念願の雪彦山デビュー

                              上田 治

日 程  519()20()

参加者  L.玉井、上田、坂崎(20日のみ)

 ピッチ数が少ないのでゲレンデ感覚で取り付いたのが間違いの第一歩だった。短いルートでも紛れも無く本チャンルートだと思い知らされた。アプローチもさることながら岩場間の移動も気が抜けない。草付きは、雨のため程よくぬめっており滑りやすい。角張った瓦礫は、少しの接触で転がり落ちていく。砂利も多く、何度スリップしたことか。やっと取り付きに着いても、岩は決して微笑んでくれはしなかった。しかめっ面に開かれたルートは、辛口で、顔面から噴出した汗の塩辛さではない。W級ルートでも1ピッチが極端に難しい(A0)。小川山では、心地良いリズムでミシンを踏みながらクライミングを楽しんだが、雪彦山の登攀は、丸太のように張った腕とむくんだ指に、禁断症状的なシビレと痛みに快感を覚えながら楽しんだ。

 19()、夜行バスで6時に三宮に到着。程なくして玉井さんにピックアップしてもらう。8時前に、雪彦山の登山口に到着した。天気予報では、午前中まで雨が残るらしい。そこで、出雲岩でアブミの練習から始めることにした。出雲岩を前にして、ルーフにまで打たれたボルトルートに感動した。本当に、自分が登れるのか?と、半信半疑で、ロープを付ける。A2(前傾壁の人工登攀)まで楽にこなせたつもりだが、A3(天井の人工登攀)になって詰まった。取付き時点の心の甘さが敗因だ。ロワーダウンし、玉井師匠に見本を見せてもらった。体が回らないように、天井に足をつけることがコツだと教わる。2回目のトライでは、もがきながらも何とか終了点まで達した。レストのためにフィフィを使ったが、はずすタイミングを逃すとはずせなくなる。身をもってその恐怖を体験できた。

 休憩後、右のフリーのルートに挑戦した。核心でテンションしまくり、結局、抜けられずロワーダウン。我師匠もテンションしたが、A0で抜けて終了点に到達。気合が違う。TRを張ってもらって、二人でムーブの研究を重ねた。師匠は、執念でRP。すばらしかった。午後になって、雨が上がったので車に戻り、三峰東稜へ向かった。

 一般道を下り、途中から沢筋に沿って登り返す。獣道ならぬクライマー道だ。三峰東稜の取付きで装備に身を固め、早速トライした。W級A0A1。ウソの様に登れない。必死でもがくが腕力が尽きた。A0でも体を引き上げることができず、結局、A1で抜けた。これが現実か〜と嘆く。2ピッチ目は、師匠がリード。V+だが、フォローで登ることの気楽さをシミジミと味わった。3ピッチ目、V級A1。核心のA1を避けて登った。広い岩のテラスに出て終了。2回懸垂下降を重ねてアプローチに戻った。

 20()、朝6時に、坂崎さんが来た。今日は、3人で登る。カム類は坂崎さんに任せて、軽量化を図った。だが、後でアブミまで車に残したことに後悔する。地蔵岳の東面スラブ2ピッチ分を坂崎さんがリード。上田は、スベリ台に闘志を燃やしていたが、昨夜の雨で消された(岩場が濡れていた)。左に進路を変えて、玉井さんがテラスまでリード。交代して、上田は、クラックを抜けてスラブをロープ一杯までリード。コンテで草付きを越え、一段下がったルンゼ状見える所に降りた。ここで確保して、坂崎さんが凹角の取り付きまでリード。凹角のクラック(W級)は、上田がリード、小ハング手前で右のバンドに出た。面白い1ピッチだった。連チャンでリード。しかし、次のピッチは、大の苦手な薄被りルート。A0で行け!という号令に力が伴わず、坂崎さんにアブミ片方を借りて登る。それでも時間がかかり、登り方も危ない点が多々あった。アブミ登攀の未熟さを痛感した。つづら岩でのアブミ練習(ただし、冬期登攀のため軍手、プラブーツにアイゼン、プレートアブミ)が生かせなかったことが残念でならない。地蔵の頂上から、一般道を下る。人工ルートは無理なので、右カンテに向かった。1ピッチ目(W級)は、坂崎さんがリード。続く2ピッチ(V級)を上田がリードした。このルートは、名称通り右カンテを忠実に登ると良い。2ピッチ目の終了点は、誤解し易いので注意が必要。30mくらい登るとバンドが現れ、左端にペツルのボルト2本が打たれている。が、これは別のルートの終了点である。40mくらい登ると立ち木があり、そこにボルト3本くらい打たれている。足場が小さく、高度感を堪能できた。3ピッチ目は、カンテからやがて左寄りに登るようになり、ブッシュの中に入り、スラブ状の岩を登ると地蔵の頂上にでる。右カンテは、気持ちのいい1本だった。次回は、もう少しまともに登れるようになろうと岩場を後にした。

 

上田さんと初めてザイルを組んで             坂崎智明

 当初19日の参加予定であったが、天気が悪そうなので20日参加に変更してもらいました。久しぶりの雪彦山ですので、やはりルートを登りたいという思いがありました。去年は一度も取り付いていません。月日が流れるのは早いです。時間を作って通いたいと思います。取り付いたのは入門ルートと言われている地蔵岳東陵オリジナルルート〜凹角、正面壁に移動し右カンテルート(凹角を除く)。今日のルートくらいが余裕をもって楽しめるルートです。少しずつやっているフリーの成果も出ているのでしょう。アルパインにおいてもフリーの力は必要と改めて感じました。今日のルートを伊部さん、清水さんとトレーニングを積んで一緒に登れればいいなと思います。登りはじめは荷物の重さに戸惑いました。帰ってからお風呂場で鏡を見ると、肩にくっきり赤のラインがついていました。僕自身の反省としては右カンテでザイルが交差することがありました。またビレー点のセットがもっと早く出来るようにしたいと思います。右カンテを登っていると、展望岩から子供が「ガンバレ」「ファイト一発」とか叫んでいました。手を振ってあげてもよかったのですが、性に合わないのでやめました。

 上田さんと初めてザイルを組みましたが、安全に対する意識は高いなと感じました。1本目のクリップは必ずビレー点でとっていました。また八ヶ岳で登り慣れているからか自然物を支点に使うのがうまいです。凹角ではチョックストーンを、その次のピッチではピナクルを支点として使っていました。初めての雪彦山であり、トポを見ずにこちらが口頭でルートを説明しましたが、トポを見てもらってルートファインディングしてもらったほうがよかったと反省しています。これから先ザイルを組んでいくことによってあうんの呼吸といいますか、お互いがなにをやっているのか分かるようになってくると思います。これからもパートナーとしてよろしくお願いします。

 

雪彦山を案内して                    玉井進吾郎

 上田君がメラピークKOBEに入会して以来、兵庫の名岩峰である雪彦山を彼に登ってもらいたいと思っていた。ところが昨年9月、彼は関東に転勤となったのでもう案内もできないかと思っていた。しかし、彼は転勤後も引き続きメラに在籍し、この3月の会の総会には参加すると言ってきた。その時雪彦山を井上君と3人で計画したが、残念ながら天気が悪く雪彦山の案内は出来ず、2日間パンプ大阪で人工壁を登るだけで終わった。そして今回やっと上田君を雪彦山に案内すること日がやって来た。

 19日は雨の影響が残っていたので出雲岩でルーフの人工登攀を行なった。A3の空中ブランコを楽しんでいただけたようである。また、坂崎君の好きなクラックルートも登ってもらった。彼は初見のルートでは一生に一回だけのチャンスであるオンサイトトライをいつも心掛けており、その姿勢には感心する。自分ももっと見習わねばならないと感じる。

天気が良くなったので下山し、展望台に車を置いて三峰の東稜を登った。1P目をリードしてもらう。少し梃子摺っていたが、後は順調に登っていた。だが、帰りの下りアプローチでは道の悪さにかなり苦労していたようだ。今日一日雪彦山に他のクライマーは見かけなかった。東屋に帰って焼肉で一杯やりながら暫し話し合う。

 20日、珍しく坂崎が定刻6時に到着した。地蔵岳東稜を登るが、スベリ台は下りのピッチが濡れていたので登れなかった。凹角は上田君にリードしてもらうが、凹角よりその上のピッチで苦労していた。歩いて正面壁に回り、右カンテを登った。時間は早いが、上田君に雪彦山を味わっていただけたので帰ることにした。彼は毎月でも雪彦山へ関東から登りに来ると言ってくれた。上田君雪彦山を気に入っていただきありがとう。いつでもお付き合いしますよ。