、資本主義は、歴史的段階を経て生成、発展、繁栄、没落する。資本の蓄積過程は、社会科された生産と組織化された労働者階級という、資本主義の没落を準備し、不可避にする客観的、主体的条件を、その過程自体のうちに生み出しつつ進行する。

補論 労働者階級と勤労大衆の貧困化

絶対的貧困化」、私は長い間、社会主義革命は、労働者階級の絶対的貧困化が法則として貫徹する中で極限に憤激した労働者が革命を勃発するという図式を信じて、疑わなかった。しかし、これは資本論から離れ、スターリン個人崇拝と結びついた貧困化革命論であり、資本論を正確に学べばこのような政治論は生まれて来ないと金子ハルオ先生は言う。確かにそうだと思う。金子ハルオ先生は資本蓄積論をまとめてこう言う。

  1. 相対的過剰人口の存在は、貧困化の現れである。
  2. 相対的過剰人口は重石である。
  3. 貧困化は資本の蓄積と照応する。
  4. 国家資本主義と言われる現代特有の資本の蓄積様式は、或程度の修正と一方では貧富拡大。
  5. 現代の貧困は国際的連関、世界的規模での把握が必要
  6. 農民、自営業と言われる勤労大衆の貧困化
  7. 全需要と供給の隔たりという社会的意味での貧困化を把握せねばならない
  8. 経済的貧困化と共に、精神的貧困化をも把握して行かねばならない
  9. 貧困化の多様化、そして修正される貧困化、資本の蓄積様式に照応した貧困化。歴史的段階として把握。

ここをクリックすると目次に戻ります