定年後の読書ノートより
文明の衝突−第5部−サミュエル・ハンチントン著、集英社
冷戦終結後の世界では民族間紛争が大きな問題になっている。異民族間の戦いがあとをたたない。著者サミュエル・ハンチントンは冷戦後の世界では、イデオロギーではなく、文明のアイデンティティによって、統合や分裂のパターンがつくられていると主張する。

人間は自己の利益を追求する上で、合理的な行動をとる前に、まず自己を定義ずけなければならない。そうした自身の定義づけ、つまりアイデンティティの追求が文明間の紛争につながる。アイデンティティは他者との関係で規定されるものであり、我々対彼等という構図が政治の世界にほぼ普遍的に存在する。現代社会では彼等が異なる文明に属する人々を指す場合が強まっており、冷戦が終っても対立がなくなるどころか、むしろ文化にもとづく新たなアイデンティティが生まれて文明間の対立が生じている。

21世紀の始めに起こるかも知れない異文明間の大規模な戦争のシナリオは、一つの文明の中核をなす国が他の文明内の衝突に介入した事によってはじまるとしている。従って、来るべき時代の文明間の戦争を裂けるには、中核国が文明内の衝突に干渉を慎むことを警告している。

民族の衝突や文明の衝突が起こり始めている世界にあって、西欧文化の普遍性を信ずる西欧の信念には3つの問題点がある。謝りと不道徳と危険である。西欧指導者は他の文明を西欧のイメージにつくり変えることではなく、西欧文明のかけがえのない特質を保存し、保護してさらに新しくする事だ。

要するに来るべき時代の異文明間の大規模な戦争を裂けるには、中核国家は、他の文明内の衝突に介入するのをつつしむ必要がある。この不干渉ルールは、多文明的かつ多極的な世界にあっては平和の第一条件である。

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