八ヶ岳・アイスクライミング三昧 〜兵庫労山雪山交流山行〜

                                 上田 治

日 程 2月9日(土)〜11日(月)

場 所 八ケ岳・アイスキャンディー、ジョウゴ沢、南沢大滝

参加者 上田(記)、玉井、兵庫県勤労者山岳連盟のメンバー

 正月休みに小同心クラックを目指して練習していたが、仕事や風邪でパートナー達が次々と参加できなくなる事態に…。小同心クラックの登攀どころかはぐれた私は参加を見送る状況に陥った。決断する前に、他パーティーに加えてもらえないか相談をしたところ、縦走パーティーに加わっていた玉井さんに、パートナーになって頂くことになった。小同心は中止になったが、代わりにアイスクライミングを堪能することができ、腕がパンプするほど大変楽しい交流会となった。

 9()、赤岳鉱泉。入山初日。赤岳鉱泉に到着するまでは去年と同じ(去年の報告書参照)。今回は、天候不順に備えて小屋泊まり。小屋に着くやいなや早速アイスキャンディーに没頭した。アイスキャンディーとは、赤岳鉱泉の横に作られた氷の人工壁である。宿泊客は、登録すれば利用できる。平日なら、テント泊でも利用可能だそうだ。壁の高さは、10メートル程だが、周辺の氷壁より難易度が高く、また、3月の第一日曜日にコンペが開かれるので、鉱泉の名物の一つになっている。鉱泉の夕食も豪勢で美味いが、アイスキャンディーもそれに劣らず美味しい。

昼過ぎから雪が降りはじめ、かなりの積雪になったが、雪の降る中、17時近くまでアイスキャンディーを喰っていた。腕がパンプするまで10本くらい食ったか。
 10()、ジョーゴ沢。
日目から天気は回復。山に来たので少しは登るか、と言うことで毎度のジョーゴ沢に。積雪量が多く沢は完全に雪で埋まっていた。水の流れが見えない状態まで積もっていた。こんなの初めて!
 F1は完全に雪の下、F2は左半分が氷っていたが、しょぼいです。F2から上はトレースなし。ラッセルしないと上部の氷瀑に行けない。雪の多さからラッセルしただけの見返りがないと判断。突進するのは早々に諦めF2右壁の雪を落としてミックスの真似事練習に変更した。隣の氷瀑でアイスの練習をしていた東海大パーティーも感化されたか、氷のない壁を登りだす。年々、八ツの谷は、雪が増えている。異常気象のせいだろうか?

残置ハーケンがほとんどないので、トップロープを張った。2本のアックスを岩の割れ目や角に掛け、バランスを保ちながらアイゼンで登る。岩には薄氷が張り付いており、登りやすかった。去年は、完全にドライでアックスを全く刺すことができなかった。1本目の課題は、2人とも難なく登れた。2本目の課題は、登りなれている上田が下部で手こずった。昔、一人で何度も練習していたときがあり、その時の華麗なムーブ(?)に、こだわり過ぎてしまった。玉井さんは、正体で奇麗に登った。この後、二人で来シーズンは大同心を目指そうと誓う。アブミを使わず、モダンスタイルで!

日が照りだし暑くなってきたので鉱泉に引き返す。昼食はコーヒーとレーションで済ませて、早速アイスキャンディーに取り組む。この日は、有名な広瀬ガイドの講習があり、あつかましくも彼が設定したルートを割り込んで登らせてもらった。さらに、アックスの選び方、アイスのコンペの登り方のアドバイスまで無料で受けた。増田君は、バランスがいいと、お褒めの言葉まで頂いた。

私たちがジョウゴ沢で新しいクライミングスタイルを研究している間、他のパーティーは、阿弥陀北稜パーティーを除いて散々な状況だったようだ。快晴の時間帯もあったようだが風がきつく、登攀には厳しい日だった。岩佐さんパーティーは、雪が多いので裏同心ルンゼから中山尾根に変更したが、風のせいで断念し赤岳縦走パーティーに合流した。私の知り合いのベテランも、赤岳主稜を狙ったらしいが撤退を余儀なくされた。
 増田君(神戸勤労者山岳会)、吉谷さん、渕上さん率いる阿弥陀北稜パーティーのみ目標達成。2年目に祝杯を挙げることができた。おめでとう!
 私の目標である小同心を今回狙っていたとしても無理だったろう。玉井さんとアイスに興じたのが正解だったようだ。

 11()、南沢大滝。鉱泉から行者小屋を経由して南沢大滝でアイスの講習会を行った。南沢大滝の氷は、去年より出来が良く感動物だった。今回撮る気になった唯一つの写真がこれ。

 

 

さらに嬉しいことに貸切状態だった。今回は、玉井さんと上田がトップを切ってTRの設置を行った。続いて、増田君も1本、アイスで初のOSを決めてTRを掛けた。参加者が交代でビレイとクライミングに挑戦し楽しい交流会となった。
 同じ日、赤岳天望山荘で一酸化炭素中毒の事故が発生したが、交流会メンバーに被害者はなし。小屋だからといって、安心は出来ない教訓を得た。練習を終えて、皆、無事怪我もなく下山し、帰路に着いた。

 

2008年 兵庫労山 雪山交流山行の感想

玉井進吾郎

 昨年は小同心クラックを登攀するという目標があったが、今年は年末X‘masで腰を痛めたことで岩稜登攀の自信を失い目標すら設定出来なかった。アイスクライミングが出来れば良いという軽い気持ちでの参加となった。小同心クラックを登る予定の坂崎と大杖が急に不参加となり、パートナーがいなくなった上田君が私のアイスのお付き合いをしてくれた。申し訳なかったが感謝感激である。アイスキャンディーも十分堪能できたし、広瀬ガイドのアイスクライミングテクニックの一部を盗むことも出来た。神戸労山の増田君は素質があると広瀬氏が絶賛していた。

上田君も日を追うごとに調子を上げていた。あんなアックスで良く登るものだと感心した。最後の日の南沢大滝では昨年とは比べようもないほどレベルアップしたクライミングテクニックを見せてくれた。今回の雪山交流山行は自分個人としてはまあまあ満足したが、阿弥陀岳北稜登攀が兵庫県連のトップレベル?とはお寒いし、残念の一言に尽きる。何とかしなければと言いながら年月だけが過ぎて行く。