定年後の読書ノートより
文明の衝突、サミュエル・P・ハンチントン著、鈴木主税訳、集英社
第1部、さまざまの文明からなる社会。

40年間というもの、冷戦という便利な枠組で思考し、行動してきた。冷戦というパラダイムは、現象をそれなりに説明していた。しかし共産主義世界が崩壊し、冷戦という国際関係は過去のものとなった。我々の知性は現実をどう認識するか、どの事実に注目するか、明快な、暗黙のモデルを必要とする。モデルは勿論抽象概念であって、目的によって、有用性が異なる。飛行機を操縦しているときには、道路地図は役に立たない。必要なのは我々の目的に合わせて、現実を単純化した地図が必要である。

冷戦後の世界政治の多極化、多文明化において、文化的アイデンティティが、重要な意味を持ってきた。文化的アイデンティティが冷戦後の統合や分裂あるいは衝突のパターンをかたち作っている。

世界は文明を異にする国家や集団の衝突があり、これまで支配的文明であった西側と、それ以外の非西欧とに分けられ、その利益や協力関係、対立は、ますます文化と文明という要因によって方向づけられる。

文明とは「未開状態」の対極にあるもとして展開されてきた。しかし文明とは機械、技術等物質的要素にかかわるものとしてとらえられ、文化は価値観や理想、高度に知的、芸術的、道徳的な社会の質にかかわるものだ。文化の総体とされる文明とは、宗教と言語を重要な要素とする。文明は文化的まとまりであって、政治的まとまりではない。マルクス主義は西欧文明の産物ではあるが、西欧で成功する事はなく、非西欧社会の近代化を進める革命家達に取り入れられた。しかし西欧文明の特徴であったイデオロギーは力を失い、宗教を始めとする文化的基盤をもつアイデンティティが幅をきかせるようになってきた。

人類は共通の価値観、文化的まとまりを持ち得るか。文化、文明の中心要素は宗教・言語である。しかし、この分野でいま確実に多極化が進んでいる。普遍主義は西欧イデオロギーだ。共産主義が崩壊すれば自由民主主義がくるとは選択肢一つの冷戦的考え方である。民族性、宗教、文明等の分裂は新たな対立を生む。文明、社会、民族の自意識が強まっている。西欧化と近代化は直交する機軸であり、その傾斜は文明によってことなっている。

近代化は必ずしも西欧化を意味しない。近代化は非西欧社会の文化を強くし、相対的に西欧の力を弱める。

以上が第1部の概要である。

この本は、かねてより、長井博士から、是非一読するように勧められていた1冊であり、これを読みはじめ、想像していたより、容易に理解できるし、納得できる記述に安心している。早く最終第5部まで読み終わり、読後感をまとめたいと思う。

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