定年後の読書ノートより
スターリン主義を語る、G.ボッファ・G.マルチネ著、佐藤紘毅訳、岩波新書
ボッファはイタリア共産党員、マルチネはフランス社会党員。1976年2人の対話刊行を佐藤紘毅氏が翻訳、岩波新書として1978年に出版。古本屋で偶然発見した。

対話の基本視点は、スターリン主義を弾劾するだけでは不充分であって、その存在理由とメカニズムを明らかにしていこうと2人のソ連現代史専門家が対話したもので、スターリン主義の生成、1936〜1938年のテロル実態、反ファッシズム戦争、戦後復活したスターリン暗黒政治、スターリン死後の権力闘争から現代までのソ連を中心とする東側体制の動揺を対話当人がモスクワで確認している歴史的事実を会話の基礎としながら対話が続く。

印象に強く残る対話の一部はブハーリン粛清公開裁判をテーマとする会話。

「全員が自白しているということは、過去において偉大な勇気と卓越した知的資源を示した人々の魂を屈服させ、彼等のあらゆる抵抗を打ちのめす拷問と脅迫の諸手段が組織されたことを意味します」

「彼等が死刑になることを承知しながらも、虚偽であることをよく知っている事柄を報道機関と外国人観察者の前で“認める”ことを選んだのは、かれらの肉体的および精神的苦悩がそのような点にまで到達していたからなのです」。

これらの会話の背景には、ゾルゲと共に必死で社会主義ソ連を守ろうとした尾崎秀実等の社会主義への信頼を裏切る歴史的事実があり、こうした真実を知った苦悩を、私は自分史の中で、「ベルリンの壁崩壊から学んだ現実感覚」と題し議会制民主主義の基盤が欠けていたソ連にて社会主義革命が始った歴史的悲劇を悔やみ、社会主義政権が容易に独裁政治に落ち込み易い宿命をやりきれない気持ちでうけとめた。

社会主義の後退期にある現在、我々はもう一度、民主主義こそすべての出発点であることをきちんと自覚したい。

そして今この本を読んで、今世紀最大の知識人の課題とは、ソ連の歴史的にせ社会主義を長い間見破れなかった西側知識人の知的思考力の低さと、ソ連崩壊から何も学ぼうとしない無責任さを今こそ西側知識人達は真剣に反省すべきではないかとこの本を読んで再度実感した。

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