定年後の読書ノートより
アドラー心理学入門、岸見一郎著、ワニのNEW新書
著者岸見先生は、「幸福とは何か」を追求されておられる京都大学ギリシャ哲学の先生。著者も書いておられるように、アドラー心理学は、一見コモンセンスの範囲内で世間では常識の世界の話が主体であり、あまりにもシンプルであり、しかも誰もが理解し易い。それだけに哲学者である、岸見先生も最初は平易過ぎる話に落胆されたようだ。しかし、先生はアドラーの何気ない目的論と原因論にギリシャ哲学以来の課題を発見して、あらためて、アドラー心理学の深さを再認識された。

アドラーは医者としてウイーン大学に学んだが、当初社会主義に深い関心を持ち、奥サンはトロッキーの友人とか。それだけにアドラーは庶民と親しく語りあうことを大切にした。しかし次第に政治ではなく育児と教育を通してのみ、人類の救済は可能であると考え始めた。

アドラー心理学は、「幸福とは何か」、「人は如何に生きていくべきか」について、明白でしっかりしたイメージを持っている。だからアドラー心理学は、W・B・ウルフの名著「どうしたら幸福になれるか」を支える理論的支柱。一方、小生の関心はこのウルフの名著をアドラー心理学によって整理しながら味わっていくことである。

アドラー心理学をまとめると、1、行動は原因ではなく、目的を分析すること(目的論)。2、人間を全体として把握すること。理性と感情、意識と無意識は対立を認めない(全体論)。3、客観的事実に対する主観的意味づけを重視する(現象論)。4、精神的内界より、対人関係を分析する(対人関係論)。

アドラーは性格を社会的関係でとらえ、社会生活上の諸問題に対する人の対応の仕方を重視し、性格は幼少時からの劣等感を軸に、その補償としての優越欲と社会的共同感情との相互的な関係から、社会生活の内に形成されていくと見る。

自己受容、他人への関心、それは母親が、幼児期に共同的感覚として子供に正しく教えるべきものである。しかし、共同的感覚において、自分の人生を他人の為に犠牲をするような人は、アドラーは「社会に過度に適応した人」と言い、「与える」ことは重要であるが、行き過ぎてはいけないとも言った。

私達は客観的な世界に生きているのではなく、自分で意味づけした世界に生きている。アドラーは絶対の価値というものを、状況とは無関係には認めたりしない。アドラーは言っている。人生の意味はあなたが自分自身に与えるものだ。

ここまで深くなってくると、アドラー心理学は決して、平易で、シンプルなんかではない。ひとつひとつの言葉にも、「人間如何に生きるべきか」の深遠な哲学があり、その哲学に従って、人間が適応していく手法を共同体感覚という主軸を基本に、じっくりと学ぶことこそアドラー心理学への道だと岸見先生はおしゃる。アドラー心理学を哲学視点でとらえた1冊の本として、この本は確かに読みごたえがある。

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