海外クライミング報告 2006年山行記録   ホーム

インスボン

はじめに:
 安村ガイドは、仁寿峰に、20年以上通いつめておられ、白雲山荘のご主人および現地ガイドのチェさんとは、旧知の仲である。今回の山行は、安村ガイドに、すべて取り仕切っていただいた。
 チェさんは、日本語が達者な方で、韓国公認のガイドの資格を持っておられる。韓国では、有名な作家で登山家でもある。ソウル市内の移動は、往路も帰路もチェさんにご案内頂いた。
 ソウルの天気予報は、白雲山荘で教えてもらえる。ほぼ予想通りに当たる。が、仁寿峰は、蒸し暑くなると午後から雨になることもある。雨になっても、翌日、日が照れば、岩はすぐ乾く。しかし、クラックの中は、濡れたままなので登るのに苦労する。
 白雲山荘から岩場まで、ルートにもよるが近い所で30分で着く。昼食は、山荘に戻って取ることをお勧めする。お菓子類で済ますより、山荘のおいしい料理(うどん、チジミや豆腐料理)でスタミナをつけ、一息つくと、午後の部も楽しめる。夜の部は、韓国家庭料理にマッコリだ。
 装備は、10.5mm、50mロープを1本、カム類1セット(2セットあれば心強いが身に付けると大変)、ヘルメット、ヌンチャク5〜6本、その他クライミング用具一式。間隔は広いがペツルのボルトが打ってある。ピッチの終了点は、ワイヤーのループが設置あるいは鉄の杭が打ってあり頑丈だ。
 4月〜5月および10月〜11月は、白雲山荘で登山学校が開催される。雨になると、テント泊は厳しいので、講師、生徒の皆さんは、白雲山荘に宿泊することになる。計画時に登山学校の予定を確認する必要がある。
 今回、60名が詰め掛けると聞いていたので(山荘の定員は、約40名)、早々と下山した。最終日は、市内観光をしなければ、午前中に登って帰国する時間的余裕もある。
 今回の韓国内(航空運賃を含めない4泊5日の宿泊、移動、生活費)の費用は、総額約11万ウォン(約1万4千円)だった。総じて、日本より物価が安い。しかし、帰路で寄った登山用品店で、クライミングギアやシューズの値段をチェックしたが、日本とほぼ同じ価格かやや高めだった。もう、韓国でまとめ買いする時代は過ぎたようだ。


山 域

韓国・仁寿峰

日 程

2006年5月3日(水)〜5月7日(日)

参加者

安村 淳ガイド、上田(記)、他会2名

日程詳細

3日(水)晴

関空 9時半発〜仁川国際空港 12時着〜(待合せ)13時頃〜リムジンバス(#605−1、約1時間半)〜明洞・セジョンホテル 14時頃〜地下鉄4号線(約40分)〜スユ駅(昼食)〜タクシー(約30分)〜トソンサ広場〜山登り(約1時間)〜白雲山荘 16時頃着

4日(木)晴

8時半 出発〜オージースラブで練習〜シュイナードB〜白雲山荘(昼食)〜フリークライミング(女情ルート1P)

5日(金)曇り一時雨

8時 出発〜ウジョンB(3P撤退)〜フリークライミング(ダイクトラバース)〜白雲山荘(昼食)〜シュイナードA(3Pまで)

6日(土)雨(豪雨)

昼過ぎ下山〜トソンサ広場からタクシー〜ウイドンから路線バス(#120)〜スユ駅付近のモーテルで宿泊

7日(日)晴

スユ駅から地下鉄〜ソウル市内観光(昌徳宮)〜14時頃〜リムジンバス〜仁川国際空港 15時半頃着〜帰国


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トソンサ広場から白雲山荘に向かう。
山道の途中の峠で、仁寿峰にお目見えする。
岩峰の右側から突き出ている岩が、耳岩と呼ばれている。



シュイナードB+耳岩

 始めに、体慣らしに易しい下部のスラブ(オージースラブ)を1P登った。平日の午前中なので、クライマーは、日本人ばかりだ。明日から、天気が崩れるらしいので、初日に、目標のルートに挑戦することになった。安村ガイドと上田は、シュイナードBへ向かった。

 取り付きは、石碑が目印。少し登って立ち木でビレイを取る。安村ガイドと上田は、つるべで登る。小川山で特訓したとは言え、巨大な岩壁に圧倒されてしまう。安村ガイドのリードで、1P目が始まった。

 1P目、易しいクラック(5.7)。ランニングビレイは、カムを使う。クラックの終了点から左寄りに支点がある。
 2P目、シュイナードBの核心(5.8)。アンダークリングで登る。が、粒子の粗い花崗岩なのでフリクションがよく効く。立ち木の根元に、支点が設置されている。
 3P目(5.6)、少し上がった左手に、ペツルのボルトがあり、ここにクリップして、右手にダイクをつたってトラバース。手ホールドが無いので緊張する。右に走るクラックは、簡単に登れた。
 4P目、チムニーとダブルクラック(5.7)。ガバをつたって左にトラバースし、ガバのチムニーを登る。チムニーを抜けて、ダブルクラックに移るところで、ロープの流れが悪くなった。チムニーの抜け口のペツルに掛けたヌンチャクが短かったようだ。2本連結すべきだった。
 5P目、チムニー(5.5)。ステミングで気持ちよく登れる。
 シュイナードBは、これで終了だが、下降ルートの南面に向かうには、耳岩を越えなければならない。ここで、Sさん・Mさんパーティと合流。
 6P目、耳岩、スラブ(5.10d)。上田がリード。左側の足元がすっぱり切れた辛口ルート。落ちないように、ビレイ用のボルトにクリップしておく。左に体を傾けて、カウンターバランスで1本目のクリップを取りに行くが、とても緊張する。2,3回トライして、何とかクリップできた。しかし、とても登れそうなスラブでない。A0だよ。と言われて、迷わずヌンチャクを掴んで登った。ミシンを踏む足で、微妙な凹凸を拾う。手のひらから、汗が吹き出る。上部に行くにつれ傾斜も緩くなり、恐怖心から次第に達成感を味わえる余裕が出てきた。

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オージースラブ(写真左側のスラブ)
1Pの練習にちょうどよいスラブ。左右2本のルートがある。注意すべき点は、50mロープでは、短くトップロープの練習ができない。リード/フォローで登って、初心者は、ロワーダウンで降りることになる。慣れれば、途中まで懸垂下降して、下部はクライムダウン。
写真は、2004年のGWに撮影

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シュイナードB(全景)
木から取り付き、左に大きく迂回しているクラックに沿って登り、後半は、頂に真っ直ぐ突き抜けるクラックに沿って登る。
シュイナードBの右側のクラックは、シュイナードA(写真右端)。

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シュイナードB(2ピッチ目)

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シュイナードB(3ピッチ目)
写真右側のクラックを登る。先行して登っているのは、東京のパーティ。

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シュイナードB(4ピッチ目)
ワイドなクラックを登る。ガバが多い。

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耳岩(写真上側)から下降、山頂に向けて登り返す。
写真は、2004年のGWに撮影したもの。



 終了点で、一息ついていると、女性の悲鳴。先行パーティの日本人クライマーが、下降点へ向かう途中の登りで、韓国人の女性クライマーの上に落ちたらしい。リードで登っている人の下に入らない事。

 南面の下降ルートに行くには、仁寿峰の山頂を越えなければならず、まだ、1P半の登攀が要る。山頂では、韓国人クライマーに混じって、日本人クライマーがキムチのご相伴に預かっていた。

 下降は、50mロープ2本を8の字で結束し、結び目が転がらないように、さらに、ひと結びする。ロープの末端は、別々にひと結びする。空中懸垂になるので、もつれない様に1本ずつ投げる。50mロープ1本で下降する場合は、鳩ルートを下降に使うことになる。この場合、登っているクライマーに注意すること。60mロープ2本なら1回で下降できる。

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南面の下降点。
写真は、2004年のGWに、白雲台から撮影したもの。



女情ルートの1P目

 白雲山荘で、チジミとうどんを食べて一息いれた。午後、上田とSさんで、フリークライミングに挑戦すべく、再び岩壁へ。ルートは、女情の1P目(5.10c)。下部は、ガバだが、1ピン目が遠い。中間部は、ダブルクラックになっており、右側のクラックをレイバックで登り、その状態から、左のクラックに移らなければならない。上部は、フットジャムのクラック。Sさんが悪戦苦闘して、何とか登った。上田は、ヌンチャクをあぶみ代わりに駆使して登った。つまり全然、登れなかった。

ウジョンBとフリークライミング

 今日は、Sさんのモチベーションが上がらず、4人で登ることにした。1P目、安村ガイドがリード。続く2P目は、易しいスラブ。上田がリード。3P目は、安村ガイドがリード。ここで雨。残念だが、撤退となった。

 下に降りると、雨はやんだ。しかし、濡れたスラブは、登れない。上田とSさんで、またもやフリークライミングに挑戦すべく、南東面の下部岩壁に向かった。今度は、ダイクのルート。名称は分からない(5.10a/b)。足がなく、ダイクを手とヒールフックで登るルート。Sさんが1テンションで登った。上田は、全然だめでした。

シュイナードAの試登

 午後、塞ぎ込んでいると、SさんがシュイナードAの試登に誘ってくれた。シュイナードAの取り付きは、シュイナードBよりさらに右手に回り込む。踏み跡も明瞭で迷うことはない。レリーフがあるところが取り付きだ。

 1P目、易しいチムニー(5.6)。上田がリード。ガバだらけなので難なく下した。
 2P目、幅広のクラック(5.7)。Sさんがリード。ランニングビレイは、ペツルもあるがカムがあればより安心。続いて、上田が登る。クラックに体を半分入れて登っていると、Sさんが、そこはステミングで登らねーと駄目。50点!
 3P目、クラック(5.8)。Sさんがリード。ピッチの核心にペツルが1箇所打ってある。ほとんど垂直の壁に、長大なクラックが走る。レイバック、ステミングやプッシングなど混ぜて登る。カムの設置が難しい。
 3P目の終了点で、懸垂下降。

 試登とは言え、目標達成!気分よく、白雲山荘に戻って、すきっ腹にビール1缶とマッコリ1杯を飲む。夕食時にも、さらに、マッコリ2杯を飲んだ。翌朝、二日酔い状態。朝食のキムチが胃に刺さる。今、思い返せば、この時に胃腸を荒らし、豪雨と気温が下がった中を下山して、さらに、スユで土産物を物色したため、風邪を曳いたのであろう。

付録〜インスボンの写真集

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東面
インスA、B、ウジョンA、B、シュイナードA,B、医大ルートなど、初心者から中級者向きのマルチルートが沢山ある。

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東南面
この麓に、楽しいフリールートがある。

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南面の鳩ルート(3PのA0)
この登り方に慣れてしまうと、スラブなんて怖くない?
写真は、2005年11月のもの

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鳩ルート(4P目)
南面の鳩ルートは、インスボンの中で、一番易しいルートのひとつ。
写真は、2005年11月のもの

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インスAルート(2P目)
インスボン入門ルートのひとつ。ちょうど胴の幅のチムニーを直上する。体が挟まって落ちないのだが、登れない。下の樹林は、オアシステラスと呼ばれている。
写真は、2005年11月のもの

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インスBルート(の取付きテラスへ向かう大スラブ)
インスボン入門ルートのひとつ。途中のピンがなく、手のひらに汗がにじんでくる。
写真は、2004年GWのもの

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インスBルート
2P終了点から、直下を撮影。フットジャムがよく効くクラッククライミングを楽しめる。 写真は、2004年GWのもの



参考文献

安村淳 「仁寿峰の岩場・主要32ルートガイド」 山と渓谷2000年9,10月号

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