定年後の読書ノートより
文明の衝突、サミュエル・ハンチントン著、集英社
第2部 文明間のバランスのシフト

西欧は2つの顔を持つ。世界に君臨する支配国である顔と、今や相対的に影響力をなくしつつある国の顔である。西欧の没落史の中で、アメリカの果たした支配力の大きかったこと、そしてその没落には日本や、ソ連等の関わりがあったことなど、特筆すべきことである。西欧の軍事力も相対的に縮小しつつあるが、今も最大の力を保持し続けている。

文明は権力の背景があってこそ拡大する。ソ連崩壊により、共産主義がその説得力を失ったと同様、西欧の力が衰退し、西欧の概念を他の文明に強要する力もまた弱まるであろう。西欧的価値観の普遍性から、非西欧的価値観の優越性を人々が主張する時代に入る。非西欧圏の政治家が、民衆選挙で勝とうと思ったら、自分達がいかに西欧的であるかを誇示しても仕方がない。選挙戦は民族主義、国家主義、宗教的な性格をもつものである。

あらゆる地域で宗教が意味を持ちはじめてくる。

宗教の復興のグローバル的背景は何か。それは人々が新しいアイデンティティを求めようとしていることである。人間は理性によって生きているのではない。社会が変化するとき、自分はどこに帰属するか、自分を定義しなくてはならない。宗教はここに魅力的な解答を示してくれる。

イデオロギーに替わり、宗教が近代化に伴う人々の渇望を満たしてくれる。宗教の復興は、近代化の都市流入集団と新しい中流階級を供給人口とする。非西欧的宗教の復活は、非西欧諸国における反西欧主義が最も強力な形で具体化したものである。東アジアの経済発展は、アジアの文化に自信をもたらしている。20世紀始め中国の知識人は儒教こそ中国後進性の元凶であるといった。しかし今、儒教こそ中国文化の本流であるという。日本は西欧から離れることはできても、アジアにとけとんでいくことは難しい。日本は自身の文化的アイデンティティを再認識することによって、その独自性と西欧ともアジアとも異なる文化を強調しようとしている。

アジアはアジアの文化に自信を持ちはじめている。日本、韓国の倫理感はその経済発展の原動力になっているとリー・クワン。ユー氏はいう。世界は物質的成功の後に文化を主張するようである。

イスラムの復興は、現存制度の停滞と腐敗に対する反応である。イスラム復興は、石油の富と影響力を、一気に増大させたことから発する。イスラム復興を支える異常な人口増加率。

イスラム復興運動が落着くには、原動力となっている人口増が鈍化する2020年頃になろう。

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