大山北壁登攀 弥山尾根・別山バットレス中央稜

                               記:坂崎 智明

 

日 時:200837日(金)夜〜9日(日)        

目 的:雪稜登攀

山 域:大山北壁(弥山尾根、別山バットレス中央稜)

参加者:坂崎智明(L.装備)、大杖哲司(気象・食糧)

行 動:7日(金)21:00JR加古川駅北側集合〜乗用車にて加古川バイパス〜播但道〜中国道〜米子道〜溝口IC0:15南光河原駐車場(車中泊) 

8日(土)5:30起床〜7:00駐車場発〜8:00元谷小屋〜9:00弥山尾根取り付き〜10:50弥山頂上〜12:30駐車場〜皆生温泉〜駐車場(車中泊)

9日(日)3:00起床〜4:30駐車場〜5:38元谷小屋〜7:00別山バットレス中央稜取り付き〜10:20コル・実質登攀終了〜11:00夏道〜12:15駐車場〜岸本温泉〜往路を帰る

 721:00JR加古川駅北側集合し、大山に向かう。車は坂崎友人の三菱デリカ。四駆・スタッドレスの重装備、荷台は広く言うことなしです。道は空いており順調に大山に向かう。事前の調査で溝口ICから大山寺までの道が一部通行止めになっていることを確認。ただ道を一本間違え、通行止めの道に出会ってしまったのはミスでした。南光河原駐車場につき、寝る状態にセットする。ほぼフラットになり、快適な寝床ができあがりました。

 85:30起床。出発まで時間が掛かる。元谷小屋にテントを張る計画をしていたが、弥山尾根だけでも登ろうと考え、軽い荷物で向かう。元谷小屋付近の堰堤からは視界がバッチリで、弥山尾根、別山バットレスのルートがよく分かる。すでに何パーティーか取り付いている。取り付きまでのトレースもばっちり見える。これで迷うことはない。弥山尾根には弥山沢を横切らなければならない。状況によっては雪崩の危険があるトラバースです。選考パーティーは1パーティーのようです。別山バットレスは数珠繋ぎです。アイゼン、ハーネス等登攀具を取り付きで身につけ、ザイルなしで登り始める。トレースばっちりで階段状を登っていく。天気も申し分なし。風もなく言うことなしです。お互いに写真をとりあう。最終ピッチで先行パーティーに追いつく。一番に取り付くことができれば楽しいルートになるでしょう。うらやましく感じる。2番手では、トレースを追うだけになってしまう。稜線にでてもそれほど風はきつくない。稜線に出るまで迷わないか心配していたが、視界もあり迷うことはなかった。夏道をたどり駐車場へ。まだお昼である。時間がたっぷりあるので、皆生温泉に向かう。一度来たことがあるOUランドへ行く。安く温泉に入ることができる。のんびり温泉に浸かり、大杖さんはビール、坂崎はごはんを食べてくつろぐ。一度南光河原駐車場に戻るが、展望駐車場に移動し、弓ヶ浜を見ながら食事する。この季節に外でゆっくり食事するなんて考えられない。南光河原駐車場に戻り、寝床をセットし今日も車中泊とする。明日は3:00起床とする。

 93:00起床。寝過ごすかと心配したが起きることができた。元谷小屋付近の堰堤から取り付きに向かうヘッドランプが見える。先行者がいるのかとがっかりする。しかしこのパーティーは弥山尾根に向かい、別山バットレスには一番に取り付くことができた。昨日大杖から階段状の登りになると、以前痛めた膝が痛くなると申し出がありました。取り付きまでで、登ることができるか判断しようと確認していたので、取り付きまでに何回か状況を聞くといけるということで、登攀準備にかかる。下部の樹林帯はトレースがばっちりあり、ザイルなしで取り付く。岩が出てきたところからザイルを結びあう。大杖に先ずはトップを行ってもらう。1ピッチ目:登りはじめの岩を左から越えていく。後は階段状になっている。2ピッチ目:終了点手前の岩場を越える。3ピッチ目:ここが核心ルート。凹角状を越えていく。立木でピッチを切る。別山ピークまで伸ばせそうだがここで切る。4ピッチ目:一部浮き石でイヤになる。頂上でビレー。風がきつい。5ピッチ目:ナイフリッジもトレースがあり問題なし。別山沢側をクライムダウンする。6ピッチ目:コルまで伸ばし、ザイルを外す。コルは風がきつい。ようやく大山の洗礼を受けた。風はきついが、気温が高いからか寒さは感じない。ザイルをしまい、夏道をめざす。稜線に抜けると風で体が振られる。握手を交わし、さっさと下山する。別山バットレス中央稜はそれぞれのピッチで岩場は一カ所だけで、支点もその付近に一カ所あるのみ。終了点はリングボルトかハーケンが2カ所ありました。駐車場で荷物を片づけ、岸本町温泉に向かう。ここものんびりできるいい温泉でした。帰り道も渋滞することなく、加古川駅で解散する。

 

 

 

今期最初の雪山

大杖 哲司

 弥山尾根は元谷小屋付近から別山バットレスに向かう尾根を登って、途中から弥山沢に降りて広い斜面を横断した。雪崩に適した斜度である。トレースがあったのでそれをたどる。結局稜線まで先行パーティーのトレースをたどっていき最終ピッチで追いついた。先行パーティーはラッセルなのでロープを用いていた。我々は特に危険なところもなくロープなしにあっけない幕切れとなった。ここは他人のトレースをたどっても満足度は低い。

  別山バットレス中央稜は弥山尾根から見て意欲がわいていた。翌日に最初のパーティーとして登った。岩と雪のミックス部分は楽しめたが、ピークからは前日のトレースがあるのでこれもあまり面白くない。ナイフ状の稜線もなんのその、あっという間に夏道に着いてしまった。それでも二日間天気にも恵まれ快調に登れたことを良しとすべきだろう。秋から不動岩でのアイゼントレなどを重ねてやっと行けたのだから。今季最初の雪山だった。大山は近いのでまた行きたいものだ。

 

 

5年ぶりの弥山尾根

坂崎 智明

 ちょうど5年前に朝元さんと弥山尾根を目指しました。その時は天気も悪く、ルートもよく分からず、3ピッチ伸ばして敗退する。敗退しながらあられの中を下って気持ち悪い思いをしたのをよく覚えています。今回天気もよくルートもよく分かるので、前回どこで迷ったのか確認するがよく分からない。取り付きは間違えてなかったと思う。ルート取りが悪かったのでしょう。今回はトレースがあり、階段状を追いかけるだけで登る楽しみは少なかった。ただ、快晴でこれほどの好条件で登ることはないので楽しみながらいく。トップで取り付き、自分でルートファインディングしながら登ることができれば充実したものになると思います。

 久し振りの雪山であり、出発前は準備にバタバタしました。最終的には車での移動であったので、とりあえず荷物を放り込んでの出発となりました。出発前は、正直かなり不安がありました。ルートそのものについてもそうですし、久しぶりの雪山であり、気持に余裕はあまりありませんでした。玉井さんからは、出発直前に、「天気はよし。2本登れよ。力量的には問題ないと思うが、ケアレスミスはしないように」というような内容のメールをいただく。玉井さんは、僕の力量をどのように評価してくれているのだろうか?その評価に見合う力量が果たして、今持っているのだろうかと思いながら大山に向かう。

 今回は、南光河原駐車場をベースにしました。当初予定は元谷小屋をベースに考えていましたが、とにかく弥山尾根だけでも登ろう。そのことを優先し、荷物を軽くしよう。前夜移動のため、あまり寝ることができないので、テントを担いで移動する体力をなくそうと考えベースを駐車場にする。僕自身久し振りの雪山であり、駐車場をベースにすることにより、いつでも下界につながっている。逃げることができるというような気持ちがどこかにあったのかもしれません。雪山に対する怖さ、山の懐に入る怖さのようなものを感じていたのかもしれません。本来、山の懐に入ることが楽しみであるはずなのですが。

 今回は2本登ることができましたが、どないしてでも登ってやるんだという気持ちはあまりありませんでした。1本登ることができたらいいかなというような気持ちでした。大杖さんから、膝の調子が悪いと聞いた時も、無理であればあっさり降りようと考え、登ることにこだわりはありませんでした。これが僕自身の弱いところかと思います。どうしてでも登る。山に立ち向かう気持ちが弱いところがあります。玉井さんから、出発前に喝を入れられ、頑張って2本登ろうという気持ちになるようなところがあります。目標を決めて、それに向けてトレーニングを積んできた山であればそうではないのでしょうが、今はそういった山行ができていません。

 この大山登攀は、5年越しの課題であり、ひとまずクリアーできたことはよかったです。一つ一つ経験を積んでステップアップしていきたいと考えます。大山は近い山ですが、十分楽しむことができます。次回はトレースのないルートをたどってみたいと思います。