アドラー心理学入門、 読書ノート

ロバート・W・ライデン著、前田憲一訳、一光社、1500円

アドラー心理学との出会い

アドラー心理学を始めて知ったのは、W.B.ウルフ著、周藤 博訳「どうしたら幸福になれるか」(岩波新書 上下)を読んだ時だった。今から50年前、学生運動の中で、あまりにも観念的な思考に没していた自分に、この1冊は衝撃だった。アドラーへのあこがれ、それが、定年後の今日、再び「より良い人生」とは何かと、充実したライフサイクルを求める自分に、貴重な知見を与えて呉れるものと、期待し、先ず入門書から胸膨らませている。

アルフレッド・アドラーの生涯

1870年〜1939年、オーストラリア生まれ、精神科医、ウイーン大学時代より、フロイトの内輪メンバーだったが、生涯フロイトのセックスに重点を置いたリビトー理論に反対していた。

邦訳著書、「人間知の心理学・1927年」「人生の意味の心理学・1931年」(以上春秋社)「個人心理学講義・1927年」「子供の教育・1930年」(以上一光社)

矢張り、一番関心の高い、W・B・ウルフ「どうしたら幸福になれるか」は上下3200円で、新訳が発行されている。この本も、この機会に新訳で再読したい。そしてできれば、ペンギン叢書で原書を見つけだし、原書で読んでみたい。

現代のアドラー心理学

1952年アメリカにてアドラー心理学会があり、阪大野田俊作医師は、シカゴ・アドレー研究所で心理学トレーニングを受け、トーキングセミナーと題して、マニア2001から出版している。

ゲシュタルト心理学、実存主義心理学、人間主義心理学などにアドレー心理学は大きな影響を与えている。

アドラー心理学への初期の影響

ジグムント・フロイト

人間のパーソナリティは努力によってうごかされているという概念。アドラーは優越と自尊心を得ようとする努力を強調。

カール・マルクス

男女平等による下層階級の社会的平等と劣等感克服の努力強調

フリードリッヒ・ニーチェ

劣位から優位への努力はニーチェの原理に学んだ。力へ向かう者の努力にニーチェの影響がある。

ハンス・ファインヒンガー

未来への努力という概念は、ファインヒンガーの経験内の不真実も、経験外の真実という概念なり。

アンリ・ベルグソン

生気にあふれた衝動を、ベルグソンに学んだ。

劣等性と補償

アドラーの初期は、器官劣等性とそれを補償する埋め合わせの方法と関係している。障害のある器官があると、残った器官が機能障害の損失を埋め合わせるように大きく働くことに特に注目した。アドラーは態度がポジティブなものなら、結果は自ずと望ましい補償となってあらわれることをライフスタイルから考察した。

劣等感

人生の根本法則は、欠陥や不適切なことを克服する法則を見つけることであり、人生それ自体は、世の中の要求に適合する努力である。世の中の要求や問題が、人間の対処能力より大きかったりする場合、劣等感が生まれる。幼児は最も弱い者として世の中に表れる。劣等感は異常ではない。劣等感は優越に向かう努力を刺激するものだ。

劣等感必ずしも異常ではない。

劣等コンプレックスと優越コンプレックス

劣等コンプレックスは、神経症行動を生ずる主な要因です。自分の欠点を他者のせいにして非難すること、復讐すること等の戦略をとる。横柄、うぬぼれ、横暴等はこれである。

男性性抗議

典型的に男性のものとされている力、強さ、権利などを持ちたいという女性の願望、アドラーは女性は男性と対等であると考えていた。

パーソナリティの一体性

アドラーは、人それぞれが完全に統一したものであり、ユニークであり、さらに必要なあらゆる部分を備えているものであると考えていた。人間はひとつのダイナミックな統一体である。どの人の人生も、過去から始まり、現在に進み、未来に向かうひとつの出現だ。

最終因論と目的論

努力するためのエネルギー源が重要ではなく、むしろ究極の目的が重要だ。なんらかの目標に向かう方向づけがなければ、人は自分でどうしてようかわからないだろう。私達の、考え、感情あるいはその他の行為の心理的過程は、心の中に何等の目標があることが必要。未来への努力が現在の生活を導いている。目標の選択は、自由で創造的な選択であって、目標は子供の活動を方向づける。

虚構の最終目標

目標はその人が創造するが、しかしその人にほとんど気づかれない。目標は劣等性の補償の一局面である。目標があると、どんな劣等感があってもポジティブな感情が考慮される。アドラーは虚構の目標を持つことは全く健康なことであると主張した。

優越への努力

ダイナミックな力の本質は、いつも「下」から「上」に努力することを意味する。優越への努力は、間接的に劣等感から生ずる。私達だれもが、どれほどつまらないものであるとしても、他の誰かよりは優越であることが出来る場合、あるいはちょっとましであることが出来るなんらかの方法を見つけなければなりません。

共同体感覚

人間は弱い存在である。だから人間は社会生活を保つことによってのみ、生存を維持できる。自然の視点でみれば、人間は劣った有機体である。劣等感は自然に対応する方法を見出す刺激になる。言語は人と人をつなぐ絆を作る。言語は、人がある人格を持てるようにする。

共同体感覚の発達

共同体感覚は、社会状況に反応できる生まれつきの素質である。この潜在能力は、他者への心配りと関心を意味する。人類すべてへの純粋な関心、社会的に有用な人でありたい願望が含まれている。共同体感覚は、子供の正常性のパロメータである。社会はいつも変化している。それでいつも再適応するという態度を保のがその人自身の問題になります。

共同体感覚と知性

共同体感覚の程度は、どれほどうまくそのひとが自分を与えられた状況に関係させることができるかという機能。ですから共同体感覚はその人の知的機能の重要な部分。

共同体感覚のまとめ

私達が、将来の目標に自分の行動を方向づけるとき、前に押し出してくれる何等かの駆り立てる力が必要。アドラーはそれを優越あるいは自己向上への努力と名づけた。自分のことだけに関心を向けている利己的な人、自己中心の人は、共同体感覚を欠いている。これは生まれつきあるものですが、育成しなければなりません。

活動性のこと

活動性は共同体感覚と共に、パーソナリティの重要因子であり、この2つから人間のパーソナリティを4つに類型化することができる。共同体感覚の高い日とは、いつも社会性があって有用な人ですが、さらに活動性が高い人は、支配的な人、積極的であればあるほど、より直接的に攻撃的でもあり、他人を傷つけ、自分の優越性を達成する。

ライフスタイル

ライフスタイルには、人間の行動の幾つかの側面がある。

  1. 人それぞれのの個性と創造性の形式
  2. 生活の問題を解決する方法
  3. 生活(人生)に対する態度
  4. 劣等性を埋め合わす方法
  5. 人生の意味
  6. 完全に一体となっているパーソナリティ
  7. 目標とその達成法
  8. 自分と他者についての意見
  9. 優越性への努力を成就する方法と共同感覚
  10. パーソナリティ全体の表現

ライフスタイルは幼児期から始る。ライフスタイルの方向は、その人とその人の努力によって選ばれる。ライフスタイルはその人の創造力によって決められる。どの人も、自分自身のライフスタイルを創造する自由が授けられる。自分が何であるのか、私達は責任があります。この能力があるので、自分自身の生活(人生)を自分でコントロールします。

早期回想

アドラーは、早期回想がライフスタイルを発見する上で、明確な手がかりになると考えました。早期回想は、人生について、そのひと自身の基本的な見方を露わにする。もし最も古い早期回想が幸せなものならば、ライフスタイルも楽しく、楽天的でしょう。

出生順序

家族布置の出生順序はライフスタイルに大きな影響を与える。第1子は、第2子誕生により、「王位から退けられた王」になる。第2子のありそうな特徴は競争。追いつこうとする果てしない競争。末子は甘やかされる可能性が高く、過度に依存性の高いタイプになり易い。一人子は、内気で依存的である。

欠陥あるライフスタイル

  1. 器官劣等性
  2. 甘やかされた人
  3. 無視された人

劣等器官を持った人は、ハンディキャップを隠そうとする。その秘密がばれないように、劣等感が誇張される。自尊心がひくくなり、共同体感覚が欠落し、臆病になる。

甘やかされた人は、共同体感覚に欠け、活動レベルが低くなる。甘やかされた人は極端に、自己中心的です。「私があなたに何ができるか」ではなくて、「あなたが私に何が出来るか」である。

無視された人のライフスタイルは、共同体感覚に欠け、他者を愛することに欠けている。

人生の3つの課題―社会との関係―

人間を結びつけている最初の絆は、私達すべてが人類に属しているということ。私達は自然界の恵みを受け、生存を充たして呉れる。協力は生き残りの鍵である。言語は共同体に順応するにあたって人類を助ける為に発達してきた。子供は成長するにつれて、他者との協力を教えられる。大人が不適応になってしまう破壊的な条件のひとつは、甘やかしであった。協力なしには集団、社会単位は存続出来ない。協力することを学ぶと分業を発見する。

人生の3つの課題―職業―

人々が協力することを学ぶと、分業を発見する可能性が生まれました。母親は、子供が職業に関心を持つ上で、最初に影響を与える人です。子供の発達は、後の人生で取り組みたい職業を早い時期に知っていれば、ずっと簡単になるでしょう。親の最も悪いことは、子供が興味を持てない仕事につくよう強いることです。

人生の3つの課題―愛と結婚―

2人は、お互いの協力から始めます。パートナーに関心を持ち、愛とは、与えたり受けたりする相互尊敬の問題です。愛とは人類に与えられた、最も美しい贈り物である。お互い相手のために、人生をより美しくより豊かにしたいと願います。

夢とその解釈

その人の、パーソナリティについての知識が十分でなければ、夢の意味を説明することは出来ません。夢は創造的であって、問題の手掛かりとその問題を解くことができる方法を教えてくれるし、自分の情動の表現となり得るし、自分の目標の努力のしるしとなりえる。

自衛傾向

優越になろうとする努力の一部は、自己評価を高めたいという要求です。自己評価がおびやかされていると、そのような脅威から自分を守ろうとするテクニックを使おうとします。神経症者の行動は、人生の困難な問題を避けようとすることです。自衛傾向の工夫として、自己非難があり、自分を傷つけることで、他者を痛めつけるのは、自己を高める巧妙なテクニックです。

神経症的性格

共同体感覚は、社会生活をスムースに過ごす為に不可欠です。人生の問題の神経症的な回避は、優越コンプレックスの形を取るでしょう。正常の努力では、共同体感覚が伴っており、そのひと自身の改善への努力は集団が一般的に向上することと統合されます。自殺は、人生の或る問題あるいはたぶん多くの問題の解決法であり、限られた量の共同体感覚が無くなってしまったときに起こります。神経症者は、劣等感、甘やかし、過敏、あまりにも多くの嫌悪体験の下での生活に基いた謝ったライフスタイルを発展させた人。

心理療法

心理療法は一人のセラピストと患者の再教育的な冒険である。患者に自由に話をさせ、話がとまった時だけに質問する。患者にライフスタイルを認識させること。共同体感覚の育成、目標の見方の変化、誤った動機の変更、患者を勇気づけること。

共同体感覚

生まれながらにある感覚。そのひとが社会を改善する貢献者となり、社会の中に居場所があると感じられる人間になること。最も古い思い出は、人生へその人の基本的な見方を現している。夢は情動の工場である。治療が進行するにつれて、自分自身をより深く気づいていくと、自信、勇気づけ、ポジティブな方法で人生の問題に直面する自発的意志が生み出される。

犯罪とその防止

犯罪者と正常人の基本的な違いは、犯罪者の目標には、社会に有益なことが少しも含まれていないということ。犯罪者は私的論理と私的知性を持っている。基本的にはすべての犯罪者は臆病です。ほとんどの犯罪者の問題は幼児期の家族の体験に始っています。犯罪者は劣等性を克服し、優越に向かおうとする基本的な動因を満たす為に間違った方法を選んでいます。犯罪の抑止に最善の解決法は、協力と共同体感覚への子供達を訓練することである。犯罪者の基本的な問題は、彼等が役に立つ職業を一度も学んでいないということ。彼等は生活の方法で失敗し、共同体感覚を失っている。彼等は一度も他者と協力することを学んでいない。

正常なパーソナリティーの発達に重要なことは、正に生まれた時から正しく子供を育てること。適切に子供を育てるには、まず子供を理解しなければならない。

母親

理想的な母親とは、ものわかりがよくて、慈悲深くて、朗らかで、信頼がもて、忍耐強くて、とりわけ楽天的なひとです。適切な教育には、子供の為に正しい目標を用意することです。アドラーは優しさを強調し、甘やかしを警告している。間接的に子供が間違いに注意を向けるようにさせることです。子供をほめ、勇気づけることです。親は、子供が共同体感覚を育むように、深く気遣うべきです。穏やかな、慈悲深い、朗らかな家庭の雰囲気では、子供は世界を生活する良い場所だと見るでしょう。

フロイト理論

アドラーはマスコミからこき下ろされていた夢判断を弁護した、しかし2人の理論は大きく違った。アドラーは意識と無意識を2分することに反対した。アドラーはパーソナリティーは分割できない統一体であると主張した。フロイトは本能を過剰評価しすぎると主張した。フロイトには社会的共同体感覚が欠けている。宗教の機能は、共同体感覚を増やし、社会的な暮らしを高めるとアドラーは主張した。フロイトは人間について悲観的でしたが、アドラーは楽天的でした。

アドラー心理学賛否両論

アドラーはパーソナリティーの解釈を単純にしている。劣等感を強調しすぎている。社会的要素の重要性を強調しすぎている。創造的自己、虚構の最終目標の概念が正しく定義されていない。

ポジティブな面として、社会的重要性、特に男女平等、子育ての重要性、人生の中で目標を持つ意味、等実践的で、有用で、理解が簡単。応用分野で実績を上げることができる。

訳者のあとがき

世の中、物質だけは豊かになりました。しかし、人間関係は行き詰まり、青少年問題では、共同体感覚が育まれていない状況にある。この状況の解決には、共同体感覚の持つ意味を考えてみる必要がある。