定年後の読書ノートより
日本の思想、東大法学部教授丸山真男著、岩波新書
「甘えの構造」で土居健郎氏は、丸山真男氏著「日本の思想」を、日本人の精神構造を解明する書として、合計4回引用している。その引用をそれぞれ原著を対象して確認したかった。
  • 1−丸山氏は書く。「あらゆる時代の観念や思想に否応なく相互連関性を与え、自己を歴史的に位置づけるような中核あるいは座標軸にあたる思想的伝統は我が国には形成されなかった。」
  • 1−土居氏曰く。「丸山真男氏は日本思想の特徴として座標軸の欠如を指摘している。これは甘えの世界での、神ながらの道をそのまま肯定する日本的思惟の非論理的直感重視を意味している。」
  • 2−丸山氏は書く。「開国の結果生じた国家生活の秩序化と、ヨーロッパ思想の無秩序な流入は、ここに至って、国家秩序の中核自体を同時に精神的機軸とする方向において収拾されることになった。新しい国家体制には、キリスト教の精神的代用品を兼ねるという巨大な使命が託されたわけである。」
  • 2−土居氏曰く。「日本人は甘えを理想化し、甘えの支配する世界を以って真に人間的な世界と考えたのであり、それを理想化したものが天皇制であった。尊皇思想とか、天皇制のイデオロギーといわれるものが、実は甘えのイデオロギーとして解しえる。」
  • 3−丸山氏は書く。「日本では、機能集団の多元的な分化が起こっても、それと別な次元で人間をつなぐものがなく、一個の閉鎖的タコツボになってしまう傾向がある。相互に言葉が通じない。集団内部の言葉が隠語化する。そこに組織としての偏見が抜き難く付着する。
  • 3−土居氏曰く。「日本の社会がタコツボ型の発達をしてきたのは、根本的には日本人の中に潜む被害者心理、結局は甘えの心理に発することであると考えてよいではなかろうか。」
  • 4−丸山氏は書く。「実質的には大きな勢力を持つものも、その集団自身の眼には小さなものとして受け取られてくる。そこでそれぞれが自分たちをマイノリティーとして意識するという現象が発生し、一種の脅迫観念、自分たちは敵対的な勢力に囲まれた被害者意識を持つ事になる。」
  • 4−土居氏曰く。「被害者心理は日本人の心理の根底に巣くっている極めて日常的なもので、日本人特有の人間関係からみて結局は甘えの心理に発する。」

以上、丸山氏と土居氏の日本人の精神構造論を甘えの概念から整理してみたが、「甘えの構造」読後感でも書いたごとく、こうしたお2人の視点は、ある半径以内の社会現象を解釈するにはきわめて有効ではあるが、歴史の大きな流れを学び、歴史からしっかりとその鍵を掴もうとする時、われわれが武装すべき人類発展の哲学は、明らかにこれら視点とは大きく次元が異なっていると意識すべきであろう。

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