定年後の読書ノートより
ソビエット政治史を読む、石井規衛著、岩波ブックレット
1948年生まれ、東大文学部卒、神戸大助教授、専攻ロシア近現代史、

ロシアをダイナミックに捉えている。1917年2月革命を引き起こした背景は、第1次世界大戦に原因がある。ツァーリー体制は、この「総力戦」を戦える組織力はもうなかったにも関わらず、ニコライ2世はそれなりの官僚機構、工業力、無知な農民階級を土台として、協商国の利権に固守しようとした無理が、革命の引き金になった。レーニンは一見奇怪とも思われる相反する主張を同時併行させているのは、レーニンの中に、ロシア革命に呼応して、ヨーロッパ各国で次々と社会主義革命が同時勃発するであろうという「思い込み」が強かったからだ。特にブレフト・リトフスク講和条約や憲法制定会議に対するレーニンの豹変は継続するドイツ革命の視点からのレーニン自らの立場を判断したが故の矛盾である。革命後のソ連社会の幾つかの国家政策変化の背景には、ロシア共産党の指導体制の矛盾がある。共産党古参党員集団の寡頭支配は、革命当初は有効に作動した、しかし新参党員集団の新社会体制発言意見を如何に制御していくか、その対立はやがて、スターリンの独裁を生む。しかし、第1次世界大戦後、近代社会型の党=国家体制の支配形成は、軍需産業を中心とする重化学工業化には有効に作動した。しかし第2次世界大戦後の、大衆消費社会には、もう党=国家体制では対応出来なかった。何故ならば、社会主義レトリックだけでは、近代社会のアイデンティティ・クライシスに対応できない。スターリン時代の批判と暴露は、共産党の道徳的権威を完全に失墜させた。致命的だったのが、経済破綻。以上が著者のダイナミックな論理である。

要するに、国家とは世界全体の経済動向の中で、そのニーズに適応している国家は発展するが、不適応の国家は、即座にその体制は崩壊していくという論理で書かれている。著者は、岩波書店「世界史への問い」10、国家と革命に「ロシア革命とボルシェビキィ」という論文を発表。

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