認証制度・関係業界の現状

ISOマネジメントシステム認証制度は、信頼性と有効性の回復に向けた活動が必要な状況にあります。
日本における品質マネジメントシステム(QMS)の認証登録は1994年から、環境マネジメントシステム(EMS)は1996年から始まりましたが、登録件数は、QMSは2007年、EMSは2008年をピークに、以後は減少傾向が続いております。
認証制度の適用が減少傾向にある背景或いは事由としては下記の様な事項が上げられます。

1) 逐条コンサル”や“逐条審査”が少なくなかったこと⇒ コンサルし易いMS、審査し易いMSの誘導
その主な理由として、トップダウンのマネジメントの実務経験不足或いは運用実感を持たないコンサルタントや審査員によるミスリードが考えられます。
また、コンサルタント(審査員)の力量評価項目として、トップダウンのマネジメントシステムに求められる基本的/共通的な知識及び実務経験が、現実のコンサル業務契約で明確に求められていないことも考えられます。
組織がコンサルタントを選定し、そのサービスを受ける場合の指針としては、ISO 10019:2005(JIS Q 10019:2005)「品質マネジメントシステムコンサルタントの選定及びそのサービスの利用のための指針」が有りますが、適用されていないケースが多いと思われます。
当該指針が求めている経験は、“組織を指揮し、管理するための調整された活動における経験[解説:4.2.6 c]を意味しており、品質管理を機能とする部署における経験より幅広い範囲を含んだもの”と明確に解説されています。
この指針が早期に発行され、且つ、確実に適用されておれば、“逐条コンサル”や“逐条審査”と、それによるミスリードは避けられたものと考えられます。
2) 1)の結果として、MSの形態が、“一体化されたビジネスシステムの一部”となっていない組織が多く、MS本来の目的が果たされていないこと⇒ 鉢植え的MSの誘導
そして、鉢植え的MSとなっている多くのケースは、コンサルタントから提供されたサンプル文書の内容や記録様式から誘導されたものと思われます。
“鉢植え的MS”であるか否かは、業務処理規定(システム文書)を管理する帳票(台帳)の形態、管理分担及び適用分野などに端的に表れますので、当該帳票を見ることにより、容易に判断できるものと考えております。
3) “(単純な)少ないシステム文書”を謳い文句としたコンサル会社の売り込み”によるミスリードが見受けられること⇒ビジネスシステム全体のMS構成、組織規模、業務内容、既定システム文書内容等の総合判断からの決定事項 業務処理規定に従った運営体質が定着していない状態から、一気に、短期間でMSを構築した組織の多くに“鉢植え的MS”が見られ、その状態が継続していること⇒ コンサルし易いMSの誘導
4) コンサル会社/コンサルタントによる管理責任者業務代行の存在⇒ MS本来機能を軽視したコンサル営業によるミスリード(注記:ISO9001:2008では明確に否定)
この様なコンサルテイングサービス(?)は、コンサル会社(コンサルタント)の為の制度利用といえ、MS運用組織の自立を阻害するものと考えております。
5) 認証取得自体を目的とした組織の存在
目的の一部であることは当然ですが、その余りに偏った目的意識が、上記の背景と相まって、手っ取り早く認証を取得し、安易に維持され、且つ、その状態が看過されている結果になっているものと受け止めております。
6) 認証取得組織による不祥事が発生していること⇒ 日常業務と遊離したMS
MSの維持をMS事務局に依存したままの状態となっている組織の場合は、ライン/部署長主導型の活動に転換する必要があります。
上記の様なMSでは、システムの継続的改善効果は期待出来ず、ISO認証制度に疑念を抱く結果になっております。また、規格ごとの個別構築と運用については、利害関係者から“第三者認証審査も、これを見過ごすばかりか、むしろ助長している”旨の指摘も聞かれます。
更に、一部とはいえ、コンサル会社と審査会社が“天秤棒を担ぎ合う関係”になっていることも上記実態の一因と考えられております。

2005年に初版として発行された上記ISO10019:2005指針や、(財)JABが2007年4月に発表した“新認証基準”は、上記の様な現実によるISO認証制度の信頼性低下に対する危機意識が背景にあると思われます。
認証制度の信頼性を確立し、認証取得を価値あるものとする為には、コンサルや審査はこれらの指針や基準に沿って実施される必要があると考えております。

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