定年後の読書ノートより
宗教の起源について、蔵原惟人著、新日本新書1978年初版
宗教とは、超自然的なものへの人間の信仰と、それと直接結びついた思想、感情、行為の総体と定義。死者の埋葬に見られる古代人類の習慣は、宗教的理由ではなく、人間としての死者を哀情する感情と埋葬経験から学んだ知恵による埋葬遺跡であり、当時の人間は「存在しない観念」を追い求めるほど余裕をもっていなかった。生きるに真剣な人間には霊魂や精霊等の超自然的なものの存在を信ずる余裕もない。原始宗教の始まりとは自然そのもの人格化、自然そのもの力へ人類の哀願が宗教起源となった。

すなわち、霊魂の信仰というよりは、自然にある生命力そのものの信仰が原始宗教起源である。

宗教は、人類が知的、精神的にある段階に達した段階で始めて出現した。死への恐怖、自然への恐怖が宗教を作ったとする考えは間違っていないが、それでは動物達に宗教はあるかと問えば充分である。恐怖から逃れる人間の側面だけでなく、自然に対して知恵と意識を働かせた人間の側面を見るべきだ。宗教的信仰は当初魂の安らぎとか、来世の幸福のためではなく、生活的実践そのものから、自然と人間の真実の関係を探求しようとした志向と努力の結果から信仰がうまれたと考えるべきである。

最初の宗教的信仰とはどういう形態であったか、宇宙は自分達と共にあるという考えは人類誕生と共に長く続いた。即ちここには物質の観念と精神の観念は別の概念ではなく、従って自然と超自然の区別も無かった時代が長く続いた。やがて自然は生きているという観念→自然は霊魂を持っているという観念→霊の力は人間に作用するという信念。こうした観念、信念の変化が信仰に結びついていく。しかしこれらの観念はすべて自然という枠の中で、人間存在の意識の中で展開されていった。

原始信仰の起源において、一神崇拝、または最高神崇拝を最初とする学説がある。これらは(1)古代人類は単数、複数の区別が無かった。(2)最初の集団社会では人は皆平等であり、その後上下の階層が生まれた、従って最高神も階層が発生後の社会で始めて現れた(3)その後の文明進歩の社会からの影響で最高神観念が伝わったと解釈すべきではないか。即ち多神→最高神と歴史的変化を位置づけるべきである。

社会の階層的分化とその複雑化とは、共同体内、共同体間の人間と人間、集団と集団との関係のなかに、嘆願、供応に似た行為が生まれ、それが超自然的な信仰に反映して礼拝、祈願などの宗教的な儀礼や行事が生まれていった。氏族や家族などの発達や、その敵対的な関係の発生は、それぞれの家族や、氏族の神話化された祖先への崇拝を生み、それが呪力信仰、フェティシズム、アニミズムなどの原始的信仰と結びついていった。宗教的信仰の発生はこうした歴史を経て生まれてきた。

仏教、キリスト教、イスラム教等これらの宗教はその初め階級社会の中で、身分的、階級的差別等々に反対する民衆のいわば反体制的な運動として起こった.

初期のインド仏教は、バラモンの身分制度に反対し人間平等を説き、キリスト教やイスラム教も、神の前に万人の平等を主張した。これらの宗教はいずれも当時の文明社会の辺境で、原始共産主義的な遺制の強い地域で生まれ、古い社会体制から伝えられた平等と自由とを復活しようとする要素を持っていた。

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