定年後の読書ノートより
個人心理学講義―生きる事の科学―アルフレッド・アドラー著、岸見一郎訳、一光社
日本語版序文で日本アドラー研究者第一人者の野田俊作先生が面白いことを書いている。アドラー心理学を学ぶためにアドラーの原典に直接あたるのは。古典物理学を学ぶためにニュートンの著作を読むように、能率の悪い学習法だとのこと。またマルクスの一節でもあるかのように、アドラーの言葉を引用して教条的にアドラーの言葉への忠実さを競い合うのは、全く非科学的であると。にもかかわらず、本書はアドラー心理学全体を知るには最適の書であるとも言う。

私自身はアドラーを知ろうと思えば、岩波新書の「どうしたら幸福になれるか(上下)」を読まれる事をお薦めしたい。W・B・ウルフのこの本こそアドラー心理学を一番判りやすく紹介してくれる。

アドラーはフロイトの友人であっても、弟子ではないと念押しをしている。ある本(ちくま新書・フロイト入門)にアドラーとフロイトの比較が載っていたのでここに転記する。

対比前はアドラー心理学(対比後カッコ内はフロイト心理学)

楽天的思想(悲観的思想)。個人は本質的に分割出来ない(個人の中で心は分離している)。目的論優位(因果論優位)。個人は共同体に対して攻撃的に行動する傾向がある(自我は超自我から圧迫され文明によって脅やかれる)。個人の他者に対する攻撃の諸様式。能動的に失敗した時のバリケード(自我の防衛の諸様式。防衛が不充分だと行動化が起きる)。子供は劣等感を持つ(幼児は全能感をもつ)。人間の性的行動の多くは、優越志向に関する象徴的意義を持つ(リビドーの基本的重要性。リビドーの固着と退行)。対抗者の概念(リビドーと攻撃的感情の備給としての対象関係の強調)。兄弟との関係や兄弟間の状況の強調(父母との関係やエディプスコンプレックスの強調)。男性は女性よりも能力が限られているので劣等感を抱く(女性はペニスをもたない為に劣等感を抱く)。神経症は個人が共同体に対する義務の遂行を逃れる術策(神経症は文明化の不可避な結果で人間の条件と不可避といってよい)。第1次大戦後アドラーは社会本能の概念を提唱した(第1次大戦後フロイトは死の本能の概念を提唱した)。アドラー派は精神療法では患者は治療者と対面して座る(精神分析療法では患者は寝椅子に横になる)。

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