KSC大島レース on Gaia
レーサーのしとは読んじゃだめ〜。
スタート:2000年5月27日(土)午前11時
コース:葉山−初島−大島−葉山(85マイル)


このレポートは、[森下@サエラ&ガイア外洋帆走部顧問様]のかっこいいレースレポートを、
[管理人@HOBBY HAWK&最近ガイアに入り浸り]がお笑いを織り交ぜて素人丸出しレポートに書き換えてしまったものです。 この番組は、茂木工業の提供でお送りいたします。(いたしま〜しゅ!)


 Gaia外洋帆走部(笑)が発足して初めての部活動はKSC大島レース。かつては「花の大島レース」と言われて40パイものフネが参加していた人気レースだけど、昨今の外洋レース離れ?で最近はエントリー数が少なくなってきているらしい。

 でも外洋経験がプア〜なわたしにとって85マイルのレースというのはなんと今までの最長。今回は、〈サエラ〉の森下アニキがアドバイザーとして乗り込んでくれることになった。わたしも「自分のできることを探して積極的にチャレンジすべし!」とアニキにハッパをかけられ、潮流チェックやウェイポイント作成や買出しなど、張り切って準備。

 2,3日前から天気予報で週末は荒れ模様になることが伝えられていた。発達した低気圧が日本列島に近づいていて、ピンポイント天気予報なるものでは、28日の大島は、南の風16m。

・・・。
じゅうろくめーとる。

 前日の夜はお天気チャンネルをつけっぱなしで、カッパフル装備&冬支度のパッキング。お天気お姉さんが「週末は日本列島をメイストームが駆け抜けるでしょう!」とニッコリ満面の笑みで伝えている。この笑顔で背筋がぞっとして、すっかりブルーになる。

 当日の朝は晴れ。まだ風は吹き上がってはいない様子。南寄りの風がそこそこあるので、うまくすれば前線通過の前にフィニッシュできるかも、なんて甘〜い考えを脳ミソのハジッコに抱きながら艤装。ラフト、自己点火灯、レーダーリフレクターなど普段見慣れないものをセットして、ジャックラインも用意して、10:00過ぎ、いよいよドックアウト。

 海上は南南西の風15ノット程、ポートタックで初島までちょっと上りきれない、というような角度。本部艇は田中のおじさまのおフネ、葉山の〈デルフィナ〉赤いのの寺さんも乗ってる。

 スタートは、ピンエンド2番手からスピードに乗ってのトップスタート。風下に〈チビプロパ〉を従え、〈シーホーク〉、〈大プロパ〉といった大型レーサーに、ガイアのお尻を舐めてもらった。

 今回の基本戦術は、常に回航ポイントに近いタックで走りながら、集団の中で勝負する、ということ。有利なサイドを抑えながらも、ぜったいに“一人旅”は避けることを大前提とした。さらに〜っ!
作戦1:
明るいウチはそこそこの位置にいながら先行艇を油断させ、大島を回ってから闇夜に紛れて優勝する(どうやって抜くかは未定)。
作戦2:
夜になってガイアが先行していたら、スターンライトを少しずつビニールテープで隠し、「差を広げられた!」と後続艇を錯覚させ、やる気を失せさせる。
……という2段構えの必勝プランまでもっていた。

 な〜んてのは冗談だけど、今回は、新しいガイアでは初めてのロングということで、森下スーパーバイザーの元、安全第一、楽しく、できれば速く!というコンセプトで気負いなく行くことに。

 初島240度に対して風が200度だったので、スタート5分後にロングサイドとなるポートタックに返す。ノンオーバーラップ・ジブしかもたない〈ガイア〉にとって、はじめのうちの10〜15ノットの風は辛かった。高さでIMS-B艇団にどんどん抜かれ始めた。

 風は細かく振れながらも、大筋としては200度〜225度となったが、その後結局185度あたりで落ち着いた。ポートタックを伸ばし、集団の北にいた〈ガイア〉は、ほぼ一発で初島に取り付いた。この時、南コースを選択したフネはオーバーセール気味となり、なおかつ初島ブランケットで、〈ガイア〉がゲイン。いったん置いて行かれた〈チビプロパ〉にも大きく追いついた。

 午後4時、雨がぱらつきはじめる。局地的なラルもあるけれど平均18ノット程の風の中、快走する。濡れる前にインナーを着込んでブーツに履き替えフル装備になる。みんなそろそろ疲れてきた様子なので、バナナ、ドーナツなどを食す。さっきから無口になっていたバウマンが気になっていたので、声をかけてみると、案の定具合が悪くなっていたらしく、間もなくダウン。クォーターバースへ消えていった。これでマッキーがバウーマンになる。アタシがマストに入って、即席バウレディースの出来上がり〜。ちょっと張り切りモード(≧▽≦)。日が暮れて、ハーネスも装着。

 風は195〜200度。千波は160度。スターボロングのため、初島回航後はスターボード・タックで走りたいところだけど、事前に入手した潮流情報では、カウンターぎみの潮が予想された。GPSのCOG/SOGを睨みつつ、いったん伊豆半島寄りに寄せのタックを打ちたいと思っていたところ、〈ガイア〉のコースライン上で、〈チビプロパ〉が抑えのタックを打ってきた。ラッキぃー! ジャストタイミング! 速攻に伊豆寄せのタックを打ち、伊豆半島のブランケット直前で、再びスターボに返す。そのままスターボを伸ばしていた〈チビプロパ〉〈ナビ〉との高さの差は約500メートル。

 その後も、COG/SOGを見ながら、もしカウンター・カレントを喰らっていたら、もう一回伊豆寄せのタックを打って、先行して伊豆ベタ寄りを走る〈アルファ〉のラインに乗せようと思っていた。でも潮は連れで、しかもリフトぎみ。風もどんどん西に振れ、取りあえず、状況を見ながらそのまま千波を狙うことにする。

 下先行の〈チビプロパ〉は、ヘディングを落とされている雰囲気。上先行の〈アルファ〉とはゲージを寄せながら近づいている。〈ガイア〉のCOG/SOGは相変わらずリフト気味の連れ潮。ちょうど良いラインに乗っていることを確認し、ダイレクトに千波を狙うことを最終決定。

 その後、伊豆と大島との中間あたりで、230度からのリフトを掴む。潮は、右アビームから、大島方向に寄せられるような感じ。千波は風下に見えてるけど、10度風上へのアロワンスをとってアプローチ。これが功を奏し、〈チビプロパ〉は後ろに回り、〈アルファ〉〈ナビ〉に続いて千波を回航。同時にスピンをアップ。ちょうちんになりかけたけど、すぐに直って何とかセーフ、ふ〜。

 日はすっかり暮れ、風は徐々にあがり20ノットを越えはじめる。20時頃、波浮を過ぎたあたりで〈アルファ〉をインサイドから抜く。ここまではすこぶる順調。

 夜が更けてくると、更に風が上がって来る。おまけに土砂降りになって、一同シーンとしてしまう。マッキーと一緒に顏を見合わせて、「もう取りあえず笑うしかないねぇ!アッハッハッハッハ〜」と声を出して笑い、「歌でも歌っちゃうー?」なーんてオツム弱くても体力はみなぎっている。バウレディースおそるべし?

 波高がだんだん高くなり、変な方向からのうねりに翻弄され、スピンを揚げたまま初のブローチング。ライフラインにしがみつきながらしばし耐えるけれど、なかなか回復しない。視界の悪さもあって、ちょっとだけビビる。(アタシだけ?)いったん態勢を立て直し、セールもクルーも無事なことを確認し、気を取り直して30分ほど走っていると、風は25ノットあたりまで上がってきた。海は真っ暗やみの嵐。もはや話をするのも叫びあう感じ。

 再びブローチング。またもや、なかなか立て直せない。でも、アニキが大きい声で仕切ってくれたおかげで、みんな冷静に行動して亊なきを得る。くぅー、頼れるねぇ。でも本当に心強かったよ。風はリフトしたので、ここはどう考えてもジャイブなんだけど、そんな状況ではないのでスピンでのジャイブを断念。起き上がった時点で、オンデッキにセットしてあったジブに交換。ジャイビングをした後、よりセールエリアの大きな、ハイカットのジブトップに交換。

 ポートタックで、右ハリ、右グルーブを使うので下揚げのストレートチェンジ。こうゆうのも、オバカなわたしは普段あまり意識したことがなかったんだけど、森下アニキに言われて事前にイメトレしておいた。クローズじゃないのでセールが大きく外に出ていて、ハリヤードがすんごい重いっ!ヒールもきつく、波もすごいので膝をついたまま、んもーすごい形相で引きまくる。オンナじゃないネ(笑)

 しかも頭にはトンネル作業員もまっ青のヘッドライト。怪しすぎである。ヘッドライトは両手を使えるのでコマネズミのように動き回るフォアデッキには必需品だけど、呼ばれてうっかり振り向くと、「ぎゃ〜〜!」と皆のけ反る。必殺・目潰し攻撃になってしまうので気をつけないと。(笑)

 セールチェンジが終わると、アニキが「Good Job〜!」と言って、バウレディースにご褒美のキャラメルをくれるのだ。わたしたちは嬉々としておやつにたかる。オマエは犬かーーーー!>自分

 スピンランを断念した頃から、まわりのライバル艇を視認できなくなっていた。海はますますストーミーになり、30ノット近くに吹き上がっていたため、ジブトップでもブローチング。暗闇で波がまったく見えないため、ブローよりも、うねりにバウが持って行かれる感じ。

こんな真っ暗闇、タコ吹きの海に出ているというのに、バングシートを握りしめながらも眠気で意識がもうろうとしてくる。こんな時、〈サエラ〉ではエッチしり取りなるお下劣極まりない遊びに興じて、眠気を振り払うらしいが、上品なおフランスのヨット〈ガイア〉ではそんなことやるはずありません。

 0時のロールコールを終えた頃、ジブトップを揚げて2度目のブローチング。「バングぅーーーっ!」という叫び声で反射的にバングカット。それでも一発で切れずにブームが水をしゃくってしまう。風速計を見ると欽チャンの仮装大賞みたいに、ピッピッピ、ピピピピピ〜!と風速計の数値が駆け上がる。何度か起き上がろうとしたけれど、すぐに「こりゃダメだ!リーフ、リーフ!」で、ワンポンにする。この時点で、無理せず、クルー/フネにトラブルなく走りきることを最前提とする“完走モード”に切り替える。

 ようやく落ちつき、葉山へアプローチ。風が20ノット前後に落ちたところでワンポンを解除。相変わらず雨は強く、視界は悪い。名島と、逗子沖の大網を避けるため、GPSにプロットしていた“スタート→初島”の航跡を睨みつつ、葉山にアプローチ。葉山のグリーンライト、新港の外灯を視認したすぐ後で、フィニッシュラインを確認する。〈ガイア〉の真後ろ0.5マイルあたりに、まるっきり〈ガイア〉の航跡をトレースしながらヨットが付いてきていた。しがみつくように付いてくるものの、どんどん遠くなっていく。

 午前2:06、無事フィニッシュ!こんな中を待っていた本部艇にはひたすら頭が下がる思い。セールを降ろし、機走で葉山に戻る途中、先ほどの後続艇を確認すると、ヘッドセールを揚げていない〈ナビ〉だった。何かトラブルに見舞われたのだろう。

 葉山マリーナに入港し、ホッとして、ハーネスをはずし、グローブを取る。手がふやけて真っ白、まるで水死体みたいになってる。「きゃ〜、見て見て」「オレだってほら〜」と皆で手を見せあう。でもわたしは濱ちゃんの手を見逃さなかった。薄気味悪さはダントツです。あなたが正真正銘ふやけた手のチャンピオンです。ワハハ。

 吹き上がってからは、途中でトイレどころじゃなくなっちゃったので、もぅ病気になりそう(-_-)。あぁ早く、温かく乾いた揺れない所でゆっくり横になりたーい。でも、まだ真夜中で上架もできないし、キャビンも、ぐじゅぐじゅにウェットになってしまったので、カッパを着たままそこらへんで横になり夜が明けるのを待つ。

 目が覚めたら快晴だった。

 大島レース、予定どおり吹いたけれど、終わってみればすごく楽しかった。これでまた1つ経験を積んだと思うとちょっとうれしくもある。4艇がリタイアしたレースだったけれど、〈ガイア〉はフネもセールもクルーもどこも異常なしで、無事完走。CRクラスでは〈UFO〉に次ぐ2位という成績。コロコロひっくり返ってる間に、〈チビプロパ〉にはすっかりやられたけどー。

 バウチームって普通、ハイクアウトも前の方、波はしこたま被るけれど、後ろの話は遠くて、今風がどうなってどういうコースを引いているのかわかりにくい。ひたすらぶら下がるだけで、「戦略会議」にも参加できないって思っていたけれど、今回は森下アニキがこまめにGPSを見ながら、前の方にもきちんと情報を与えてくれたので、いつも状況が把握できてた。フォアデッキだって人足なんかじゃなくて、ちゃんと皆とセーリングしたレースだった。これは、森下アニキが、〈ワイルドシング〉でブリスベン〜大阪レースに参加した時に経験した、クルー全員がレースを楽しむという、彼らの素敵なセーリングスタイルを、わたしたちにも伝えてくれたもの。

 今回も例に漏れず、また一つ貴重な経験をした。わたしは仲間にも恵まれて、ホントにいい経験をさせてもらってるな、とつくづく思うのであーる。

で、ガイア外洋帆走部の次なる予定は?
また行きたいぞっ。