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   <TITLE>Highlander</TITLE>
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<P><CENTER><B>Highlander</B></CENTER></P>

<P><CENTER>ハイランド騎士を統べるハイランダー、ヒカシュー・ウィンザルフ。
</CENTER></P>

<P>
<HR>
<BR>

帝国の…ハイランドのこの有様はどうだ。<BR>

早朝、屋敷の外へ向かう廊下の途中、<BR>

ウィンザルフ家当主ヒカシューは、大きく息を吐いた。</P>

<P>暗黒道…あの魔導師が勧めた忌まわしい力は、
確実にハイランドを蝕んでいた。<BR>

主君エンドラから、弱き者を思いやる、かつての優しさは消え去り、
力のみを信奉するようになっていた。<BR>

それに呼応して強者の暴挙が蔓延り、国の治安は乱れていた。</P>

<P>ヒカシューはこれまで幾度となく、暗黒道から手を退くようエンドラに諫言していた。<BR>

しかし全て退けられたばかりでなく、女帝の勘気を被って、兵の指揮権を大幅に縮小されてしまい、<BR>

今ではガレス王子が軍の大半を指揮していた。
</P>

<P>…自分はハイランド騎士の頂点たるハイランダーである。<BR>

その自分がこれ以上帝室への疑念を明らかにしたならば、全軍の士気に係わる。<BR>

ヒカシューは帝室の意向に従ったが、その眉間には深い皺が刻まれた。</P>

<P>そもそもハイランドが他国に攻め入り神聖ゼテギネア帝国となったのは、<BR>

北方の大国、ローディス教国の侵略を防ぐためであった。<BR>

その為にヒカシューがローディスへと潜入させた長子ヴォラックは、<BR>

ローディスの有力な騎士団の中で高いポストを占めていた。</P>

だが当面の敵は、何時侵略してくるか知れぬ大国よりも自軍の兵のモラル低下だった。<BR>

現在、ヒカシューの主な職務は憲兵のようなものであった。<BR>

これは民衆からは大いに感謝されたが、兵士達からの、<BR>

特に暗黒道に心酔するガレス王子からの受けは悪かった。<BR>

しかしヒカシューは、これはハイランドの尊厳を守るのに必要な事だ、と決して譲らなかった。</P>


<P>このように、ヒカシューのハイランドへの忠誠は並々ならぬ物であったが、<BR>

それと同時に、名門ウィンザルフ家の存続にも腐心していた。</P>

<P>ヒカシューは考えていた。<BR>

今はまだ微々たる力でしかないが、反乱軍は日々勢いを増してきている。<BR>

確実に人心を得つつ進軍する反乱軍を前に、恐らく帝国は潰え去るだろう。<BR>

そして、ローディスが世界の覇権を狙っている以上、<BR>

この大陸を平定した反乱軍との、やがての激突は必至。<BR>

帝国を滅ぼすほどの力を得た反乱軍ならば、ローディスをも倒すやも知れぬ。<BR>

そうした場合にも、ウィンザルフの血は残さねばならなかった。</P>

<P>…いっそ娘を、反乱軍に参加させてはどうか。</P>

ヒカシューにはヴォラックの他に、娘が一人いた。母親が早くに死に、<BR>

男手で育てたのと、尚武の国柄もあってか、娘は男勝りの剣の腕を持っていた。<BR>

その娘が帝国を抜け、反乱軍に参加しようとしている事に、ヒカシューは気づいていた。</P>

<P>娘は女性初のハイランド聖騎士に任じられるほどの腕前。<BR>

身贔屓と後ろ指を指されぬよう、審査にあたっては殊更厳しく見たつもりだ。<BR>

親の贔屓目ではなく、ハイランド聖騎士の中でも腕の立つ方であると思う。<BR>

その娘もまた、騎士道の精華と謳われるハイランド聖騎士達の例に漏れず、<BR>

ハイランドの現状を憂いている様子。</P>

<P>加えて娘には女帝の命であったが故に、断れず、<BR>

結ばれた婚約があったが、当の娘はこの上なくイヤがっているようだったし、<BR>

ヒカシュー自身も、栄えあるウィンザルフの血統に、<BR>

裏切り者の血が混じる事を耐え難く思っていた。</P>

<P>仮に帝国が敗北したとしても、<BR>

ハイランド人である娘が反乱軍にあって大きな戦果を上げたとなれば、<BR>

如何な敗戦国とはいえ、ハイランドの民を無碍に扱う事は出来まい。<BR>

また反乱軍にしても、ハイランド聖騎士、<BR>

それも大将軍家の娘が与しているとなれば帝国兵の士気の低下は必至。<BR>

更に終戦後における、ハイランドの併合も易くなろう。<BR>

反乱軍が、娘の参加を拒む理由は何もない…。</P>

<P>ヒカシューは決断した。<BR>

ヒカシューは、ラウニィーの側近につけてある信頼出来る騎士を呼ぶと、<BR>

娘の帝国脱出の護衛をし、その後反乱軍へ参加するよう命じた。<BR>

その騎士は英雄ニブルの血を継ぐというハイランドの中でも屈指の名門、バーン家の出身で、<BR>

現帝国の暴政に手を貸すのをよしとせず、野に下っていたのをヒカシューが見出し、<BR>

帝国ではなくウィンザルフ家に仕えるという条件で、忠誠を得たのだった。</P>

<P>この騎士はかつてヴォラックの側近であったが、ヒカシューは騎士に、<BR>

ヴォラックに従ってのローディス潜入を許可していなかった。その血筋からか、<BR>

曲がった事の嫌いな熱血漢で、潜入任務などには向いていないと考えたからである。<BR>

祖国に剣を向けろというヒカシューの命令を聞いた騎士は、悩みながらもそれを拝した。<BR>

更にヒカシューは騎士に、この事は他言無用であると告げ、剣にかけて誓わせた。<BR>

<P>娘がこの事を知れば、自分に対し剣を振るう事は出来なくなるだろう。<BR>

恐らく、共にの反乱軍参加を訴えるに違いなかった。<BR>

しかし自分は、最後までハイランド帝室と共にゆくつもりだった。<BR>

例えそれが、悪鬼の道であったとしても、だ。<BR>

そうする事が、騎士としての本分であるし、<BR>

帝室の暴走を止められなかった事への償いであると思えた。</P>

<P>それから暫く後、娘は数日間狩りに出るという。結婚式の日取りも近い。<BR>

これを機にハイランドを離れるつもりに間違いなかった。</P>

<P>廊下を抜け外に出ると、既に用意を調え、出立するばかりとなった娘一行の姿があった。<BR>

父の姿を見て、少し驚いた様子の娘の方へ歩み寄り、別れの言葉を交わした。<BR>

供の者に気取られぬよう、何気ない言葉を選んだ。こうしていざ別れの段となると、<BR>

父様、父様、と抱っこをせがんで来ていたのが、ついこの間のように思えた。<BR>

全く、良く出来た娘だった。態度からは脱走する気配など欠片も見せなかったが、<BR>

その眼差しから、固い決意は見て取れた。そういえば亡き妻も、体は弱かったが、芯は強かった。<BR>

…気づかなかった。こんなに母親に似てきていたか…。ヒカシューは目を細め頷き、娘と別れた。</P>


娘が脱出しやすいよう、狩猟場近辺の兵の配備は薄くしてあった。<BR>

護衛の騎士にはその事を伝えてある。まず確実に、ハイランドを抜けられるだろう。

</P>

<P>…これでいい…。居室へ戻ったヒカシューは思った。<BR>

これで帝国、反乱軍、ローディス…いずれが勝ち残ろうとも、<BR>

ウィンザルフの血は絶える事なく続いてゆく…。<BR>

後は…騎士としての、ハイランダーとしての本分を果たすだけだ…。</P>

<P>ヒカシューは深く椅子に身を沈め、目を閉じた。
<HR>
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