後立山縦走報告 唐松〜五龍〜鹿島槍ヶ岳〜赤岩尾根

有元眞理子

 

日 時:2007914日(金)夜発〜17日(月)       

テキスト ボックス:  目 的:岩場の縦走

参加者:L.医 有元眞理子   渉・気 朝元 茂夫

   食・会 伊東 一江 

    装・記 古久保 晴男

行動記録:

9/14 JR西宮1920発 瓢箪山2010 駒ケ岳SA2350

9/15 駒ケ岳SA540発 白馬駅前740810 黒菱820 八方池850

    唐松山荘12001210 五竜山荘1429 就寝1900

9/16 起床400 テント場525 五竜山頂620 GX727 GZ810

キレット小屋935957 鹿島槍吊尾根1115 鹿島槍南峰1150

種池テント場1315 就寝1930

9/17 起床330 種池小屋発525 赤岩尾根分岐535 高千穂平625

    西俣出合800 大谷原855

 

 このコースは数年前に計画したがリーダーの有元が体調不良で中止になった。昨年、登山教室で白馬から唐松を歩いて、その続きと言うことにもなる。古久保も行きたかったコースだそうでメンバーは4名だ。2週間前に清水が参加を希望し、地獄谷での岩場のトレとロックガーデン中央稜のボッカの2回のトレを見て参加を決めることにした。1回目の岩場のトレはクリアーし、行けるだろうとメンバーに入れて計画を進めた。しかし2回目のボッカトレは体調不良で欠席した。トレーニング後のミーティングの話し合いで、今回の参加は諦めてもらうことにした。清水からはトレーニングの必要性を再認識したというメールが来た。清水が夏は忙しいことは理解しているが、みんなそれぞれに制約を抱えながらも目標に向けて頑張っている。この山行は半年以上も前から決まっていた。トレーニングは何回も組まれていた。具体的な日程が決められなくても、いつか、と思っているなら、いつでもどんなトレーニングでもいいから参加しておいて欲しい。

 さて心配なのはお天気である。このコースは一般道ではあるが岩場が続く。雨なら中止にせざるを得ない。秋雨前線が日本付近を北上したり南下したりしている。水曜日の気象勉強会で週末のお天気予測を行った。降ってもにわか雨か?と言う結論になった。ただ雨量が少ないとは限らない。沢は止めたほうがいいだろう。木曜日の夜、お天気は良くはないが山を中止するほどではないだろうと、予定通り出発のメールを送る。伊東は景色が見えないと面白くないそうだが。翌日、出発当日の閉庁前、九州の南にある台風が日本海に入ると聞いた。そんなこと知らない。慌てて気象担当の朝元に確認の電話を入れる。17日に島根だと聞いて一安心。残業で集合に15分遅れる。帰宅する車で道は少し混んでいる。東大阪で伊東を乗せて駒ヶ根へ向かう。ほぼ予定通り到着。いつもの場所にテントを張り仮眠する。

 暑くてうるさくて寝苦しかった。早めに起床、出発する。空は低い雲で覆われているが、時間が経つにつれて雲が少なくなる。白馬に到着。古久保の知人に頼んで車を置かせてもらいコーヒーを戴いたうえにゴンドラ駅まで送ってもらう。2つ目のリフトを降りた頃の視界は10メートルほどか?濃いガスがかかっている。マイペースが一番、という伊東がトップ。古久保、朝元の順で歩く。栂海ほどではないが、まだまだ暑い。有元は半袖だ。汗かきの3人は汗を吸うという長袖を着ている。八方池辺りでちょっとガスが切れ白馬三山の一部が見えた。ガスの中の樹林もきれいだ。池の少し上で1回目の休憩だ。古久保は痙攣予防の漢方をのんでいる。この時期結構登山者が多い。お天気はイマイチと言うのになあ。2ピッチ目、ちょっとした岩場の登りで伊東のスピードが落ちる。どうかしたのかな?と思ってみると、やっとこさ足を上げているという状況だ。後続に道を譲り、ゆっくり歩く。広場で休憩。しんどくはないが足が重いという。高度の影響か?ともかくも荷物を減らそうと食糧を取る。今回は有元は16s。他は何故か20kg。栂梅でも20kg前後だったことを思うと、今回の20kgは重過ぎる。主稜線までの最後のピッチ、伊東の調子は体感的には変らないそうだが、ペースは少し上がった。お天気は回復し五龍、鹿島がきれいに見える。稜線に上がると剣がくっきり。しかし雨がポツリと降り出す。雨具を着けヘルメットを被って出発だ。朝元、伊東、古久保、有元の順だ。雨はすぐ止み、早々に上着を脱ぐ。今回はこの繰り返しだ。雨具を着けると雨が止む。まるでテルテル坊主のお守りだ。牛首の下りは慎重に。雪の時には大きな雪庇が出来る稜線を歩く。右が切れ落ちている。伊東はこういうところを覗くのが好きだそうだ。白岳分岐の少し手前で休憩。五龍山荘まで少しだ。テン場はだんだん畑。どれも狭くて傾いている。仕方ないので登山道のすぐそばの端に決める。テントを張っていると破れを発見。5ヶ所位破れている。とりあえずガムテープで修理する。ガスって五龍のピークは見えない。天気図を真剣に書く。

 

 これで明日の行動を決める。台風は北上、前線も北上、太平洋の高気圧は西進している。予定通り行動することとして400起床とする。夕食はカツ丼。伊東が家で手間をかけて準備した食材だ。満腹になるし、おいしいし、早いという新メニューだ。明日の為に1900、シュラフに入る。ところがテン場が失敗だった。小屋の人達が出てきておしゃべりする声が聞こえる。「すげー、すげーなー」と言う声が耳につく。若い男性の声だ。それに応える落ち着いた、これも男性の声。二人は同じ年齢くらいの友人同士だろう。北極星がどうだの、夏の大三角形だの、南十字星まで出てくる。まあ、まだ1900だからいいか。私も昔は夜中に起きてまで星空を眺めたものだ。星座の勉強もしたいと思った。「そんなに、すげーの?」と順番にテントから顔を出す。「なるほど、確かに。満点の星だ。雲ひとつ無い」と納得。シュラフに戻る。ちなみに、夏の大三角形はベガ、アルタイル、デネブで男性が言ったことは正解。北極星はシリウスではない。今はポラリスで将来はベガが北極星の位置に来るそうだ。シリウスは一番明るい恒星。南十字星にいたっては論外。二人の会話に、イチイチ反応しながら眠りにつく。すると隣のテントから話し声が。今何時?3時だと言う。非常識!それどころか他の3人は夜中も夜中2400頃にアベックがおしゃべりしててうるさかったそうだ。結局眠れなかったということだ。暑苦しかったこともある。シュラフから出たり、出たと思ったら少し涼しくなって又、入ったり。早々に起床とする。朝食も伊東が家で調理してきたゴボウと鳥の煮付けで炊く雑炊だ。たっぷり食べる。みんな体調は良さそうだ。早めに準備完了。五龍へ向かう。日の出がきれい。頂上で記念撮影だ。「あれがキレット、鹿島北峰、吊り尾根、南峰」と説明する。「すぐそこに見えるねえ」と伊東。そう言われればそうかも。昨日と同じオーダーで下る。結構このコースを歩く人が多く、30名ほどはいたと言う。小屋泊の人は軽装でどんどん追い越すが、休憩で追いつくというパターンだ。前半はガレ場が多く足に力が入って疲れる。いい加減なパーティーがいて、全然緊張感がない。岩なだれを起こしても笑っている。困ったもんだ。そういうパーティーには近寄らないに限る。鹿島への急登の手前のコルにキレット小屋がある。もうすぐだと思うが、その前にピークがある。もう着くかと思うが、又ピークだ。やはり後半はこうなんだ。初めてこのコースに来た時もそうだった。小屋までが長いと思った。そして後半は岩登りになる。やっと小屋に到着だ。庭が狭いので混みあっている感じだ。順次パーティー毎に出発していく。私達はここでコーヒータイムだ。ゆっくり休む。この厳しい条件にも関わらずトイレがきれい。無料、靴のまま入れる。絶対数が少ないからこんなトイレが維持できるんだろうか?感謝感謝。鹿島に向けての最初の登りは転げ落ちてこないかと思うほどの急登りだ。そしてだらだらとトラバースが続き、最後は吊り尾根に登る。前に来た時は天狗からで疲れ果ててしまってこの吊り尾根でテントを張ったのだが、テントを張れる様なスペースは無いぞ。水を取った雪田はこの時期でもある。南峰も見えているのに結構遠い。ピークはキレット小屋よりもすごい混雑。記念撮影は順番待ちだ。冷池からピストンするツアーのパーティーがいる。それで人が多いんだ。早々に下山を始める。ツアーパーティが道を譲って呉れる。ピークから冷池小屋はすぐそこに見えたんだけど、なかなかだ。その前に布引岳のピークがある。登って下る。今日も剣は良く見える。テン場に到着だ。時間が早いからか、よくすいている。昨日の教訓を生かして、登山道の側は避ける。中々いい場所が無い。スペースと傾斜だ。時間があるので整地する。テントを張り終えると、幕営の手続き、トイレ、ビール、飲料水等の用事をするために伊東と二人で小屋まで行く。行きは下りだが帰りは10分はかかる。トイレは水洗だ。快適。水は1リットル150円。ポンプアップしているそうだ。小屋は玄関が広々して気持ちいい。タクシーの予約が出来ると書いている。まだ時間が早い。食事まで待っているとビールがぬるくなってしまう。早々に乾杯する。それから天気図まで昼寝でもと思うが、何故か、こういう時には眠れない。今日も時々雨がぱらつき雨具を着たり脱いだりしたのだが、テントの中は温室状態だ。ひまなのでもういっぱいお茶にする。やっと1600だ。明日はどうしてでも下るんだが、今日の1200の天気図と実際の天気を比べる。台風は相変わらず北上だ。前線の位置も大きく変りはしない。太平洋高気圧が少し離れて停滞している。明日も大きく崩れることは無い。夕食はスパゲティーだ。水がたくさんいるので山ではやったことが無い。スパゲティーも5分で茹で上がるというのがある。ソースはレトルト。これも早い。麺類は腹持ちが悪いがスパゲティーは別だ。満腹になった。いつの間にかポツポツにわか雨が本降りになる。その中を今度は朝元、古久保が飲料水購入がてらトイレへ行く。この雨でテントからしずくが落ち出した。ぽつんぽつんだけど、一晩経つとテントは水浸しになるだろう。それも1ヶ所じゃない。応急処置も行うが効果は無い。みんな雨具を着て外に出る。シェルの上からツエルトを被せて紐で固定する。これでどうだ。ダメだったら小屋に逃げるしかない。何とか大丈夫みたいだ。安心して寝る。雨は夜中に上がったようだが、風でツエルトがあおられてうるさかった。又々早く目が覚める。今日は1000に大谷原にタクシーを予約するので、逆算して400起床としていた。朝食はラーメン。準備が速く終わる。テント撤収時にはまだ風が強く一苦労する。日の出前の朝焼けが怖いような朱赤に染まっている。小屋で順番にトイレを済ませタクシーを予約する。便利なもんだ。小屋の前の展望台で日の出を待つが雲が出ているので、時間がかかりそうだということで出発する。赤岩分岐まで来るともう太陽は上がっていた。赤岩尾根は残雪期に下ったが、とんでもない急下降だという印象がある。夏道は分岐からはジグザグで問題ない。が、左が切れており鎖場となっている。夏ならお花畑だろうと思われるところを下る。この時期はリンドウがたくさん咲いている。高千穂平で休憩だ。もう稜線は雲の中だ。下部は木の階段の連続になり高度はどんどん下がる。この辺りだったんだろうか?アイゼンも滑るような下りって。その木の階段が滑って下さいと言わんばかりの傾いた板を打ち付けてある。「何やこの階段は、危ないやんか」みな口々に文句を言いながら下る。鎖場もある。これを見ると蓮華への延々たる木の階段が「快適な木道」と紹介されていたのは納得か?ちょっとしたスリップはあったが無事下山だ。スリップでも怪我がなければそれだけのことだが、手を突いて骨折なんてことも多い。怪我をしないのはたまたまなのか?理由があるのか?出合いからはトンネルをくぐって林道に出る。広い林道で、タクシーここまで来れるよ。途中川で水を汲み顔を洗う。気持ちいい。林道を歩いていると落石注意の看板がある。見上げると納得だ。車を入れない理由だ。今にも落ちてきそうな岩があるし、路肩にもゴロリンと大きな石が転がっている。900前に大谷原着。予定通り、お茶にする。さすがにみんなお腹が空いた。お湯を沸かしながらストレッチをする。一息ついて片付けた頃タクシーが来た。白馬まで7000円ちょっとだ。みみづくの湯に入る。白馬三山は見えない。帰路、大雨に降られたり、カンカン照りになったり、本当にお天気は不安定だった。そんな中で、パラパラ雨に降られただけで済んで良かった。

 

 

古久保晴男

私が3,4前から行きたかった縦走コースで今年ようやく念願がかなった。白馬駅前昇盛館主(健ちゃん)に八方のゴンドラ乗り場まで送ってもらいゴンドラへ。

(感謝、感謝)ゴンドラ、リフトと乗り継ぎ、いよいよ登山開始。雲の合間から右手に白馬、杓子、白馬槍、不帰岳、左手に五竜岳、鹿島槍が岳を眺める余裕がある。肩の荷もたいして重く感じない。今日は、なかなか身体の調子が良い。唐松から、ヘルメット着用。ガラ場やナイフリッジの岩稜、クサリ場も苦にしないで歩くことが出来た。2日目、今日はいよいよ本番だ。食料、水が少し減ったのか気分的に足が軽く感じられる。こんな時こそ慎重に(自重、自重)言い聞かせながら足を前へ前へと進める。目の前見える鹿島槍が八峰キレットのキツイ高低差のおかげで、なかなか近寄ってこない。鹿島槍南峰から種池テント場まで案外時間が掛ったように思った。

1)当たり前のことでは、あるがガレ場、岩稜、クサリ場では、慎重に自重、自重

2)事前に薬を服用していたのと、行動中の飲料水は、スポーツ飲料にした。おかげなのか、足は攣らなかった。

 

伊東一江

去年、白馬から唐松まで縦走した。今回はその続きで五竜、鹿島槍と縦走した。八方のゴンドラを乗り継いで、先頭で歩き出す。1ピッチ休憩してからの登りで足が重たい。去年の白馬での登りで足が攣り大ブレイクを思い出す。あれから足が攣ることに気をつけ、最近は何とか回避できていた。またか!早めに休憩して貰った。有元さんに食糧を持って貰い、唐松の頂上へ着いた。少しずつ慣れてきて、攣りそうになるのをだますことができ、テント場に着いた。急に高度を上げての歩きに着いていけないようで、栂海のように、下から徐々に上がる方がむいてるようだ。二日目の鹿島槍から冷水池山荘のテント場まで、長かったが順調に歩けた。楽しみだった八つ峰キレットは、思ったより怖くはなかった。ガレ場を下る方がかえって怖いと思った。天気予報では雨模様だったが、小雨がぱらつく程度で、展望も良く楽しむことができた。縦走は体力勝負で、これからもトレを続けて行きたいと思う。

 

朝元茂夫

今回の山行は、栂池の強烈な暑さからの完全復帰前の山行になった。

台風により微妙な天候の変化で、実行できるかどうか危ぶまれたのだが、結果的には天候も良く予定通りの山行が出来何よりでした。

八つ峰のキレットは、長くしんどかったけれども想像してたよりもインパクトは無かった。テントが古いのか、雨が漏りだしたのにはびっくりした。

 

有元眞理子

お天気が持ってくれたことが先ず一番だ。岩場の歩行に関して大きな問題はない。トレーニングの成果だ。トレーニングと言っても昨日、今日のトレーニングも大事だが、伊東は昨年は登山教室で岩場のトレーニングを継続して行っている。岳沢を下った頃と比べると格段に安定している。三点支持を忠実に実行していた。古久保は最初こそ、ちょっと焦ってると思って声をかけた。後半の岩登りで、一度後足を蹴ってスリップした。自分でも気付いているのでまあ良しとしよう。

ボッカは栂海で充分なので、岩トレを中心にトレを組んだ。後半のしんどさを思うとゲートロックで荷物を負って登るトレーニングをしていたら、完璧だった。

疲れが取れないという朝元、直前のボッカトレは無理しなかった。古久保は脚の痙攣予備の為に、漢方を服用した。その効果があったのかどうか?無事だった。伊東の不調は高度の影響かどうか?まだ、分からない。いろんなパターンで山へ行ってみるしかない。体調が不良な時、荷物の配分を変更する、ペースを落とす、休憩する、など自分から言う。これが出来れば自立した登山者と言えるだろう。荷物を持ってもらうことが自律?パーティーが最も効率よく行動するために、自分は何をすればいいか?を常に考える。

 

トレ状況

8/19(日)岩トレ キャッスル

     L有元、朝元、古久保、玉井、大杖、井上

     古久保は基本の復習。その後、1本登っておしまい。栂海の疲れが残っている。暑の中、無理しない。

 

8/26(日)岩トレ キャッスル&ゲートロック

     L有元、伊東、山村

     キャッスルは満員で暑い。昼からゲートロックに避難。登下降を行う。

     伊東はバックアップして、リードをする。

 

9/1(土)岩トレ ゲートロック&ホワイトフェース

     L有元、伊東、古久保、玉井

     玉井が手伝ってくれたので効率よくトレーニングが出来た。

     伊東、支点を追加してリードを行う。古久保、下降も問題なし。

     初めてホワイトフェースを登ってみる。難しい。

 

9/2(日)ボッカ 地獄谷〜有馬

     L伊東、有元、古久保、清水、伊部、山口

     清水が本ちゃんに参加したいと言うので中央稜から地獄谷に変更。

     剣を登る伊部、山口にも良かった。

     古久保、脚が攣って歩けなくなる。翌日内科へ行き、漢方を処方してもらう。

 

9/9(日)岩トレ ゲートロック&地獄谷

     L有元、伊東、伊部、山口

     本ちゃん前なので、軽く動いておくのが目的。登下降を行い、伊東は

     リードをする。10人パーティーが来てフィックス通過の練習をしている。

     危なかしいパーティーなので昼から地獄谷へ避難する。

 

 夏に今年のように、長い縦走と岩場縦走を組むと、体力を維持しながら岩も出来る。来年もこんな山行が組めればいいと。朝元達はメラピーク登山を控え、富士山にも行くだろうし、準備に追われているかもしれないが。出来れば長期の目標を持ちたい。毎年このような山行を重ねていくと、自然にレベルが上がり、長期目標を持つのと 同じことが出来るかもしれない。