天然後の読書ノートより
愛の空間、井上章一著、角川選書
パラパラと最初の数ページをめくってびっくりする。終戦直後皇居前広場は屋外セックスの集中空間だった。永井荷風はこう書いた。木村宗八はこう書いた。池田みち子はこう書いた。八木義徳はこう書いた。獅子文六はこう書いた。石坂洋次郎はこう書いた。性描写の極めつけの引用が次々と出てくる。

やがて野外セックスに関して、話はさらに広がる。林の中で、野原の中で、海岸で、公園で次々と文学作品引用のリアルな描写が、よくもここまで調べあげたものだと感心するほど、古今文学者の著名な作品が次々引用されて登場。そうか、こんなすごいところがあの作品にあったのかと、始めて知って驚く。

実は話は野外から屋内セックスへと話は進み、待合、蕎麦屋の2階、連れ込み旅館へと話は進む。よくぞここまで待合セックスを調べ上げたと感心。かってイザヤベンダサンの引用に感心したことがあったが、セックス描写をここまで引用した本はこれが始めて。

やがてラブホテル建築論が出てきて、現代性風俗となる。ラブホテル研究では大宅文庫の雑誌索引システムが威力を発揮したとも書いてある。ラブホテルとなるともう文学作品から週刊誌の世界に替わる。いつのどの週刊誌にこう書いてあると実に詳しい。

そして最後にラブホテルの現代建築、即ちベッドはこうしたら人気が出るとか、鏡付き風呂はこんな設計が喜ばれるとか、最近は大手建設会社もラブホテルを建設するようになってきて、その設計者に建築論をインタビューする。

著者の顔がこの辺から見えてくる。京都大学建築学科修士を卒業した著者は1955年生まれ。建築史、意匠論専攻。国際日本文化研究センター助教授。

何の事はない。最後にまとめれば、ラブホテルは如何に設計すべきかという、性風俗建築研究書であったわけだが、最初はとにかくびっくりする。

性のリアルな描写が文学作品の名を借りて、ボルノ以上の迫力で迫ってくる。こうした本を真面目な顔をして、読み続けるのはなかなか大変だ。

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