<!--This file created 0:24  2004/01/24 by Claris Home Page version 2.0J-->
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   <TITLE>Sword Master</TITLE>
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<P><CENTER><B>Sword Master</B></CENTER></P>

<P><CENTER>盲目の剣聖ハボリム。</CENTER></P>

<P>
<HR>
<BR>

潮風に髪をなびかせつつ、ハボリムは甲板に出た。<BR>

盲いたその眼では何が見えるわけでもなかったが、<BR>

陸に近づいて風が変わったことや、船頭が、<BR>

盲目の客の背中をチラチラと盗み見ているのは、手にとるように分かった。
</P>

<P>…皮肉なものだな。</P>

<P>ハボリムは薄く笑った。<BR>

今では、光を失う以前よりも、全てがよく見えるような気がする。<BR>

いや、見えるようになってきたと言うべきか。</P>

<P>一月ほど前までハボリムは、ヴァレリアという、ここより南の海に浮かぶ小さな島国で、刀を振るっていた。<BR>

後にハイムの戦役と呼ばれることになるその戦いは、三勢力に分裂したヴァレリア王国を、<BR>

北の大国ローディスが勢力下に収めようとしたのが発端ということになっている。<BR>

この戦いでハボリムは、島内の一勢力に協力し、ヴァレリアの独立維持に少なからず貢献したのだった。
</P>

<P>…あの時私が神竜騎士団に同道を申し出たのは、彼らが暗黒騎士団と対立していたからに過ぎなかった。
</P>

<P>ハボリムは思い返す。</P>

<P>あの雪の山間を抜けるとき、敵対勢力の残党狩りを行っていた、<BR>

島内の一勢力に襲われていたハボリムに、神竜騎士団は助太刀してくれたのだった。<BR>

正直、彼らの助力がなくとも独力で蹴散らせはしたのだが、<BR>

後に聞いた話から判断すると、ハボリムを救うことに戦略的意味があったわけでもなく、<BR>

戦力の消耗を避けるため、見過ごされていたしても何ら不思議はなかった。<BR>

敵の敵は味方という考えがあったかもしれないにせよ、<BR>

劣勢にある者を救おうとする彼らの態度に、ハボリムは好感を抱いたのだった。
</P>

<P>とはいえ、当時のハボリムにとって最大の目的は、<BR>

両親の命と自らの視力を奪った兄バールゼフォンへの復讐であり、<BR>

神竜騎士団に同行したのも、暗黒騎士団に所属する兄と対峙する機会を窺うためでしかなかった。
</P>

<P>そうしたハボリムはヴァレリアにおける革命を一歩引いた立場で眺めていたものの、<BR>

時が経つにつれ、民族融和という、彼らの掲げる理想に惹かれるようになっていた。<BR>

ハボリムの母国ローディスもまた、三つの民族から成り立つヴァレリア以上に、多くの民族から成り立っていたからである。<BR>

彼らの抱える問題は、ローディスにおいても同じ事がいえた。</P>

<P>両の眼を潰され、反逆者として本国を逐われたハボリムを受け容れてくれたのは、下級民と蔑まれる者たちだった。<BR>

確かに彼らの生活様式は洗練されたものとは言い難かったが、素朴で温かかった。<BR>

住み着きはじめた盲目の、しかも圧制者側の民族である自分の手を牽いて歩いてくれた彼らへの感謝と、<BR>

そうされねば満足に歩むことすら適わなかった、不甲斐ない自らへの悔しさを忘れたことはない。
</P>

<P>思えばこの頃が、ハボリムが、根幹から変わっていく時期だった。<BR>

これまで自分は、一体何を見てきていたのか。世界が一転した。視野が大きく広がった。<BR>

やがて奪われた視覚を補うかのように、残された感覚が研ぎ澄まされてきた。<BR>

そのうちに、音の反響、風の流れを感じて背後の状況すらも察知できるようになる。刀の冴えはいや増した。<BR>

目で物を追えなくなったハボリムは、ここにきて初めて真の刀の極意を知ることになる。<BR>

兄との決別によって失ったものは大きかったが、その引き換えに得たものもまた大きかった。
</P>

<P>海鳥が鳴いている。<BR>

波の音が穏やかになり、風に混じる土の匂いが濃くなってきた。<BR>

長かった船旅も、終わりに近づいている。</P>

<P>兄達は、同僚のテンプルコマンド達に叛旗を翻され、虜囚の身となったという。<BR>

造反者たちの中には、ローディス教国内で抑圧をうけているボウマルカ人の王族もいた。<BR>

ヴァレリアで受け容れられた思想が、ローディスでも広く浸透していたならば、<BR>

兄達も、あるいは囚えられることはなかったかもしれない…。</P>

<P>だが、新たに暗黒騎士団を牛耳った反乱者たちを倒し、<BR>

全ての戦いに決着がついた後も、バールゼフォン達の行方は杳として知れなかった。<BR>

戦いの後間もなくハボリムは、戦友たちに別れを告げることにした。<BR>

バールゼフォン達がこんな辺境で果てるとは到底考えられない。<BR>

必ずローディス本国へと戻り、再起を図るはずだった。<BR>

仮にそうでなかったとしても、ローディスへ戻る必要が、ハボリムにはあった。
</P>

<P>船が少し揺れ、小さな衝撃を感じた。船が桟橋に接舷したようだ。<BR>

船頭が抱えた渡し板を放り投げ、ガタンと木が地面にぶつかる音がした。
</P>

<P>「着いたわよ、ハボリム」<BR>

「ああ」<BR>

ハボリムが短く答えた。最大の理解者であるオズマに告げられるより早く、渡し板に足をかけている。
</P>

<P>父の、母の仇を討ちたいという気持ちは、確かにまだ、ある。<BR>

だが、もうそれだけに囚われてはいない。<BR>

一年足らずの戦争で、自分がこれから何を為すべきか、ハボリムは掴んでいた。
</P>

<P>ゆこう。</P>

<P>剣聖は、祖国の大地を踏みしめた。
<HR>
</P>

<P><CENTER><B><A HREF="../../saga.htm" TARGET="_self">BACK</A></B>
</CENTER></P>
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