1998714朝日新聞 & ゾルゲ事件と中国( 尾崎秀樹著)
ゾルゲ事件とジャーナリズム 映画監督 篠田正浩氏 フォーラム21の会
フォーラム21の会で篠田監督がゾルゲ事件について講演,その要旨が7月14日朝刊にて紹介された。氏の講演は、現代史をどのように把握すべきかという非常に重要なテーマに関連しており、久しぶりに朝日新聞一読者として、知的興奮を憶えた。講演要旨は下記の如し。

私は少年時代、アカになるなと言われてきた。アカとは一種の恐怖記号であった。尾崎秀実氏は東京帝大卒という豊かなキャリヤと生活環境がありながら、中国竜華事件を契機に、密かにコミュニストの道を選択した。しかし、彼らが信じたソ連を中心とするコミュニズムが崩壊した現在、彼らがやったことに私は現在幾つかの疑問を持っている。ゾルゲ達は何故スターリニズムというものを見抜けなかったのか。今や世の中は変わり、国家体制すらも、ジャーナリズムの発信する情報によって変えられていくのではないかと感じ始めている。「裏切られた革命」を語るには、今こそゾルゲ事件を映画にする意味は高いと考えている。

紙上尾崎秀実の人生をかえたと言われる竜華事件について、秀実氏の弟である尾崎秀樹著「ゾルゲ事件と中国」に詳しい。尾崎秀実は白川次郎のペンネームでこの白色テロル中国竜華事件の抗議文を翻訳し日本に送っている。篠田監督はまた、これら昭和史の背景として過酷な暴力装置として作動した天皇制について、映画によって鋭く取り上げたいと語っている。篠田監督のご活躍に期待したい。

私は早速、朝日新聞社に講演詳細記録を欲しいと申し出た。篠田監督のゾルゲ映画作品完成と共に、篠田監督はゾルゲ事件をどのように見つめておられるのか、更にもっと詳しく知りたいと思っている。

ゾルゲが見た昭和…映画監督 篠田正浩氏…1998/11/23・・・・・NHK ETV特集放映・・・・・
今、ゾルゲ、尾崎秀実を新しく見直そうとする国際的な動きがある。今世紀最大の国際情報スパイとしてのゾルゲ・尾崎秀実像ではなくて、今世紀の世界動向を最も確かな目で見通していたジャーナリストとしての2人の人間像を学ぼうとする動きである。敗戦で呆然とした篠田少年を捉えたのは、同郷の師、尾崎秀実氏であったに違い無い。特高や、軍部指導者への憎悪は、結局狭い範囲での戦争責任追及にすぎず、これは時代を貫く姿勢にはならない。しかしゾルゲ・尾崎秀実を知っていくと、そこには昭和に対する別の見方が見えてくる。それは歴史を見通す力であり、現在にも通ずるいつの時代も一貫している社会を見る見方である。

篠田監督は、同盟通信社ビルからドイツレストランケテルをたどりながら、ゾルゲ、尾崎秀実こそ自由と尊厳をもって昭和を正確に見つめていた唯一のジャーナリストであったと述懐する。1935年ドイツ地理学会誌に載せられた「日本の軍部」と題する論文は、日本の農民、都市小市民、財閥、軍部ファッシストを正確に位置づけ、このままでは日本は戦争に進まざるを得ないと分析する。そして2.26事件の分析の正しさ、鋭さ、2人は明らかにジャーナリストこそ時代をリードすることを実証した先達者と言い切れる。一方天皇制バリアーによって日本のジャーナリストは何も突っ込めなかった。その時点で日本のジャーナリストは破滅していた。

情報を分析する知的能力は、人間社会を大切にする心と力がなければならない。篠田監督にとって、ゾルゲ・尾崎秀実の映画製作こそ、監督生活総決算の意味を持つ。大作が期待される。

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