定年後の読書ノートより
20世紀の社会主義と21世紀への展望、東大名誉教授、藤田勇、経済新年号
社会主義史は大きく3段階に区切られる。

「第1段階」は1840年ヨーロッパ革命から1871年パリコミューンまでの時代。自由、平等、平和、友愛を説く市民革命の理念を、財産と教養ある市民の階級的利益の保証として限定するか、この理念をさらに私的所有、市場、競争、利潤、賃労働の概念で表象されるシステムにかわる共同社会として構想し、労働者階級的に展開したものが社会主義であることを宣言した時代である

「第2段階」は1880年から1960年代。独占資本主義段階に達し、社会主義を構想する革命と改良の乖離が激しく対立する時代である。

コミンテルンに組織される共産主義と社会民主主義との対立は明確となり、その焦点は労働者の国家権力独裁である。ソ連の現実権力につくボルシェビキ党の社会主義への展望は抽象的で、自由や民主主義を階級性の論理、階級独裁の論理で捉えた。その間、1929年の権力体系の中で、強行的な工業化、農業集団化路線は、労働者階級の相貌にドラスチックな変化をもたらした。

世界大戦後、革命を経ない新しい型の社会主義への道として民主主義路線、すなわち議会制民主主義、複数政党制の道による社会主義への道が開くかに見えた時、冷戦構造が始まり、革命は孤立化した。

1956年スターリン批判以後、ハンガリーのソ連支配糾弾、1960年81カ国宣言での世界共産党のソ連支持、1968年チェコの再生運動、政治的、市民的自由の実現を目指す社会主義再生の構想は社会主義「第3段階」の端緒である。同じ頃ソ連は上からの改革として十分な目途もないまま、ペレストロイカを始めた。内容は西欧的社会民主主義的性格であった。ソ連社会の矛盾は、指令経済の裏側で第2経済が展開、社会主義の儀礼化された忠誠と内面的世界の分裂、集権的党・国家規律の裏側に第2の政治が成長していた

ソ連崩壊後、新自由主義は多国籍資本の運動のグローバリゼーションと帝国主義同盟の軍事戦略の地球規模の展開の姿が鮮明に見え、戦後福祉国家体制の取り崩しが全世界的規模で推進、貧富の差が増大している。反核、平和運動、自然環境保護、反原発、女性解放運動等市民運動は、伝統的な階級闘争たる既成経済闘争、政治運動の外枠で、超階級的な新社会運動として展開されている。

自由と民主主義の社会主義的発展の主体的担い手として、新社会運動は成熟していく可能性は高い。人間の尊厳を確保すべき新しい民主主義的秩序を構築しようとするさまざまな社会運動が、自治体レベルから国家レベルへ、地域圏レベルから世界的レベルへと発展しつつある。自由と民主主義、社会主義の歴史が示すように、当面する現実的矛盾の克服の道の具体的な探求とそれによって提起される課題との実践的取り組みの中で、新しい地平は世界的に切り開かれるであろう

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