のほほんエスペラント活用法
〜メイリングリストの手引き〜

*もくじ*
世界に触れる50の方法
ニューズグループ
メイリングリスト
のほほんと、国際交流
「ネチケット」は守ろう
気楽にやればいいのさ

 エスペラントの概略は判った。そこそこ勉強もした。さて、だが、し かし、いったい何をすればいいのか? こんな言語、いったい何の役に 立つというのか(笑)

 そんなあなたに贈る、体験的エスペラント活用法。

世界に触れる50の方法

 最初に残念な話をしなければなりませんが、今のところ、エスペラン トを学んですぐに国際政治とか国際経済の表舞台にデビューできるとは 考えられません。この方面では主流はやはり英語で、これはこの先も当 分変わらないでしょう。

 では、まったく使い道がないのでしょうか?

 エスペラントの入門書の類には、この言語の活用の仕方に「文通など で国際交流」などと書かれています。個人レベルの活動としては、この 方面から道を切り開くのが近道のように思います。正直なところ筆者も やってみたかったです(まじ)。

 ただ、筆者にとっては気後れするところがあって、紹介されるのはな ぜか「本物の手紙」による文通が圧倒的に多いんですね。近しい人には いざ知らず、文通を手書きでするのは、今どきかったるい。そう、今な らやっぱり電子メイルでしょう。しかし、とはいえ、さりながら、電子 メイルによる文通を斡旋している組織もありますが、それにも何か躊躇 したのは事実でした。

 考えてみれば一対一の通信にこだわる必要もないので、世界中の人が 何を考えて何を言っているかを文通よりも手軽に知る手段がたくさんあ ります。そう、ニューズグループメイリングリストな どです。いちおう軽くさらっておきましょう。

ニューズグループ
簡単に言えば「大がかりな掲示板」というのが、実態に近いで しょうか。ネットニューズともいいます。
もともとは、昔昔のそのまた昔、まだインターネットというも のが生まれる遥か(たぶん)前から、遠隔地のコンピューター間 で情報を交換しようという試みはされていて、その中で生まれ たのがこのニューズグループというものです。
話題や関心事に応じてグループが設置され、基本的に参加は無 制限です(サーバーによって購読するグループを制限したりし ていますが)。参加者は好きな時にグループを覗いて、新しい 記事を書いたり、前の記事に呼応する記事を書いたり(フォロー という)することができます。
メイリングリスト
簡単に言えば「同報メイルを少し高機能にしたもの」です。
ひとつの宛先に複数のメイル受取人を登録することができ、そ の宛先に送りさえすれば自動的に、登録された受取人全員にメ イルが配信されるという仕組みです。単にそれだけでなく、投 函されたメイルをログに残したり、入会(購読)/退会の手続 きや管理作業をメイルで行なったりということができるものも あります。
ただのメイルよりは組織的で、ニューズグループよりは閉鎖的、 そういう媒体と考えていいでしょう。

 これらを利用すれば、ある話題についていろいろな国のさまざまな人 のそれぞれの意見を読むことができます。もちろん、自分から「世界に 向けて発信」することもできます。その結果議論を巻き起こすことだっ て可能です(^^)

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ニューズグループ

 ニューズグループのよいところは、誰でもその気になれば購読ができ ることです。気が向かなければ覗きに行かなければよいのだから楽です。 筆者個人は、その「自分から覗きに行かないとならない」点がうっとう しくてあまり好みません。

 大概のインターネットプロバイダーはニューズサーバーも提供してい るでしょうから、そこに接続するだけでニューズグループを購読するこ とができます。ネットスケープなどのウェブ閲覧ソフトはニューズを読 む機能も持っているので、購読に当たって特別な手間は必要ありません。

 有名なものには soc.culture.esperantoが あります。9月11日の米国での「テロ」の直後に見に行ったら、世界エ スペラント協会(UEA, Universara Esperanto-Ascoio)の現会長からのメッ セージがいち早く書き込まれてあるのを見かけたりするなど、時時、興 味深いものに出くわします。

 日本人の書き込みは少ないです。筆者が覗いた限りでは一度だけあり ました。

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メイリングリスト

 メイリングリストは購読申し込みをしておけば勝手にメイルが配信さ れるので楽ですが、半面、読みたくもないメイルが大量に送られて途方 にくれることもしばしばあります。

 ほんらい、リストを設置して、メンバーを登録して、といった管理の 手間が大変なのですが、最近は「無料のメイリングリスト」をサービス する会社もあるようです。大手のものでは Yahoo! のEグループというのがあります。

 ここを覗くと、けっこうたくさんのエスペラント関連メイリングリス トがある。日本国内では数も種類も限られますが、世界規模でその気に なって探せば思うよりたくさんある、というのが率直な感想です。

 「初心者歓迎」と銘打ったリストでは、概ね他愛もない話が流れます が、語義語釈文法の話題になると俄然盛り上がるし、地域性に関する話 が出ればそれこそ世界各地から「自分の住んでいるところではこうだ」 「自分が生まれ育った国ではどうだ」という意見が寄せられます。

 科学、文学といった分野別のリストもあり、それぞれの話題で盛り上 がったり盛り下がったりしています。専門的?に突っ込んだ展開になる と面白い。複数のリストで同じ人に出会ったりするのも、狭い世界だと も言えますが、何か顔馴染みのような感じもして楽しいです。そういう 縁で一対一の文通が始まったり、何かプロジェクトが立ち上がったりす るならそれはそれで悪くありません。(Ĉu ne?)

 話題によっては口論に発展しそうな感じのするものもあるのですが、 どういうわけかそうなったのを見たことはありません。みんな大人なの か、まったく見も知らない人たちどうしだからなのか、そもそもみんな が「母語でないよそのことば」で話をしているからなのか。おそらくそ の全部なのでしょう。

 自分が暮らしている街、国、慣習や風習とは関係のない人たちの言う ことですから、時には「ヘぇ?」とか「ほほう」とか思うような内容も ありますし、虚をつかれたり目から鱗が落ちたりすることもあります。 よその国のことが判って面白かったり勉強になったりもします。逆に、 「国は違っても同じなのだなぁ」と思うこともあります。

 筆者はほんのいくつか購読しているだけですが、日本人の参加者は少 ないようです。少なくとも筆者は一度を除いて自分以外の日本人からの 手紙を見たことがありません。

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のほほんと、国際交流

 メイリングリストに購読申し込みをすると――申し込みの仕方はリス ト運営者によって異なるのでここでは割愛します――、ほどなく、その リストからの電子メイルが勝手に届くようになります。

 あなたがエスペラントの初心者なら、初めのうちはひとつひとつのメ イルを読み解くので精一杯でしょう。じきに読み慣れるようになります。 あなたがエスペラントを読める人でも、最初は「これ、返事書いていい のかな」と躊躇することでしょう。まして「自分から、こういうことを 書き送ってやろう」とはなかなか思えないでしょう。

 それは当然のことで、初対面の人に話しかけるのはけっこう気後れの するものです。でも、考えてみれば講読者はみんな条件が同じ筈ですね。 誰もが互いに顔も知らず、メイルを交換しているだけです。他の人は臆 せず、あるいは頑張って手紙を書いています。それならあなただってで きていい筈でしょう。

 読むだけでも多くの人の意見やさまざまな国の話に触れられてよいの ですが、せっかくですから、何か書き送ってみましょう。

 そうは言っても新入りがいきなりでかい態度をとるのを好まないこと は洋の東西を問わず同じらしく、最初から馴れ馴れしくはしない方がい いようです。購読を始めたら、まず簡単な自己紹介メイルを送って軽く 仁義を切っておきましょう(笑、でも案外まじ)

 初心者なら初心者とはっきり書くべきです。背伸びをしてもよいこと はありません。筆者は書き損なったためにえらい目に遭いました。とい うことはありませんが、実力以上に「む。このヒトできるヒト」と思わ れても自分が辛いだけです。「始めて何ヵ月です」とか「メイルするの は初めてです」とか「間違いがあったら指摘してください」とか書いて おくといいでしょう。

 それから、自分のメイルに誰か何かしら返事を書いてくれないかと 期待しないこと。無視されたって平気さ、こっちだって返事が 欲しくて書いてるんじゃないやい、泣くもんか、くらいに(少なくとも 表面上は)構えていないと、本当に返事がない時にけっこー凹みます。 要はあまり気にせずに、書きたいことを書き、返事をつけたい手紙があ れば返事を書けばよいです。あまりに無視されるようなら、きっとあな たは嫌われているんでしょうから、そのリストからはさっさと退会しま しょう。

 筆者が参加しているメイリングリストは、他に日本人の姿を見かけま せん。また、どーもそういう場所に出入りする日本人というものが、他 の参加者には珍しかったり奇異だったりするような感触があります。そ のせいか、筆者はメイルを書く時どうも「日本代表」みたいな意識が ちょっぴりあるようです。いけませんね。そういう意識を早く取り去る ためにも、がしがしメイルを書きましょう。

 幸い、いや幸いなのかどうかは判りませんが、だいたいどの世界にも 気のいい人というのはいます。そういう人が新入りのあなたにも友好的 な返事をくれたりするものです。きっとほっとするでしょう。何かうれ しくなります。もうあなたは国際交流への第一歩を踏み出しています。 もちろん、返事を返しましょう。話題がなければなんでもよいんです。

 一回メイルが行き来すれば、ずいぶん気が楽になるでしょう。次から は肩の力を抜いてメイルを投函することができるでしょう。気がつけば 参加者の中でも最も活発なひとりになっているかも知れませんね。

 「そんなので『エスペラントを活用している』と言えるのか。そんな のが使い道と言えるのか」と言う向きもあるかと思います。それに対し ては堂堂と「これでよいのです」と答えましょう。「実用」――買い物 をしたり、逆にものを売ったり、しかつめらしい国際会議をしたりといっ た目に見える形での成果はないにしても、人がある言語で他の人と(と りわけよその国の人と)交流できるなら、立派に活用していると言って よいでしょう。それが楽しみながらできるなら、言うことはありません。

 エスペラントは自然言語です。自然言語は人間が生活するために使う ことばです。従ってエスペラントも「人と人とが日日の感情や意見や事 実の伝達をしあう」ことに使うことができますし、使えておかしくあり ません。

 もちろん、リストによってはお得意の「言語差別」の話題とか「平等 な社会を」みたいな話も出ます。そういうのに興味があるなら、それに 絡んで発言していけばよいでしょう。が、みんながみんなそういう話題 だけにしか興味がないわけではありません。そういう話しかできないな ら、こんな言語を使うのは止めた方がよいとさえ思います。

 堅苦しいことを言う前に、高尚な話をする前に、まなじりを決して思 想したり運動したりする前に、まずはこの言語を楽しんでください。そ れでよいのです。

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「ネチケット」は守ろう

 世界中の見知らぬ人と接することになるわけですから、最低限の礼儀 作法はわきまえて使いましょう。ネットの世界にはネットの世界なりの 礼儀作法があり、俗にネチケットといいます。といっても実世界のそれ と比べて大きく異なることはありません。たとえば次のような点には充 分注意してください。

  1. 送っていいのは基本的に文字だけ。
    インターネットメイルで無条件に許されるのは文字(テキスト)だけ のものとされています。事前に了解も得ずに画像を添付したりする のは止めましょう。HTML形式のメイルも、受け取った誰もが表示で きるわけではないので止めましょう。
  2. 表題も差出人名も本文もASCIIが基本。
    世界中のすべてのコンピューターがあなたのコンピューターと同じ に日本語を表示できるとは限りません。全世界のコンピューターで まず間違いなく表示できるのはASCIIと呼ばれる半角英数字だけで す。
    なので、表題(Subject)、差出人(From)、本文にはASCII文字のみ 使うべきです。
    エスペラントは「国際補助語」ですが、ASCIIにない文字がいくつ か含まれています。ですからそのような文字は使うべきではありま せん。(これを解消するために、「代用表記」という記法が開発さ れました。「のほほんエスペラント講座」でも使っています)
    うっかり忘れがちなことですが、メイルの末尾に自動的につけられ る「署名」にも日本語を使うのはやめておきましょう。
  3. 巨大なメイルは送らない。
    文字だけであっても、長〜〜〜いメイル、ばかでかい文章を送るの は失礼です。特に目安はありませんが、本文を50行以内に収めるよ うにするのがよいでしょう。
    どうしても画像や文書などのファイルを添付する場合は、大きいも のは分割して送るべきです。
  4. 世界にはあなた以外の人がたくさんいる。
    この世界にいるのはあなたひとりではありませんし、あなたの友人 ばかりでもありません。でもみんなあなたと同じように生きている 人間です。
    知らない人に冷たくされたり厭なことを言われたら、すごく腹が立 つし、かなしいですよね。他の人も、あなたに邪険にされたら厭な 思いをします。「お互いに、生きていて感情もある人間なのだ」と いうことをいつも頭に入れ、相手の立場を思いやる努力をしましょ う。
  5. 挨拶はきちんとする。
    誰しも会っていきなり本題を切り出してぷいっといなくなるような 人に好感は持てません。
    メイルの冒頭には「こんにちは」「拝啓」「XXXが書いています」 といった挨拶、末尾にも「草々」「かしこ」「ご機嫌よう」といっ た挨拶を入れるようにしましょう。
  6. 非を認める時は認める。礼を言うべき時は礼を言う。
    自分が間違っていたり悪いと思ったときは正直に認め、謝りましょ う。人に助けられたり厚意を受けたと感じたらすみやかに礼を述べ ましょう。
  7. 相手や誰かを誹謗中傷するようなことは書かない。
    生身の人間どうしですから、意見が合わないことはあります。議論 をすることもあります。議論が嵩じて口論に近い状態になることも あります。
    が、筆が滑って相手の人格や容姿、出生や経歴に触れるようなこと を書いてはいけません。罵倒したり侮蔑したりするのも厳禁です。 やったが最後、収拾もつかなくなりますし取り返しもつかなくなり ます。
  8. 個人的な用件をメイリングリストに送らない。
    メイリングリストで友人ができることもあるでしょう。友人が同じ メイリングリストに参加することもあるでしょう。が、そこは「公」 の場と同じと考え、個人的な交流を持ち込むべきではありません。 私信は相手に直接送りましょう。
  9. 迷惑メイルはもってのほか。
    言うまでもないことですが、メイリングリストにウィルスメイルを 送ってしまったら何十何百という人に迷惑をかけることになります。 「ウィルスに感染しているとは気づきませんでした」では済みませ ん。ちゃんとウィルス対策ソフトを動かしておきましょう。また、 ウィルスに弱いとされるメイルソフトは使わないようにしたいもの です。
    それからこれも言うまでもありませんが、メイリングリストやその メンバー宛てに、チェインメイルや勧誘のメイルなどを送るのもご 法度です。
  10. 人のアドレスを許可なく漏らさない。
    メイルアドレスは実世界の住所や電話番号に相当する大切な個人情 報です。悪用されたりすることのないように、他人のアドレスを本 人に無断で第三者に教えることは慎みましょう。
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気楽にやればいいのさ

 ひとつ注意しておくとすれば、「世界に触れる」ということは、目立 たないかも知れないけれど、確実にあなたを変えます。いや、変わらな いかも知れませんが(^^)、変わってもおかしくありませ ん。それは心地よいことかも知れませんが、不快なことかも知れません。 変わりたくないのに変わってしまうのは、たぶん誰しも好きではないで しょう。変わるのが嫌な人、怖い人は、迂濶に日本語の通じない場所に 出ていかない方がいいかも知れません。

 そうした点を除けば、難しいことはありません。少なくとも英語とい う頼りないオールで恐る恐るボートを漕ぐよりは、遥かに気楽に世界の 向こう岸に辿り着くことができるのは保証します。といっても「うまく 行かないぞ。責任とれ」と言われても知りませんが。個個の責任と覚悟 で実行してください。

 いかがですか? あなたもエスペラントという面白いことばで、広い 海に漕ぎ出してみませんか。

 Mi esperas vidi vin ie en la Interreto. Ĉion bonan al vi ĉiuj.

(おわり ―― 2001.12.20)

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