西穂西尾根 ―遠いJP,もっと遠い西穂―

 

有元眞理子

 

日 程:200746日(金)夜発〜8日(日)

山 域:北アルプス・西穂高岳西尾根

目 的:劒岳・源次郎尾根のトレーニング

参加者:L・装―有元、食・会―玉井、記−上田

行動記録:

4/6(金)1920JR西宮駅北出口を車で出発 2300駒ヶ岳SA着 2320(仮眠)

4/7(土)0413起床/1455出発〜6:00松本駅で上田ピックアップ〜815新穂高温泉駐車場出発〜920穂高平着935発〜1136/1946ピーク〜1245休憩(最初の降雪 13:10)〜1407休憩(降雪)〜1418テント設営(岩場前の樹林帯ピーク前のやせ尾根)

4/8(日):晴れ
4
00起床/625出発〜713/1946ピーク〜725穂高平〜925駐車場〜1015平湯〜松本駅で上田と別れて中央道・名神を経て西宮へ帰る。  

 

 5月連休に源次郎に行くこととなった。西穂西尾根は以前から話はあったが、上田君も参加出来るというので、源次郎のトレーニングに位置付けた。桜も咲き始め、もう春かと思ったら、出発の週に入ってから雪が降った。締まった雪を期待していたが、ラッセルになるのかな?今年のような冬に雪が少ない年は雪崩の危険性も高くなる。いろいろ不安になる。と、上田君からもメールが入る。雪崩が心配と。おまけに週末の予報が良くない。

 西穂山荘に電話をするとこの2.3日の降雪は30cmだと言う。意外と少ないなと思う。お天気も良くはないが大きく崩れることはないという予想。予定通り出発する。この時期、関東方面から新穂高へ来るのはとても不便。夜行のバスがないんだ。それで松本に寄って上田君を乗っけることにする。いつも通り駒ヶ岳SAで仮眠する。2300に到着。車で仮眠する。413起床。455出発。

 

 新穂高の登山者用の駐車場は洞門下の深山荘の手前にある。そこなら無料だ。林道を歩き始める。玉井はフキノトウを摘みながらだ。少し歩くと暑くて我慢出来ない。橋でアウターの上下を脱ぐ。上着はもう一枚脱いで、1枚で歩く。ダムからショートカットすると穂高平だ。一息入れる。雪は意外と締まっている。玉井が上田にジャンダルムや飛騨尾根などを解説している。そしてこれから登るルートを見る。雪が安定しているので沢筋を登ることにする。上田君はラッセルは任せてください、と元気いっぱいだ。沢は小さなデブリがあるが、大丈夫そうだ。上田がトップで登り始める。傾斜は徐々にきつくなる。氷化した上に雪が乗っているような斜面が続く。有元は1回のキックでは決まらない。途中でカッティングして休憩する始末。上から玉井がコールして来る。やっと沢を登り切って休憩している2人のところへ到着。上田はキックステップで快適に登って来たそうだ。玉井はちょっときつく、右足はサイドステップで登っていた。ここから上田がザイルを持つという。大丈夫かな?と思うが、ザイルが増えても歩行にはなんの影響もない。私はこれでやっと2人に付いて行けるようになった。

 

樹林帯を登るが、時々もぐる。1940のピークで休憩。ここからは西尾根、北西尾根、ジャンクションピーク(JP)、西穂のピークなどが良く見える。JPははるかに高く聳えている。あんなに高かったかな?ここから暫くするとブスブスともぐり始める。樹林が切れて展望が良いところがあるんだが、今年は雪が少なく狭いせいか、あまり印象的ではなかった。やっと付いて行っている玉井がトップを交替する。13時過ぎ、チラチラと雪が降ってきた。やっぱり、という感じ。今日のテン場は2340だなと思っていたが、そこもなかなか遠い。有元がトップを替わる。もぐって疲れる。それにアップダウンが多い。こんなんやったかな?と思う。上田はこの辺でテントを、と言うが狭い。無理、と先へ行く。雪がかなり降り出した。予定のテン場は目の前にある樹林のピークを越えないといけない。テン場の選定が難しい。JPを過ぎてしまえば、明日雪が降っても引き返せない。登るしかない。2340でテントを張れば、雪が降ると引き返すしかない。うーん、と考えながら歩く。雪がかなり降り出す。みんなアウターの下衣を着ていない。又、急登だ。2200mだ。テン場までまだ140mもある。何とかテントが張れそうな広さがあるので、ここでテントを張ることにする。スコップが3つあるので整地は早い。張綱はピッケルなどで止める。今回のテントは23人用だ。いっぱいいっぱい。

 

 まず、お茶を飲んで天気図を書く。低気圧に挟まれている。その割にはお天気がいい。低気圧の速度はゆっくりということで、明日も同じようなお天気が続くと予想。雪は降り続く。トイレは充分注意するように言う。両脇は切れている。ゆっくり食事をする。フキノトウの酢味噌和えもある。明日は雪壁を登るのは無理、それより第2コルへのトラバースが怖い。それよりなにより、時間不足だろう、このスピードでは。ということで明日は下山と決める。下山も降雪状況によっては時間がかかるかもしれない。ちょっとしたトラバースで氷化してスリップしそうなところがあった。その上に雪が乗ると下りは危険だ。1940就寝。400起床とする。

 

8日、 400きっちりに上田が起こす。雪は降っていない。もち入りラーメンを食べて、テント撤収だ。外に出ると視界良好。お月さんが見えている。この辺りでは10cmほどしか積もってない。少なかったんだ。太陽が顔を見せ、快晴になる。どういうこと?アイゼンを履きハーネスも付けて出発する。玉井がトップだ。樹林は登りのトレースが残っていて問題ない。順調に下る。上田が穴凹にはまって転倒、足を抜いたら滑ったが、木に当たって止まった。「木がなかったら危なかったね」と言うと「大丈夫です。ちゃんと停止の体勢をとっていました」と言う。

 

 沢は切れていて水流もあり、岩もあるので、尾根伝いに下ることにしていた。下り始めは距離を置いて、左の尾根の斜面を下っていたが、安全だと確認して沢筋を下る。穂高平でアウターを脱ぎアイゼンを外す。はるか高みの尾根を見上げながら、「もう、荷物を負っての縦走は無理やな」「登攀具がいらんとこへ行け」「だいたい荷物が重過ぎるや、軽量かせな」「いや必要なものはいる。それが持てんかったらもう行かんことや」「必要なものは持っていかなあかん、けど、もっと軽量化できるやろ、」「軽量化を追及するあまり、必要な物を持っていかずに遭難したという事故もある」・・・意見が一致することはない。そこからショートカットを下る。アイゼンを外すと滑りそうだ。慎重に下る。林道をおしゃべりしながら歩く。と、上田が薄氷を踏んでスリップ。脇の下をスコップで少し切り、前腕にあった古傷のかさぶたも剥がれて少し出血した。消毒してガーゼを当てた。たいしたことなくて良かった。ちょっと前まで「凍っとうで」と声を掛け合っていたのに。駐車場まで歩いて、装備を整理する。玉井はフキノトウ取りだ。温泉は平湯で入ることにする。車から留守本部の坂崎に電話する。温泉は830から開いている。反省会をして1階の食堂で昼食も済ませる。上田を松本で降ろす。高速は順調で1800、西宮着。

 

反省会で
有元:前回の時とは出発の時刻が異なるのに、幕営地を見直さなかった。沢の登りでのキ          ックステップは、荷物の重さでバランスが悪く一回では決まらなかった。ザイルを持ってもらっても、着いて行くのがやっとだった。今回の山行は体力不足の時間切れ、ジャンクションピークを越えると引き返すのが大変。幕営地からだと、2日目が晴れても西穂までは無理。下りは良かった。思ったより降雪の量が少なく、アイゼンも効いた。

 

上田:尾根に出て、踏み抜くことがしばしば、大変だった。13時ごろの降雪で、登ることよりも幕営する場所を考えだし、気力が萎えた。下山時、林道(コンクリートの道)に滲み出した水が凍っていたことに気付かず転倒した。他の事に気をとられ、不注意だった。(怪我の治療をして頂いた、有元さん、ありがとうございました)八ヶ岳よりスケールが大きく、登りが大変だった。勉強になった。

 

玉井:こんな山行は3年ぶり、鹿島槍・天狗尾根以来。沢の登りで、けり込んで立ち込みが出来ない。左足が弱っている。アイゼンをすべきだった。