自転車の歴史探訪

 
現存する国産ダルマ型自転車

   日本に現存するダルマ型自転車は、現在、26台ほど確認されている。この中のほとんどものはオリジナルと思われるが、レストアやレプリカがまったくないとは言えない。製作年代は、恐らく明治19年〜明治25年までと思われる。年代特定で基準になる自転車があるので、国産ミショー型自転車よりも推定しやすい。基準になる自転車とは、既に触れた江戸東京博物館が所蔵する国友のダルマ自転車である。「明治二拾四卯年四月上旬国友作之」とフレームの一部に刻印されている。

江戸東京博物館所蔵

1988年9月15日付け産経新聞の
「明治二拾四卯年四月上旬国友作之」と刻印されている部分

 始めを明治19年とした理由は、次による。
 明治19年に帝国大学の広田理太郎、和田義睦、同理科大学の田中館愛橘、沢井廉の四名が、自転車クラブを設立し、和製と思われるダルマ自転車に乗っている。
(朝野新聞 明治19年3月28日付)
 明治19年の11月〜12月にかけて東海道をトーマス・スティーブンスがサイクリングし、これを見た徳川慶喜が明治20年に米国製のオーディナリーを購入している。
(静岡大務新聞 明治20年2月5日付)
 これらの事象などから判断して明治19年〜とした。

   現存する国産ダルマ型自転車の所在先リストは、下記を見ていただきたい。このリストは一部30年ぐらい前の資料から作成しているので、現在もまだその施設などに所蔵しているかどうか未確認である。当然これ以外でも何処かに所蔵或いは埋もれているものもあると思う。分かり次第、このリストに追加或いは補正していきたい。このリストの殆どは、1984年に開催された明治自転車文化展(自転車文化センター主催 3月9日〜4月1日)に出品されたものと、その時に作成された資料に基づいている。
 明治自転車文化展からすでに20年以上になるので、国産ミショー型自転車同様この辺で所蔵先等の再調査が必要と思われる。

 日本のダルマ型自転車の歴史は、前後1,2年を足して約10年間(普及期)と考えたい。
 その理由は、1885年から1895年の間に資料が集中していることと、先ほど述べた製作年代などから約10年間に絞り込むことができるからである。10年間は短いようであるが、この10年間の出来事が、その後の自転車発展に大きく貢献することになるからである。

   国産ダルマ型自転車の所在先リスト

1 江戸東京博物館 東京都墨田区横網1-4-1 計2台所蔵
2 みどのや自転車店 静岡県藤枝市志太2-2-30
3 関町民会館 三重県関町
4 奥野健一 大阪府堺市
5 茅ヶ崎市文化資料館 神奈川県茅ヶ崎市中海岸2-2-18
6 鰹コ和インダストリーズ 名古屋市西区菊井二丁目11番5号
7 半田市郷土資料館 愛知県半田市 計3台所蔵
8 口之津町歴史民俗資料館 南高来郡口之津町甲16-7
9 加茂市民俗資料館 加茂市大字加茂229−1
10 日本民俗資料館・松本市立博物館 長野県松本市
11 三和自転車工業(株) 埼玉県蓮田市
12 ヨシダ自転車製作所 東京都北区昭和町1丁目4-10 所蔵移転先不明
13 石黒コレクション 東京都杉並区
14 国立科学博物館 東京都台東区上野公園7-20
15 法多山尊永寺 袋井市 所蔵移転先不明
16 東 功一 福井県敦賀市
17 神戸ランプ館 神戸市 計2台所蔵
18 関西利工梶@大阪府堺市
19 田原町民俗資料館 愛知県田原市田原町巴江11-1
20 大垣城郷土博物館 岐阜県大垣市郭町2-52
21 高橋 勇 大阪府
22 シマノ自転車博物館 大阪府堺市堺区大仙中町165番6
23 谷村四郎 滋賀県坂田郡
24 北谷光義 近江八幡市
25 自転車文化センター
26 名取サイクルスポーツセンター


参考資料:

●「明治自転車文化展」 自転車文化センター 1984年3月9日発行