定年後の読書ノートより

がんの治療、北大名誉教授 小林 博著、 岩波新書

  • −われわれにいずれ訪れる病は「ぼけ」か「がん」のどちらかであるのに、なぜかがんだけが恐れられている。がんになってもこれに適切に対応していく知恵をそなえ、賢く生きていきたいものだ。
  • −細胞が老いれば、細胞はがん化しやすくなる。したがって老化を防げないのであれば、この世からがんをなくそうと考えるのは不可能なことである。
  • がんのことを悪性新生物ともいう。つまりがんは生体に出来る一つの新しい生物であり、その性格と挙動は時間経過で違ってくる。やがてがんは一人の人間を殺してしまうことにより、がん自らも死ぬ事までは気づかない。
  • TNM分類とは、tumor(原発腫瘍の広がり),lymph−node(リンパ節への転移),metastasis(遠隔臓器への転移)の略である。がんのステージの国際的共通基準である。
  • これまで、がん転移が見つかればもうだめという見方が支配的であったが、がん転移の関所役を果たす一次転移で、しかもその転移がんが外科的にうまく摘出できる条件のものであれば、患者の長期生存は大いに期待出来る。外科で摘出出来ない転移がんは放射線療法、化学療法に任せる。
  • 「定型的乳房切除術」にたいして、患者QOLを配慮した非定型的乳房切除術」とか「乳房温存手術」があるが、判断基準はリンパ節にがん細胞転移有無である。
  • 外科手術に次ぐ治療法はホルモン療法である。とくにタモキシフェンといわれる抗エストロジェン製剤は、手術のあと長く使ってもとくに大きな副作用は無く、乳がんの再発・転移の治療薬としてだけでなく、予防薬として有効である。
  • がんが進行したら生体はなぜ死ぬのか、よく分かっていないが、悪液質といい、身体がやせ細り、顔色も青黒く、皮膚は乾燥し、表情は見るからにやつれた状態になるが、これはガン細胞が出す、サイトカインのせいだといわれ、サイトカインの調整機構がわかれば、がんで死ななくてもよくなる期待がある。
  • 最近がんの痛みはよくとれるようになった。モルヒネの「長期反復経口投与」という使い方が出来るようになったからだ。モルヒネを頓服方式で使うのではなくて、時間を決めて規則正しく使う。痛みの程度によって、非オピオイド系沈痛剤、若オピオイド系鎮痛剤を使う。
  • 病気に負けない、がんに勝つという強い意志を持つ事も、大切だ。奇跡的に助かるがん患者は、患者の心や意志ががんを直したとしか言いようがない。未知の取り組みで、がんがひとりでに直ってしまうことがある。どんな治療でも、患者の心の支えは家族である。

ここをクリックすると読書目次に戻ります