定年後の読書ノートより
老化と死の設計図−人体V・遺伝子DNA・第4集−NHKスペシャル
8月9日放映NHKスペシャルは、生命テーマを追及した衝撃的な作品。現代人がTVから学ぶ情報量の多さのみならず、質の高さに感動。TVからもっと我々は学ぶべきだ。

一つの細胞の中にある23対46本の染色体に秘められている遺伝子、DNAのGTCA配列順序によって設計されている酵素制御こそ、人間の生命機能を司っている。

長寿遺伝子には、ベータアミド付着を制御する遺伝子E2があり、アルツハイマーになり易い遺伝子E4がない。これらの遺伝子は両親からの遺伝によって構成される。

人間は酸素を吸って生きている。しかし酸素吸入は細胞の中に活性酸素SODを生じ、この活性浮遊電子が細胞を傷付ける結果になる。細胞は修復せねばならない。ラセン状のDNAを解き、遺伝子を修復して再びラセン化する、この作業には2本の遺伝子を正確に同じ順序に並び替えられねばならない難しさがある。これは遺伝子末端テロメアが制御してこそ可能となる。

DNAに発生する傷、DNA切断していくアポトミス、これ等は老いと死を決定付けるDNAの機構である。当然ながらDNAに刻まれた傷の度合いが老化の度合いとなる。DNAの傷を食い止め、傷ついた細胞は細胞分裂で補完する。しかしここにもう一つの生命の秘密がある。細胞分裂にはある函数によって制御されている時間がある。正に寿命のローソクだ。

DNAラセンを解きほぐし、傷を修復する際に決定的影響を及ぼす線状遺伝子末端テロメア、不老不死はテロメアがキーワードである。テロメアが細胞分裂の寿命を決定づける。そこでテロメアに代わる働きを持つテロメラーゼがある。しかしテロメラーゼは生殖細胞のみに働き、体細胞では働かない。

人は必ず死ぬように仕組まれている。これが生命進化である。この事実は線状DNAと環状DNAの比較で明確となる。環状DNAではテロメアによる寿命限界は無くなるが、生殖細胞としての遺伝子の組み替え、すなわち子孫への遺伝子伝達は放棄せねばならない。テロメアには両親の死と引き換えに、子孫に情報を残す遺伝目的行為の諸刃の矢が仕組まれていた。生命の限界をつくるテロメア。しかし子孫に遺伝をのこすテロメア。

生命の深い進化の中で生物の祖先は、進化を選ぶ代償に、自らの生命の限界を受け入れた。生殖と死。鮭はこの行為を同時進行させる。しかし人間は生殖と死の間に長い時間を持つ事ができる。豊かに伸び行く子孫の成長を喜び、見とどけて自らの死を迎えることが出来る人間。それは大海原を舞台に少年に漁の技法を伝授する沖縄の老人の姿に象徴されていた。

以上がNHKTVの概要だったが、かってETV特集で見た、生命についての倫理を説いた森岡先生の番組と著作を思い出し、生命哲学はここから出発すべきだと思った。

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