科学的社会主義とは何か 学説・運動・体制の観点から 志位和夫 著

新日本親書44819923初版 78019941 第6刷

この本の読後感

ソ連社会主義崩壊直後に書かれた青年向きの講演のまとめ。

ソ連=社会主義とは言えない。すでにスターリンの権力掌握以後、この国の社会主義は大国覇権主義、帝国社会主義であり、命令主義、官僚主義の体制はソ連を解体へ導いた。住民の低い文化水準と民主主義の経験がないことも社会主義建設の重大な障害となっていた。こうした歴史的制約を考えるとき、高度に発達した資本主義国での社会主義化は、困難な粘り強い闘いを必要とするが、同時に資本主義の発展の中で形成された高度な生産力、教育と文明の高い水準、民主主義の経験、人間の個性の発展などそのまま受け継ぐことが出来るという点で、計り知れない新しい可能性を持っている。ソ連の失敗は社会主義の敗北を示すものではなく、歪んだモデルの破産に過ぎない。資本主義こそ深い病に犯されている。ソ連の資本主義化の道は幻滅におわるであろ。ソ連人民の利益につながる道は、社会発展の合法則的道の選択が必要なのだ。

日本の社会主義化は学説の面でも、運動の面でも、地球規模での科学的社会主義の発展に重要な貢献になる。

まえがき 20世紀と科学的社会主義

歴史は大きなスケールでみること。共産主義失敗史観は、20世紀の大きな流れを先ず見ることにより誤った歴史観であることが実証される。20世紀とは、まず第1に未曾有の民族自決と民族解放の歴史であった。そして民主主義の拡大こそ第2の歴史の特徴に挙げられる。この歴史の潮流を推進したのはどのような勢力であったか。科学的社会主義の理論と運動こそ、世界の民族解放と民主主義の促進者であった。ソ連の革命は、出発点に置いては、世界史の発展を促進するものであった。ソ連崩壊当時指摘された体制選択論は現体制順応を説くものであり、悪政を誤魔化そうとするものである。人類は矛盾を打開して、より良い社会を作る理性と能力を持っている、ここに深い信頼をおいて、一歩一歩、現体制を前向きに変革すること、これが科学的社会主義である。ここに日本共産党70年の歴史を学ぶ大切さがある。

序章 学説・運動・体制の3つの観点からつかむことの重要性。

体制というのは理論から出来るものですから、理論が誤っていれば、いくら長くがんばってもだめです。科学的社会主義は先ず何よりも学説である、世界の歴史と現在、そして未来を解明する科学的理論である。現代の世界を見とおす羅針盤としての生命力がどう発揮されているか。広く目を向けなければならない。

運動はそれぞれの国の社会の合法則的発展を促進するというところに、存在意義がある。

ソ連の事態は科学的社会主義そのものの破産を意味するものではない。発達した資本主義国での革命の事業こそがいよいよ重要な位置を占めてきていることの自覚と決意が強くもとめられる。

科学的社会主義というのは、唯物論と弁証法を基礎とし、人間は世界の真理を認識出来る、運動は相互に関連しあって発展するという考え方。

ホーキングもすべては運動のなかにあり、生成と消滅の中にあるという弁証法自然観の鮮やかな実証である。ホーキングの到達点である、密度の無限大の問題は一般的相対性理論という巨視的な現象を扱う理論と、量子力学という微視的な現象を扱う理論を結び付けることによって、宇宙というものは時間的にも空間的にも始まりも終わりもない、すべては科学で説明できるとしている。ホーキングの宇宙像には神の存在を本質的に無用なものとした。

科学的社会主義の世界観―世界の根底にあるのは物質の運動であり、すべては運動と発展のうちにあり、そしてその運動の法則を人間は認識できると考えている。

学説

マルクスの2大発見、それは史的唯物論と剰余価値学説。この2大発見により社会主義は空想から科学になった。

史的唯物論

基本的見地は、人間の社会も永久不変のものではなく、経済関係を土台とした法則に従って変わっていく、その原動力となるものが搾取や抑圧に反対して社会の進歩を目指す人民の闘いであるということ。共産党宣言の1848年では、民主主義も危険思想であったが、現在では国民主権は大多数の国々で常識となっている。民族自決も同様である。

国際紛争の平和的解決も進歩の方向にある。これらを動かしたのは諸国民のたたかいである。

剰余価値学説

資本主義経済は巨大な賭博になっている。証券市場は、賭博の集中点になっている。資本主義は株式という形で資本まで商品化してしまう。現代の資本主義は自らの存在そのものを危うくする「自己否定の要素」をはらんでいる。

社会の合法則的発展を促進する理論

科学的社会主義の学説こそ、自由と民主主義の面でも、民族自決の面でも、平和の面でも、その最も戦闘的な旗を、もっとも先駆的にかかげ、社会発展を目指す人民の闘いの羅針盤としての役割を果たしてきたということは、哲学、経済学、社会主義という分野で貫かれているだけでなく、自由と民主主義、平和の問題でも貫かれている。

運動 科学的社会主義に基づく運動とは、

社会発展の合法則的促進

観念的に描かれた理想社会に向かって、むりやりに進むのではなく、科学的社会主義の学説を指針として、その時々の社会の矛盾を明らかにして、その矛盾を人民の利益にかなった方向で、打開する法則的道筋にそって社会発展の促進をめざす。現在の状態を廃止する現実的運動こそ、科学的社会主義であり、この運動の諸条件は今、現に存在している前提から生ずる。

日本共産党の立党の精神は、何よりもその時々の日本国民の現実の苦難の軽減と、国民の利益と安全の擁護という方向にそった、社会発展の促進にある。

科学的社会主義の運動は、社会発展を合法則的に促進する運動である。それはその国の内部の矛盾、その国の人民の闘いが決定する。コミンホルムがスターリンの覇権主義の手段に利用された歴史は、科学的社会主義の基本に反する。

体制 世界的規模での本格的前進は今後の問題

ソ連覇権主義の解体と現代の世界。スターリン以来のソ連覇権主義の巨悪。世界政治における帝国主義的行動。ヒットラー・ドイツとの秘密条約に基づくバルト3国の併合、千島列島の不法な占領、ハンガリー、チェコスロバキア、アフガニスタンの軍事介入、各国共産党を支配下におこうとした覇権主義。ソ連覇権主義の解体により冷戦構造の解体となった。その結果アメリカ覇権主義こそ最大の闘いの的となった。各国共産主義運動への干渉がなくなったので、地球規模での運動の統一の可能性が出てきた。

レーニンのロシア革命は民族自決権尊重を世界政治の原則とした。レーニンのロシア革命は勤労者の生活と権利を擁護した。アメリカは現体制に自信を失っている。発展途上国には資本主義体制の勝利を裏付けるなにものはない。旧ソ連が資本主義化の道を急げば、必ず巨額の累積債務を抱えて経済破局に陥る。

アメリカの現状、発展途上国の現状、旧ソ連、東欧の現状、そして日本の現状、どれをとっても資本主義の未来は保証されていません。大きな視野でみれば、人類が、資本主義制度を乗り越えて、より高度な社会への道を切り開くことは歴史の必然です。社会主義への世界史的な移行は避け難いものであることは、何よりも資本主義の現実が物語っている。私達は人類が矛盾に満ちた資本主義の現状に安住せず、それをのりこえる力をもっていると考えているが、その道は自動的には進まない。科学的社会主義の学説に基づいて社会発展の法則的道筋を科学的に認識し、それを羅針盤にして、それぞれの国で社会発展を促進する自主的立場を堅持して不屈に闘う精力がいかに強固に形作られて行くか、ここにこそそれぞれの未来を切り開くカギがあり、世界の進歩を作り出すカギがある。

この本を読んで自分に残された今後のテーマ

  1. 学説 史的唯物論とは、この本の著述では、「基本的見地は、人間の社会も永久不変のものではなく、経済関係を土台とした法則に従って変わっていく、その原動力となるものが搾取や抑圧に反対して社会の進歩を目指す人民の闘いであるとまとめられているが、この表現は戦略としての記述ならば理解できるが、哲学としての記述だとすれば、あまりにも飛躍しすぎている。こうした記述をあたかも信仰の如く、金科玉条として仰いだ学生時代ならともかく、人生の大半を見つめて来た自分には、絶対にこのまま鵜呑みは出来ない。この考え方の緻密な理論的確立を理解出来ない限りは、如何なる言い回しにも合意することは出来かねる。この史的唯物論の哲学をきちんと勉強してみたい。
  1. 学説 剰余価値学説とは、このほんの記述によれば、「資本主義経済は巨大な賭博になっている。証券市場は、賭博の集中点になっている。資本主義は株式という形で資本まで商品化してしまう。現代の資本主義は自らの存在そのものを危うくする「自己否定の要素」をはらんでいる。」とある。ここが一番肝心のところ。自分がこれから、数年をかけて、しっかりと資本論を勉強してみたいと考えているのは、まさにこの記述の如く、生きてきた社会を総括出来るかどうかであり、これから始める資本論学習の楽しみの中心テーマである。

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