定年後の読書ノートより

現代資本主義と新自由主義の暴走、神戸大教授二宮厚美著、新日本出版社
名古屋で開催された雑誌「経済」講演会で聴講した二宮先生の講演内容と、同じ論旨がこの本のテーマであるとお伺いして一気に読破。現代資本主義に対する鋭い分析に教えられるところ多く、大きな衝撃を受けた。戦後の日本はまずこれを押し進めてきた独占資本の位置づけから確認。鉄、セメント、石油化学は公共事業と輸出重視による景気促進を前面に掲げて発展してきた。過去、幾つかの不況に生き残る術は、保守政治に密着した今や大きな無駄使いともいえる公共投資依存だった。

しかし主役は代わった。家電と自動車産業は今やグローバル化し、もう地域開発など眼中には無い。欲しいのは効率的な労働者群と自由な市場原理だ。御用学者を動員して、新自由主義なる体制新軌道が打ち出された。軍事強国をめざす大国主義的改革(自民勢力を主体とする旧支配権力)と対抗する新自由主義的改革(民主党とその周辺に集まる御用学者達)。警戒すべきはこうした支配体制の権力闘争の中で、憲法改悪の堂々たる名乗りであり、競争主義をそのまま持ち込もうとする教育改革であり、戦後民主地方自治を足場に確立した福祉行政である。

この本は、こうした新自由主義勢力の御用学者達の論法をひとつひとつ取り上げ、その矛盾と裏に潜む危険な動向を読者にはっきりと示し、国民に襲いかかる支配権力の恐ろしさを暴露し、警告し、我々は新型福祉国家の防衛で人民の力を結集すべきであると教えてくれる。

正直、今回この講演に接するまで、そしてこの本を読み切るまで、我々の身近に迫ってきている、恐ろしい支配勢力の次の手に全く気が付かなかった。護送船団方式の撤廃や規制緩和、福祉の市場化とどこか掴みどころのない用語展開にそれほど真剣に新しい権力が志向しているものを意識して来なかった自分、目下なぜ支配権力は自民と民主に別れ次の権力を競い合うのか、その背景を理解していなかった自分、そんな自分とってこの1冊は衝撃だった。これは楽観視していられないぞ。憲法を改悪しようとする勢力の持っている理念は、グローバル化した日本の巨大独占企業にも結びついて、一気に日本を支配し易い体制に押し進めようとしている。このことに気がつかされた貴重な1冊がこの本だった。

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