定年後の読書ノートから
天平の甍、
井上 靖著、新潮文庫
遣随使、遣唐使の話は興味が尽きない。

当時の渡航船は何処で造ったのか。一つの船に何人ぐらい乗ったか。船頭の渡航経験はあったのか。海賊は出たか。中国へ着いてからの滞在費、帰還費用はどうしたのか。言葉も通じない人達がどうやって意志を伝えたのか。中国は広いのにどうやって、お互い連絡をとっていたのか。10年も20年も中国にいて、当初の意志は保持出来たのか。帰ってくる金はどう工面したのか。

こうした種類の疑問は歴史教科書には載っていない。かって中国を旅していた時、列車の中で中国人から面白い話を聞いた。昭和の始め頃、蘇州の或る古い寺の屋根裏から莫大な和銭が発見されたことがある。早速軍隊が来て総て没収していったが、日本の遣唐使留学生が、この寺に長く滞在していたという実在歴史より、遣唐使は莫大な金を日本から持ってきて、蘇州近くの寺に一時保管していたに違いないと。

井上靖の小説は、史実とフィクションを組み合わせ、鑑真和尚来朝、戒壇院建立の古代文化形成史を見事によみがえらせてくれる。

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