定年後の読書ノートより
がんの予防―新版―北大名誉教授小林博著、岩波新書
細胞のがん化を研究するのは基礎医学、患者の診断治療は臨床医学、生活環境改善を推進する予防医学、この3本柱をまとめてがんの総括的予防が成立つ。がんの原因は発ガン性化学物質、放射性物理作用、ウィルスなどがある。遺伝的ハイリスクに対しては定期的検診をして最悪事態にそなえる。

がんの化学予防として、乳がん治療薬タモキシフェンがある。これは乳がんの再発、転移を抑えるのみならず、乳がん発生を抑える。タモキシフェンはがんの化学予防研究の大きなはずみになっている。さらにラロキシフェンなど副作用のない新しい抗エストロジェン剤の開発がある。大部分のがんは時間経過とともに次第に悪く変っていく。早期であればあるほどがんは悪性化していない。だから早く見つけたがんは、まだ悪性化していないから安心である。

手術後のがんの再発は、手術のとき見つけられないで残ったがんである。出来たばかりのがんはまことに静かながんで、時間とともに悪性化し周辺組織に転移する。遠隔転移は外科処置に困るものがある。がん細胞が出来てくるのは止むえないとして、問題はがんの悪性化の進展を予防出来ないことである。がん予防の為の食事は、野菜、果物とビタミン、繊維性食品などをつとめてとることである。また、タバコ、アルコールや脂肪、塩分はつとめて避けることである。

人間の老化はフリーラジカルが細胞のミトコンドリアでつくられ、これが細胞の遺伝子を傷つけるからだが、カロリー制限はこのフリーラジカルに有効である。タバコの熱によってニコチンからつくられるニトロソアミンというニトロソ化合物が代謝され発ガン物質になる。ダイオキシンは環境ホルモンの代表的なもので、精子の働きを弱めるだけでなく、第1級の発ガン物質である。

ストレスは活性酸素の産出を高める。がんの原因は食品やタバコだけでなく、ストレスも含めてがんのすべての原因が活性酸素によって一元的に説明できる。日本人の乳がん増加の原因は、高齢出産、食べ物の洋風化、脂肪の摂取量が多くなって来た為で、脂肪はみんな悪いという報告もある。カロリーの取り過ぎが良くない。BRCA遺伝子の欠損で予知される乳がんは全体の5%に過ぎない。

閉経後の乳がんは環境の影響が大きい。健康体の正常免疫を高めると、免疫の異常亢進が逆にがんの原因になりうる。老化は活性酸素によってつくられた酸化物質が細胞のミトコンドリアからもれてでてくるが、高齢者ではこれに対する抗酸化作用がうまく働かなくなってしまう。そうすると遺伝子が長い月日に突然異変で傷を作る可能性が高くなる。やがて癌化する。高齢者のがんはゆっくり増殖する。

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