定年後の読書ノートより
手を動かすことから始まる
野見山暁治著、京都造詣芸術大学、
石膏デッサンと併行して、自分はクロッキーを勉強したのは、結果として良かったと思っている。石膏デッサンは、光と影、あるいは微妙な濃淡が教える際に都合は良い。教わるとそれなりに上達し、お手本のようなデッサンが程なく描けるようになる。

光の調子で立体感を出すというのは、誰でも程なく上手くなる。これは表現のパターン化をマスターしたからだ。しかしこれは日常生活からかけ離れた標本に過ぎないのではないか。

それに比べるとクロッキーは日常を想起させる生きた姿だ。生きた人間の息遣いがある。一瞬を捉える目の正確さと手の素早さが要求される。クロッキーは素早いものの動きを捉える目の動きとそれを捉える素早い手の動きを与えてくれる。

デッサンとは手を動かすことだ。描くということは、対象の隅々まで、目が入り込んで行くことであり、それにつれて手が動いて行くということは、自分の体内に記録されていくということだ。その記録の積み重ねによって、より深くものの内部を抽出出来るのではないか。デッサンをする手の動き、発想はそこからしか生まれてこない。

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