定年後の読書ノートより
21世紀の高齢者像、柴田 博著、学士会会報、No828、H12年7月発行
地球の人口は来世紀100憶に達する。人口増加は発展途上国、先進国は平均寿命が伸び、出生率抑制が続く。日本では高齢化社会の是非を論ずる段階ではなく、高齢化社会にいかに対処するかが現実問題である。老年学は、人口学、社会学、心理学、倫理学、勿論医学を含めた学際学である。最近欧米では、サクセスフルエイジングという概念がクローズアップされている。これは「長生きすること」「生活の質を高くすること」に加え「プロダクティビティ」を新たにつけ加えている。従来欧米ではもっぱら、主観的幸福感のみを重視する傾向があった。労働は必要悪というキリスト教の精神風土が幸福感の形成にも大きな影響を及ぼしてきた。すなわち欧米人のコンセンサスの中には、生活の質の充実が求められても、自分が社会の資源として何かの役割を果たすというコンセプトは含まれていなかった。有償労働すなわち「仕事が生き甲斐」というのは、日本人のみのメンタリティである。欧米では「仕事が生き甲斐」などと真剣に考えている老人は1人もいない。

サクセスフルエイジングとは、欧米人のこうした高齢者のメンタリティに、プロダクティビティ概念を加えていこうとする動きであり、日本ではこの「プロダクティビティ」を社会貢献と翻訳することによって、欧米概念を理解することが出来る。日本では、例えば神谷美恵子氏が「人間が最も生き甲斐を感じるのは、自分がしたいと思うことと義務とが一致するときだと思われる」と明記されているように、「趣味を生き甲斐」という閉ざされた概念構造に完結するのではなく、役割達成感、社会貢献が加わった「高齢者は英知を具備した貴重な社会資源と位置づけた認識」こそ、サクセスフルエイジングの最新概念である。

要するに老人も積極的に役立つ人間になろうと心掛けていくこと。そうした流れが、今や先進国高齢者社会の大切な傾向になりつつある。

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