定年後の読書ノート
人生の短さについて岩波文庫 ローマストア哲学者セネカ著
我々は心の平安を中国唐の詩人に求めがちだが、欧州にも人生を導き、心を慰めてくれるストア哲学があった。セネカは紀元前後に暴君ネロに殺された政治家だが、彼が友人に送った「人生の短さについて」は、現代の我々にも深く胸に響く対話篇である。その一部を抜粋した。
われわれは短い一生に生まれついているうえに、この短い期間さえも速やかに走り、人生に見放される

しかし、われわれは短い時間を持っているのではなく、実はその多くを浪費しているのである。われわれがそれを短くしているのである。人生は使い方を知れば長い。有り難いとも思われずに高位の者におもねり、自ら屈従に甘んじながら身を擦り減らしている者もある。また大多数の者達は確乎とした目的を追求することもなく、気まぐれで、移り気で、飽きっぽく軽率に次から次へと新しい計画に飛び込んでいく。

諸君は永久に生きられるかの如く生きている。すでにどれほど時間が過ぎ去っているか、諸君は注意しない。人生の残り物を自分自身に残しておき、何事にも振り向けられない時間だけを良き魂のために当てることを恥ずかしいとは思わないのか。生きることを止める土壇場になって、生きることをはじめるのでは、時すでに遅しではないか

君は多忙であり、人生は過ぎ去っていく。やがて死は近づくであろう。そして好むと好まざるとを問わず、遂には死の時を迎えねばならない。生涯の終末に至ったとき、何のなすところもなく長い間多忙に過ごしたことに気づいても、かわいそうに時はすでに遅い

君は,今までに熱心にしてきたこれまでの仕事よりも、もっと大きな、やり遂げておきたいことを知っているはずだ。

君はもっと偉大で、もっと崇高なものを自分に約束したはずだ。

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