定年後の読書ノートより
心に刻む歴史―ドイツと日本の戦後50年―ワイツゼッカードイツ大統領講演
1985年8月ナチスの歴史をいかに清算すべきか、独大統領はドイツ国民に語り始めた。その趣旨は過去に目を閉ざす者は、現在にも盲目に陥るという警告であった。この講演は今ではドイツの誇りとして、記憶されている。

1985年5月8日ドイツ敗戦40周年記念講演「荒野の40年」より

過去に目を閉ざす者は結局のところ、現在にも盲目となります。非人間的な行為を心に刻もうとしない者は、また新しい感染の危険への抵抗力を持たないことになるでしょう。

1995年8月ワイゼッカー独大統領は来日し、今度は日本国民に語り始めた。

1995年8月7日、東京虎ノ門ホールにて記念講演「ドイツと日本の戦後50年」

不信を解消していくことが大切ですが、不信が生まれたのは戦争に原因があることを年配のドイツ人ならばはっきりと覚えています。不信の解消に成功すること、これこそ現在および将来にわたる死活の関心事であります。これはアカデミックな論争だけに任せておいてよいテーマではなく、今日われわれの政治的責任なのです。

自らの歴史と取り組もうとしない人は、自分の現在の立場、なぜそこにいるのかが理解できません。過去を否定する人は、過去を繰り返す危険を冒しているのです。このようにドイツにおきましては、歴史を心に刻み、それと取り組むことが、いつも現在の政策の本質的な構成要素のひとつであったのです。

歴史はわれわれの記憶に重くのしかかるものであってはなりません。われわれの精神を啓発できるものなのです。心に刻んで記憶することができるというのは偉大な力であります。明暗双方をもつ過去の全遺産を受け入れ、ともに責任をもってこれを担うことこそ、ひとつの国民の本質を形作るのであります。

人間同士の個人的な付き合いの上での経験が、国と国の関係にも当てはまります。時には謝罪が必要ですが、嘘偽りのない謝罪でなければ効果がありません。心からの謝罪でなければ、むしろ止めておくべきでしょう。本気で表明するのでなければ、しない方がましです。

人類が歴史から学べるという証拠はありません。しかしながら、誠実かつ率直に過去と向かい合うことは、遠近の隣人との、信頼にみち、国民としての利害にもっとも役立つ協力関係にプラスの作用をもたらすもので、このことをわれわれは経験で知っています。

ドイツ世論調査から「あなたは誰をもっとも尊敬するか」

1位、ワイゼッカー大統領46%、2位アデナウワー首相25%、3位俳優ハインツ・リューマン21%。4位社会主義者ローザ・ルクセンブルク13%

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