定年後の読書ノートより
近代の政治思想、東大法学部名誉教授福田歓一著、岩波新書
人は言う。政治を動かしているのは力であって思想ではない。むきだしの言葉を使えば軍事力だと。イデオロギーなんてお飾りさと。多くの人はそう実感している。

しかし軍隊組織には思想があり、社会的事実は思想を契機としている。人間が生きれば、文化、制度、行動様式、秩序が生まれる。これが政治だ。政治の作用は必要とあれば、いつでも暴力を使う。権力関係も含む人間の共存状態が政治社会である。

かって人間の行動様式を規定していたのは、タブー、トーテムであった。宗教は文化であり、価値があり、人間のものの考え方だ。人類の歴史は宗教の歴史でもある。血縁や、宗教を外して政治を理解出来ない。

人間の共存関係、これは長く自覚されることは無かった。政治思想を自覚したのは近代ヨーロッパである。フランス革命は、政治思想によって政治社会を変えた。人間社会の秩序を一番安定させるには、現存秩序が自然であると信じこませることだ。自然の認識の自覚から人間は技術を生み、科学を成立させた。社会生活を人間が自覚する時、秩序は永遠ではなくなる。人間は社会を変えようとする。

ヨーロッパの近代化は自然の観念の組み替えから始まった。自然を認識する科学を方法化し、自然に還元出来ないものとして、人間の人格の世界、人間の自由の世界、思想によって変えることの出来る社会を見出した。

政治思想というものは、その時代の人間の物の考え方を規定する。政治思想というものは、その時代、その時代の対象としている政治の在り方に制約されると同時に、その時代の人間の考え方を根本的に規定する意味も持ちうるというおもしろい性質を持っている。

以上は、本書の序説である。人間は感性と理性を持つ。本論はこの論理で貫徹し、結論として、自己疎外からの解放は、感性ではなく理性の問題であり、政治生活の中での理性の回復こそ、今求められていると説く。

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