109.七本卒都婆(道標では無い)

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神戸市北区山田町藍那27 神戸電鉄藍那駅出入口を東に50m、県道52号北側斜面上5mに南面し卒塔婆型七基が建つ
(他に五輪塔二基と多宝塔一基も並ぶ)
N34.732646 E135.118594

国立国会図書館の『山田村郷土誌』91頁
「七本卒都婆」に
「藍那村の上手道の榜に在り、卒都婆丈一丈二尺餘七本あり、花崗石にて作れり、
前に五輪塔數基あり、中に最も大なる輪塔は異形のものにて、水石の所に一段を劃し
楕圓形なり、この塔は須磨大手の勝n宸ノ在る證樂上人の塔、及び蘆屋村猿宮に在る
猿丸太夫塔、又當原野村成道寺境内にあるものと殆ど同型なれば、或いは九百年前に
斯る形式のものの行われたるものならんか。今此の卒都婆の所在地は薬師堂の在りし
地にて、當村には西hチと呼ぶ眞言宗の寺院ありしといへり、されば村民が和泉式部
の塔、紫式部の塔なりと傳ふるものは、元西hチの四至鎮護に立て寶筐塔にして、紫
式部塔といへるは、七本卒都婆の前、谷川を隔てたる所に在り、之れ東部の鎮護にし
て、和泉式部塔といへるは南部の分なり、而して其北と西の分は不明なれども、其心
して求むれば或いは發見し得らるべきか、此卒都婆は製作の年代古く、輪塔と共に地
方に由ある人の菩提を吊ひしものならんも、今は何等の傳説なきは惜しむべし。」
とあるが、これでは七本卒塔婆の説明にほとんど寄与する点はなく、「惜しむべし」
である。
 ともあれ、丹生山丁石の予備説を検討してみよう。
予備とは、表参道現存丁石が、形式違いも含め丹生山直下の25丁から、連続して立っており、これらの予備の事とする。
もしこれらが欠けた場合にここの石に新たに銘を刻み、そこに運び立て直すとする説になるでしょう。
 現存丁石は山田町坂本に有ります。近世の管轄では「八部郡、坂本村」でしょう。ここは「同郡、藍那村」となり、
管理組織的には繋がりがないとおもわれます。宗教的に見なければならないとして、直線で3.4km程離れた地点となり
尚且つ間に相当な山があり、それらの予備とするなら、坂本村に置くでしょう。
「いやいや、25丁の予備では無く、この近辺の予備です。」に対して、
ではこの近辺に丁石がありますか。それは何処を案内する丁石ですか。と質問すると多分答えは返ってこないと思われ
ます。又、石を建てるとなると相当な費用がいるはずで、予備を置けるとは考えにくいでしょう。
 可能性の高いのは、ここに集められたとする事でしょう。卒塔婆型でない五輪塔が西福庵鎮護の建立であったものが
ここに有る事実からすれば、それと同様の理由でここに持って来られたと考えるのが自然と思う。ただ何処からとなる
と難しい。形の上から丁石とした場合、7本もあるので1kmに近い距離になってしまう。現存の丹生山丁石の3,6丁丁石
の使い古しが、丹生山直下(0丁)に置かれている事を参考にすれば、7丁であってもここに移す事はあり得そうです。
ただこの近辺には丁石を置くに相応しい寺社(西400mに禅宗大中寺、700mに八王子宮)が無い様に思う。よって丹生
山を案内するものならば、今で言う、藍那古道となりそうですが、この道筋に現存する丁石が無い点が弱点である。
 尚、碑面をよく見ると梵字や文字らしきものが見え、丁石の雰囲気は無く各基が独立している様に感じられる。摩耗
の度合いや、サイズ・様式等も統一感は無く、摩耗度も異なり、間に五輪塔や宝塔まで置かれている。卒塔婆型のうち
一石から彫り出されたものが4基、二石で構成されるものが3基と成っている。
 丁石で無い場合は寺院に置かれ、供養塔等と成ろうが墓地整理によるものには見えず、現存の大中寺からの移設も考
えにくいので、不明の西福庵(真言宗)にあったものとしたい。
 参考、『神戸の道標』では「…平清盛が丹生山へ月詣りしたのがこの道筋であった」とする烏原谷越え道を使う場合
はこの地は通過しない。一方、「鵯越え道」には「義経の鵯越えの坂落しはこの道であると伝わる有名な古道で、兵庫
の地と藍那村を結んで…」とあり、現長田区以西なら丹生山への参詣道と考えても良いか。

写真jimg5952 写真jimg5786 写真jimg5927
【1.七本卒都婆を北西に望む 【2.七本卒都婆を北に望む 【3.西端に建つ説明板
 右端に七本卒都婆  県道北側の一段上に  何の為か不明とあるが
 左、神電藍那駅】  東西一列に並べられる】  供養功徳の為であろう】

【各基詳細】
七基を左端(西側)より順に@A…Fとする。
写真jimg5940 写真jimg5938 写真jimg5785
【4.左から@AB】 【5.左からCDEF】 【6.七本卒都婆を北東に望む】

五輪塔に梵字が彫られる場合、一面だけの時と四面の場合が有る様で、一面の場合は
上から、空(キャ)、風(カ)、火(ラ)、水(バ)、地(ア)とするらしく、
四面の場合は、各方面毎に
東面(発心門):空(キャ) 、風(カ) 、火(ラ) 、水(バ) 、地(ア)
南面(修行門):空(キャー)、風(カー)、火(ラー)、水(バー)、地(アー)
西面(菩薩門):空(ケン) 、風(カン)、火(ラン)、水(バン)、地(アン)
北面(涅槃門):空(キャク)、風(カク)、火(ラク)、水(バク)、地(アク)
とするらしい。当五輪塔には複数の面に見られるものもあるが、明確なものは少ない。

【@.二石構成、(空・風)+(火・水・地)】
 高=11p、7p、17p、13p、124x20x17p(地輪のみ高x巾x奥)


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@南面
 空  風  火  水  地輪
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│ ││ ││ ││梵││          │
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@東面
 空  風  火  水  地輪
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│ ││ ││ ││ ││梵 文字痕か    │
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@北面
 空  風  火  水  地輪
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@西面
 空  風  火  水  地輪
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│ ││ ││ ││梵││          │
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【A.二石構成、(空・風)+(火・水・地)】
 高=14p、12p、13p、15p、137x23x21p(地輪のみ高x巾x奥)


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A南面
 空  風  火  水  地輪
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│ ││梵││ ││梵││梵         │
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A東面
 空  風  火  水  地輪
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│ ││ ││ ││ ││梵         │
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A北面
 空  風  火  水  地輪
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│ ││ ││ ││ ││          │
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A西面
 空  風  火  水  地輪
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│ ││ ││ ││ ││梵         │
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【B.一石五輪塔】
 高=11p、7p、13p、14p、137x20x18p(地輪のみ高x巾x奥)


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B南面
 空  風  火  水  地輪
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│ ││ ││ ││梵││梵         │
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B東面
 空  風  火  水  地輪
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│ ││ ││ ││梵││梵         │
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B北面
 空  風  火  水  地輪
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B西面
 空  風  火  水  地輪
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│ ││ ││ ││梵││          │
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【C.二石構成、(空・風)+(火・水・地)】
 高=12p、9p、17p、18p、124x25x22p(地輪のみ高x巾x奥)


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C南面
 空  風  火  水  地輪
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│ ││ ││ ││梵││梵         │
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C東面
 空  風  火  水  地輪
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│ ││ ││ ││梵││梵         │
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C北面
 空  風  火  水  地輪
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│ ││ ││ ││梵││          │
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C西面
 空  風  火  水  地輪
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│ ││ ││ ││ ││梵         │
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【D.一石五輪塔】
 高=8、8、15、15、178x22x20p(地輪のみ高x巾x奥)


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D南面
 空  風  火  水  地輪
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│ ││ ││ ││梵││梵 文字痕か    │
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D東面
 空  風  火  水  地輪
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│ ││ ││ ││梵││梵         │
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D北面
 空  風  火  水  地輪
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│ ││ ││ ││梵││          │
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D西面
 空  風  火  水  地輪
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│ ││ ││ ││梵││梵         │
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【E.一石五輪塔】
 高=11p、7p、15p、17p、139x26x26p(地輪のみ高x巾x奥)


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E南面
 空  風  火  水  地輪
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│ ││ ││ ││ ││          │
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E東面
 空  風  火  水  地輪
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E北面
 空  風  火  水  地輪
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│ ││ ││ ││ ││          │
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E西面
 空  風  火  水  地輪
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│ ││ ││ ││梵││          │
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【F.多分、一石五輪塔、空・風輪欠損】
 高=欠、欠、17p、16p、169x22x24p(地輪のみ高x巾x奥)


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F南面
 空  風  火  水  地輪
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│欠││欠││ ││ ││          │
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F東面
 空  風  火  水  地輪
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│欠││欠││ ││梵││          │
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F北面
 空  風  火  水  地輪
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│欠││欠││ ││ ││梵         │
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F西面
 空  風  火  水  地輪
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│欠││欠││ ││ ││          │
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【T、五輪塔、空・風輪欠損】
 欠、欠、16x28x28p、27x27x27p、18x23x23p
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【U、五輪塔】
 13x18x18p、11x18x18p、19x30x30p、25x30x30p、5x34x34?p
写真jimg5807

【V、多宝塔】
 相輪(伏鉢、請花、九輪、請花、宝珠)、笠、塔身、基礎
 (10x14x14p、7x15x15p、40x20x20p、8x21x21p、9x21x21p)、28x55x55p、48x38x38p、13x61x61?p
写真jimg5797

写真gimg3367
【7.神戸市北区南部の道標】
文字ずれ時はブラウザの幅や「Ctrl」と「+」、「-」キーで倍率変更等して下さい。 ↑先頭へ