定年後の読書ノートより
マルクス・エンゲルス小伝大内兵衛著、岩波書店、評伝選、1600
東京大学経済学部では、今も資本論講義は必須科目であり、留年する学生の大半は、この講義に不合格の烙印を受けた学生である。東京大学経済学部にマルクス経済学の伝統を確立した先生こそ、この本の著者、大内兵衛先生である。日本の資本論読者数は、資本主義国としては世界1位とのこと。この背景の一つには東京大学の伝統がある。従って日本の経営者の多くが若き学生時代、しっかりとマルクス経済学を勉強しているということが、どれほど日本の資本主義を支えてきたことか。かって美濃部都知事当選の際、「最終万歳は大内先生をお迎えしてから」という有名な言葉も、こうした経緯に因る。その大内先生が書いたマルクス・エンゲルス伝記は堂々としたもの。慶応の小泉信三先生が書いたマルクス批判なるものを読んだこともあるが、この大内先生の風格の前には、日本のマルクス批判も陰が薄くなってしまう。 この本の最後もこんな言葉で終わっている。「この事実も知らないで、マルクス排撃をやるものは、今までも多く、今後はますますふえるであろうが、彼らはますます多くの大衆に笑われるにちがいない」。実に大御所の貫禄。学問の真実を極めた者だけが語れる味の深い一言。

ここをクリックすると読書目次に戻ります