定年後の読書ノートより
老化とは何か、今堀和友著1920年生まれ、岩波新書
著者は「老化の生物学」の視点から、極めて高い水準の医学的情報を、著者の体験を含めて概論的にまとめている。老化は細胞死というキーワードでまとめられる。細胞にはネクローシスの外に、プログラム死がある。プログラム死は環境の影響を大きくうける。痴呆は脳の中で知的活動細胞が多数死ぬことによって始まる。神経細胞に葡萄糖や酸素を供給している血液が、血管の梗塞により細胞壊死がはじまることによっておこる。アルツハイマー型痴呆は、Β蛋白質が神経細胞に作用することによって。りん酸化酵素が発現、プログラムされていた細胞死が発現していると、壊死説ではなく、プログラム死説である。疫学に関して、これを科学的に何処まで信じれるか著者は懐疑的。従って、老化は栄養と運動が予防策と言われるだけで、それ以上のテレビ放映にあるHOW TOものはないが、最後の知的活動の示唆は著者の体験を含めて傾聴すべき言葉である。

曰く、知的機能と老化の関係でみると、記憶力と回転力の流動性能力は衰えていくが、豊かな経験と知識に支えられた総合能力である結晶性能力は向上する。平常使用しない知的機能は、「細胞死」に準じて容易に衰えてしまう。これを防ぐべき知的納涼の維持と新しい経験の積み重ねをしていかなければ、時代にマッチした結晶性能力は得られない。之には相当な決意と強い意志が必要だと強調される。こうした観点よりパソコンと外国語習得は老化防止に大切なアクションであると強調される。「老化」は死という平衡状態を目指して進んでいるエントロピー増大現象である。しかし体内ではエントロピー増大を防ごうとするホメオスタシスという制御機構の働きが急激に劣化し、エントロピー増大が急激に進行するようになる。

著者は東大医学部教授を長く勤め、東京都老人総合研究所所長より三菱化成生命科学研究所所長を勤められた方である。

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