自転車の歴史探訪

 
専門書のはじめ

 何でもそうであると思うが、何かが流行すると直ぐに本や雑誌が数多く出版される。反対に本や雑誌、新聞が火付け役となり、あるものが流行する場合もある。自転車の場合はどうであろうか。ドライジーネが登場した1817年以降、新聞報道はされたが、本の出版はなかったのか。恐らく簡単な解説本ぐらいは発行されたのではないかと思われるが、今のところそのような本は発見されていない。
 ミショー型自転車の解説書はすでに10点以上知られている。ピエール・ミショーが考案したベロシペードが1861年に登場してから5年ほどで欧米を中心にこの自転車は広がっていった。特にイギリスではコベントリーを中心にミショー型自転車は盛んに製造され、それに伴って1868年頃からボーンシェーカーに関する解説書が多数出版されたのである。
 どのような本が出版されたのか、以下まとめたので見ていただきたい。

@VELOCIPEDES, bicycles and tricycles, how to make, and how to use them,
by VELOX 1869年発行

ATHE VELOCIPEDE ;its history, and practical hints how to use it.
by AN EXPERIENCED VELOCIPDIST.1869年発行

BTHE VELOCIPEDE, its past its present & its future,
by J.F.B 1869年発行

CTHE MODERN VELOCIPEDE ; its history and construction,
COMPILED BY A WORKING MECHANIC.1869年発行

DTHE VELOCIPEDE; how to use and how to choose it.
by Simpkin, Marshall & Co.1869年発行

EVELOCIPEDES, how to learn without a master.1869年発行

FTHE VELOCIPEDE, and how to use it,1868年発行

GTHE VELOCIPEDE; its history and how to use it, 1869年発行

HTHE VELOCIPEDE; its history, varieties and practice, 1869年発行

ITHE BICYCLE, its use and action by Charles Spencer, 1870年発行

JCaducetres ou Jambes-Etrieres Brevetees S.G.D.G pour VELOCIPEDES par
Ad Berruyer. 1869年発行

KLE VELOCIPEDE sa structure, ses accessoires indispensables 1868年発行

 これから更に調査が進めば、まだ出てくる可能性はある。JとKはフランス語本で、以前、パリ在住の小林恵三氏からコピー提供があったもの。

 ところで、日本での状況はどうかと言えば、明治20年以降やっと出版されている。
 数年前、古本・古書リストに「乗方指南 自転車利用論 完」(金澤来蔵著 普及舎 明治23年9月14日発行)と言うのを見かけたが、どうやら売れてしまったようである。確かこの古本は3万円ぐらいの値段がついていたかと思う。しかし、その後この本は国会図書館にあることが分かり、いつでも閲覧が可能である。いまのところこの本が一番古いと思う。その他には、次のようなものがある。

「自転車術」渡辺修二郎著 少年園発行 明治29年発行

「自転車乗用速成術」村松武一郎著 内外商事週報社 明治32年発行

「新式自転車独習」岩田可盛訳 叢書閣 明治33年発行

「フートボールと自転車」三井末彦著 博文館 明治33年発行

「簡易自転車修繕法」佐藤喜四郎著 快進社 明治35年発行

「自転車全書」松居真玄著 内外出版協会 明治35年発行

「自転車指針」梅津大尉著、快進社 明治35年発行



参考資料:

●「The velocipede books」”The Boneshaker”誌 68 volume 7 Autumn 1972年発行
 イギリスのVCC会報 P.192

●「情報あれこれ」(自転車利用論など)真船高年
  日本自転車史研究会 会報”自轉車”8 1983年3月15日発行

●「ベロシペッドの本」大津幸雄
  日本自転車史研究会 会報”自轉車”38 1988年1月15日発行