■ 9月の戯言 ■

9月1日 

いやぁ、世界陸上も終わりましたね。熱すぎる織田裕二にウンザリでしたよ。きっと隣で中井美穂もウンザリしてたんぢゃないかと・・・ウンザリといえば、件のデコトラ。けっ、またそのネタかよ、とか言わないでくだちぃ。

今朝も6時半に轟音を轟かせ我が家の前を通過いたしました。

数日前、Aさんからメールを頂いたのですが、その中には「去年、旦那が事故ったのだが、その相手がデコトラの運転手だった」と記され、事故の内容が詳しく書かれておりました。

「悪いのはうちの旦那の方だけど・・・」という前置きで始まったのですが・・・。

デコトラおやぢが乗っていたのは自家用車。その車は元々奥さん用なので、修理に出している間代車がないと非常に困る。その際、10対0にしてもらわねば代車は出ないんダ!とゴネ、挙句の果てには「誠意を見せろ!」「今からそっちに行くからな!」とゆー脅しの電話まで寄越し、見舞金2万円までをもぶん取り、随分事故慣れした人でビビったといいます。

接触事故を起こした場合、自分に非があるかどうかは兎も角、まず相手を威圧するのが得策だと思ってる人って多いですよね。然るべき人が見れば、事故情況だってすぐにバレちゃうのに。

先月、自宅近くのコンビニの駐車場から出ようとしていたら、入ってこようとした軽自動車と接触してしまったというわたくしの父親は、すぐさま携帯電話を取り出し、警察を呼びましょう言った後、「はて、警察は何番だっただろう」と随分長い時間110番が思い出せなかったといいます。その姿に業を煮やした相手は「別に、たいして凹んでないし、もぅいいですからっ!」と捨て台詞を吐いて走り去ったらしいのですが。

まぁ、そんな父親のボケっぷり話は置いといて・・・。

保険で全てを処理して無罪方面になっちゃったのか、のうのうと走っているこのデコトラには、R丸とゆー文字が車体にペイントされてるんですが、そのRの名前の謎が昨日、井戸端会議で明らかになりました。

なんでも、事故で亡くしたデコトラ一家の子供の名前だとゆーのです。

しかも、しかもですよ、他でもない、このデコトラで自らの子供を轢き殺してしまったんだととゆーぢゃないですか。

「事故後、修理には出したけどトラックそのものは変えてないよ。あのまま」

「ココに古くから住んでる人は、その話、知ってるよ」

いやぁ驚き。で、呆れて井戸端会議中、開いた口が塞がりませんでしたよ。事故の怖さや、事故で愛する人を亡くした遺族の気持ちをよーく分かっているハズの人間がこうだとは・・・。煮ても焼いても食えない宅間守と同人種っつーことなんでしょうか。

9月2日

食費、1日520円。読み古した新聞紙を揉んで使うとしても、トイレの水を1回流すと水道代は3〜5円。どんなタンクが使用されてるのかは知らないけれど・・・。快便野郎だったとして、毎日1回糞をひり出し、放尿後も流す清潔好きだとする。

明日明後日、死刑が執行されるわけぢゃなし、食費と糞流し代だけでも最低年間20万円近くの税金がコイツのために使われるっつーことです。実際には数年後だろうから、その数倍もの金が・・・ギャー!勿体無い。

えっと、宅間守のこと。

いえね、死刑判決が下されたとき、もしも、地獄が存在せず、死者は全て天へ召されるのだとしたら・・・。亡くなった子供たちはまたこの男と再会することになり、それを考えると死刑にするのもなんだか納得いかないな〜などと思ったりしたのですが、それは単なる建前論だったことに気づいたわけです。

死刑囚が、他の囚人と同じ食費なのかも気になるところ。

「最後の食事だ、食べたいものがあれば何でもリクエストしろよ」なんて看守に聞かれる死刑囚。そんなシーンをメリケン映画では目にしますが、日本の場合はどうなんでしょ。

「世界三大高級珍味をてんこもりでよろしこ」

あぁ、想像しただけでも歯軋りモンですよ。フォアグラ、キャビア、トリュフの代わりに、くさや、臭豆腐、そしてスウェーデンのほら、ニシンの塩漬けを発酵させたシュールストレミングの三大高級臭珍味てんこもりで与えるとか。あ、でもくさやは、わたくし平気だしなぁ〜。鮒鮨に変更。いや、こっちは食べたことないから、ちょっと羨ましいのでやっぱり却下。

毎日の奴の食事は、6,000,000スコビルとゆー世界一激辛の「ブレアの5時」を唇に塗るだけにするとか・・・。

いや、そんなことより、刑務所に収容すること自体が金がかかっていけないのよね。

最後くらい、世界の人のためになることをしてもらいましょう。

一人地雷撤去。

我ながらいい考えだと思ったんですが、監視役がいないとアイツ、絶対サボるよな。つか、それ以前に交通費かかってダメぢゃん・・・。

9月3日 その1

TVショッピンヌタイムで紹介された商品。桜島の火山灰を主原料にした洗顔石鹸、その名も「つかってみんしゃい よか 石けん」。ドヒャー!

これまた、なんつーネーミング・・・、と思ったら半年で20万個が売れる勢いなんですと。

ほら、購入者の生の声をお届けします、みたいなコーナーがあるでしょ、あれでおばちゃんが語ってました。

「この石鹸を使い出してから、シミが気にならなくなったんです〜」

どうも、この石鹸を使うと視力が低下するようです・・・。

9月3日 その2

青階段の上に広がる団地には、数十年以上も前からココに住んでいるというお年寄りが多い。夕暮れ時、お年寄りたちは夫婦揃って、犬を連れて、或いは嫁に手を引かれながら、それぞれのペースでゆっくり、ゆっくりと散歩をしている。散歩中、数回顔を会わせているうちに、いろんな話をするようになる。お天気の話であったり、私が連れている犬の話であったり、当り障りのない会話。

そのおじいさんは、1匹のゴールデンレトリバーを連れていつも散歩をしていた。首を左に傾けたままの姿は、遠くからみても「あ、アンちゃんちのおじぃちゃんだ」とわかり、声を掛けると帽子を脱ぎ手を振ってくれ、私たちが近づくのを待っていてくれたり、小走りにこちらに向かってきたり。犬談議に興じながら、しばらく同じコースを並んで歩く。

会うたびに我が家の犬の名前を尋ね、そしてポケットから取り出したメモ帖に震える字で名前を書き込み「書いておかないと忘れちゃうんですよ」といって笑う。そのくせ、次の日会っても、また同じことを尋ね、同じ手帳の同じ頁に「さら、びーじぇー」と平仮名で書いていたのだが。

名前はTさん。

けれど、数ヶ月前からアンを散歩させている人が変わってしまった。

Tさんよりも若い女性なので、お嫁さんか娘さんなのだろう。

連れているアンそっちのけで、我が家の2匹を撫でまわしてくれていたTさん。

「どうしたんだろ・・・」

アンを連れている女性に直接聞くのも憚られ、Tさんの家の近所に住む知人に尋ねてみた。

「アンちゃんはね、実は東京に住んでいる息子さんが飼っていた犬なんだよ。手に負えなくなったから、代わりに面倒を看てくれって実家に送ってきちゃったんだって。躾だって殆どされてなくって、吠えるし、噛むし、散歩中は引っ張るし、男手ぢゃないととても散歩できないって、おじいさんがさせてたんだけどね・・・」

いや、散歩だけぢゃなく、ブラッシングをしている姿や庭で一緒に遊んでいる姿をよく目にしたよ。我が家の2匹に威嚇してきたことだってないし・・・。

その頼りにされたおじいさんは、アンちゃんが来る少し前に脳梗塞を発病し、既にリハビリ中だったんだという。

「健康の為には歩いた方がいいでしょ。でも一人だとなかなかねぇ。こうやって歩けるのもアンのお陰ですよ」

そう笑っていたTさん。

今日、夕方2匹を散歩させていると、Tさんの家の前に白い肌着とステテコ姿で佇んでいるお年寄りがいた。会わなかった僅か数ヶ月の間に、頭髪の全てが真っ白になり、顔も青白く、なんだかただの白い塊のように見えたが、Tさんだ。2匹を見つけると真っ先に「やぁやぁ」と声をかけ、中腰になり手を差し伸べてくれていたのに、Tさんの視線はどれだけ私が近づいても合うことがない。

「つい最近、また倒れられたらしいのよ。1回目のときは、体の左半分が麻痺しちゃってリハビリも思うように進まないって、奥さんこぼしてたんだけどね。でもちゃんとアンちゃんの散歩はしてたし、自分のコトは自分でやれるようになってたのにねぇ。今回は言葉だけぢゃなくって、目の方にもきちゃったみたいだって・・・」

知人はそう言ってた。

もっと近くまで・・・。目の前に立ち、「お久しぶりですね」と声を掛けながら、初めておじいさんの細い二の腕に触れてみた。

「あーあーうーうー」

腰を振りながら前足を掛けた2匹の頭をポンポンと軽く撫でるTさん。緩んだ口元からは一筋の涎が落ちたが、その笑顔は無邪気な子供のようだった。その後、若い女性が走り出て来て、引っ張られるように家の中へと消えていったTさん。無理に身体を捩り、振り返るTさんを眺めていると、ただ訳もなく涙が溢れてきそうになった。私とこの2匹ぢゃ、元気になる力にはなれませんか?

おじいさんのこと、アンちゃんだけぢゃなく、我が家の2匹も大好きだよ。そして私も。

家の中にTさんが入った後、庭の片隅にいたアンが悲しそうな声で吠えた。

9月4日

「さて、HPの更新でもやるか」とPCの電源を入れようとすると、昨日のTおぢいさんのコトを思い出してしまい、悶々とした1日を送ってました。いや、実際には昨晩からずーっとですよ。それは多分、離れて暮らすわたくしの父親が5月に同じ脳梗塞で倒れ、失語症という後遺症と戦っているから。会えない父親をおじいさんに投影しているのかもしれません。トシは全然離れてるんだけど・・・。

おじいさん、今ごろどうしてるんだろー、から始まって、家族はわかっちゃいないよ、じぃちゃんのコトと溜息をつき、挙句の果てには愛犬の飼育を途中放棄した息子に対して中指立てて怒ってみたりして。こーゆーのを軽い鬱状態とゆーんでしょうか。

それにしても、嘗て、これほどまで肉親以外の異性に気に掛けたことないですよ、マジ。コレッテ、コ、コ、コイ?

この恋泥棒め〜(違。

今日も夕方、T家の前を通ってみました。

この気持ちが届いたんでしょうか・・・運良く、庭先でアンの食器を洗っているおじいさんに会うことができました。昨日無理矢理家の中に引っ張っていった若い女性も見当たりません。

わたくしよりも先におじいさんの存在に気づき、走り寄っていった我が家の2匹。今回はおじいさんもそれに気づいてくれました。

「あーあーうーあーあー」

よく来たね、きっとそう言ってたんだと思う。塀の柵の間に突っ込んだそれぞれの頭を、いつものように撫でてくれました。

「久しぶりに晴れましたね〜。暑いくらいですけど」

「あーうー」

「アンの散歩、もぅ終わったんですか?」

「あーうーうーあーあー」

いっぱい、いっぱいお話しました(実際には、わたくし一人が一方的に喋っているように見えたでしょうが・・・)。

でもね、おじいさんが何を喋っているのか分かるんですよ、不思議と。2匹の頭を触って笑顔になってくれるといいな〜、少しでも元気になってくれるといいのに・・・なんて思っていたけど、実はわたくしの方がパワーを与えてもらったみたい。

自宅に戻ると、今度は軽い躁状態です。いやはや。

9月5日

「友達の愛犬が手術を受けるんだけど、成功を祈願するにはどの神社にいったらよいでしょう」

今朝、買い物に出かける途中だという近所のおばさんに、立ち話ついでに尋ねると「確か、薬莱温泉に行ったとき、あそこの神社は病難退散のご祈祷してくれるって地元の人が言ってたけど」と教えてくれた。

あぁ、そこなら知ってる。いや、神社ぢゃなくて温泉の方だけど・・・。きっと神社は温泉の近くにあるんだよネ!

早速、我が家の2匹を車に乗せ、薬莱温泉を目指して走る。自衛隊の演習場があるお陰で宮城県一裕福だとゆー大衡村を抜け、住人の8割が河童とゆー(嘘)河童の故郷色麻町へ突入。

「おっしゃ、目的地はすぐそこだぁー!」

薬莱温泉までもぅ目と鼻の先というとき、河童の子供たち(違)が大勢集まる小学校の前に車を停め、ナビで薬莱神社を検索してみることに。

「・・・」。

ない。ひぃ〜、こんなことなら、自宅を出る前に住所を調べておくんだったよ。うーむうーむ。ナビの地図を右に移動したり左に動かしたりして神社を探していると、突然尿意が。「しっこしたい」と思えば思う程強くなっていくんですね、尿意って。

車を発進させ、しばらく前進したところにあったコンビニに走り込む。脂汗出てるやん・・・。腰、クネッてるやん・・・。早く出さなきゃ身体に悪いヨ。そう、トイレに直行すればいいのに、何故か意思とは裏腹に入り口付近にある宮城県の道路マップを手に取ってしまったわたくし。いや、買わないよ、高いしね。立ち読みで薬莱神社の場所を確認しようかしら、あぁ、店員さんがこっち見てる・・・。本屋ぢゃないしね、地図の立ち読みなんてやっちゃいけない行為?そうよね、そうよ、ダメよダメ。

3分の無駄な一人芝居を演じて、膀胱の限界を感じやっとトイレへ。

その後、店員さんに少量の賄賂(缶茶代)で聞き出したところ、「そんな場所へわざわざ行くのか」とゆー顔をしながらもレシートの裏に地図を描いてくれました。

「手前の道を左に進んで・・・えっと、道なりね。一本道だから・・・で、10分くらい進んだら薬莱山の登り口があるからそこを左に曲がって・・・こうね、こっち・・・、2本目だったかなぁ、そこを左に曲がって・・・しばらく進むとうーんと、右だったかなぁ、左だったかなぁ・・・この辺・・・アラ?」

えっと、レシート上では今いるコンビニが薬莱神社っつーことになってました。ご丁寧にありがとう。

コンビニのおねいさんのお陰で、目的地の看板を無事発見しました。

「やった!ココを入っていけば神社なんだな」

細い舗装されていないぬかるんだ道。神社の前に広がる車2台分の空き地がどうも駐車場のようです。

「おっし、祈祷だ祈祷!」

2匹を車から降ろし、右手に財布が入ったうんこバック(金も糞も一緒くた)、左手に2匹のリードとデジカメを持ち鳥居をくぐる。御手洗で両手を洗った後、拝殿を覗き込む。

ええと、誰もいません。

御神籤やかぶら矢を売ってるらしき建物に近づく。

うーむ、ここにも誰もいません。つか、商品の上には白い布が掛けられてました。

「頼も〜う!」

・・・シ〜ン。

仕方なく、祈祷してもらうのを諦め、拝殿に戻り鈴をジャラジャラ鳴らしたら、我流神頼み作戦開始です。

「手術が成功しますよーに。あと、Tじぃちゃんが元気になりますよーに、それからそれから、あちしの親父の失語症、完璧に治りますよーに」

1願いにつき二礼二拍手一礼。つーわけでこれを3セット。ついでに賽銭は奮発して500円のお支払い(ジャリ銭が500円玉1枚こっきりだった)。

3つのお願いを500円だなんて、図々しすぎるっつーことだったんでしょうか。いや、3つのお願いなのに、500円だと3で割れないぢゃん!ってことだったんですか?

戻ろうと振り返った瞬間、遠心力に耐えられなかったアイツが弧を描いて飛んでいきました。足(ストラップ)だけを残して・・・。あ、アイツってデジ・亀男のコト。砂利の上に落ちた亀男は、内臓破裂とゆー無残な姿でした。電池2本とメモリーカードがぶっ飛んでたし・・・。命がけの脱走っつーことですか? チクショー!コイツは、今までわたくしがどんなに美しく写真を撮っても、いざPCに落とす段になると、必ず全てをヘボ画像にするとゆー数々の意地悪をしてきたやつです・・・なんとゆー根性悪。わたくしのことが是ほどまでに嫌いだったとは・・・。

いや、もしかして500円賽銭の罰?

その後、近くの公園で2匹を遊ばせようと諏訪公園へと向かう。30分ほど走って気づいたんですが・・・。

わたくしの車の後ろを走っている車がね、神社前の砂利道を抜け、舗装された道路に出た辺りで後ろにくっ付いてきた車と同じなんですよ。信号待ちで接近してきたところをバックミラーで覗く。スーツを着たおやじでした。あっ!目が合いました。こっち見てニヤニヤしてるよ・・・ヒョエ〜! 交差点を曲がってもまだ後ろにピッタリくっついてる。あぁ、また信号。接近してくる〜。チラリ。またニヤけてるよ、おやじ。もしかして後をつけられてる? 

「ボス、俺たち尾行されてるみたいっす」

「ヤクの受け渡し場所に辿り着くまでに、巻けるか?

「やってみるっす」

古川インターで高速に乗るフリをしてウィンカーをつけて車線を変更する。後ろのおやじもチカチカ点灯させて後をついてきます。

「やっぱ、間違いないっすね。サツはピッタリ後をつけてくるっす」

はっ! 何時からわたくしが悪者に?

ええと、寸でのところで一般道に戻るとゆー、大変危険な行為を冒し(真似しちゃ駄目よ)なんとか巻いた(つもり)んですが・・・。いやぁ、めっちゃ怖かったですよ。おやぢのニヤけた目が特に。

ったく、散々な日でした。厄日だったんでしょうか・・・。

えっと、これももしかしてケチった500円賽銭の罰?

足りなかった分の厄をわたくしが被ったっつーことですか。そうか、そうだね、きっとそう。

つわけで、大丈夫だね、3つの願いは叶えられる。

9月6日

昨日、ご近所の奥さんに「気に入らないかもしれないけど、たまたま目にしちゃったから・・・コレ、お土産〜」と頂き物をしました。デパートの包装紙に奇麗にラッピングされた四角い箱。その場で開けてみろというので、ベリベリと破り、ダンボールの蓋を開けて中身を取り出すとNARUMIのマグカップが入ってました。

「うわー、可愛いボステリの仔犬!」

緑色のカップの側面に、ボストンテリアの仔犬の顔が印刷された物でした。

「違うわよーっ! フレブルだってば。ビっちゃん(BJのコトを奥さんはこう呼びます)に似てるもん。絶対フレブルだって」

あぁ、そうですね、フレブルですね、嬉しいです有難う、本当に有難う。どうしてそう言えなかったかなぁ〜。

「違うよ。ほら、耳の先っちょ、尖ってるし。カラーだってコレ、ボステリ」

こういってしまったわたくし。それでもフレブルだと言って譲らない奥さん。

「だって、商品説明のプレートにもフレンチブルドッグってちゃんと書いてあったもん」

あぁ、そうですね、ぢゃぁフレブルに間違いないですね、わたくしの勘違いでした、いや有難う、本当に有難う。嬉しいです。あぁ、どうしてココでそう言えなかったかなぁ〜。

「お店の人も区別がつかなくって、ボステリをフレブルだって書いたり、その逆だったりってこと、よくあるんですよねワハハ」

違うもん、フレブルだもん。違うもん、ボステリだもん。お互いが意地の張り合いです。可愛いし、嬉しいし、どっちだろうが構わないのに、わたくしも大人気ない・・・。

「んもぅー!いいもんいいもんっ。アタシ、傷ついたぁーっ!」

奥さんはクルリと背を向けて、鼓笛隊の小太鼓奏者のように両拳を動かしながら「傷ついた、傷ついたんだからね〜!」といい3軒隣の自宅へ戻っていきます。

「あー!待ってぇ〜!嬉しかったよー!ホントだってー!すっごく嬉しいですよーぅ!有難う!有難う!有難うねー、ボステリのカップ!」

ホンット、クソ女です。

9月8日

友達の愛犬の手術が無事終わり、その報告を気にしていたEさんやMさんにメールを送る。「長丁場だったけど、無事に終わったみたいだよ」。そのメールを送った後にEさんから届いたのは「手術はどうだったんだろう、連絡ありましたか?」というもの。

あり?

今朝、Eさんから再度メールが届き、そこには昨日わたくしが送った報告メールが夜中の1時半に届いたと書かれていました。送信して相手が受信するまで、その間、5時間近く。

そういえば、以前旅行中、犬の世話をわたくしに頼んだSさんが、出発日空港から「今から旅立ちます」というメールを寄越し、旅行後再び空港から「無事に帰ってきました。色々とありがとう」というメールを送信したことがありました。

Sさんがほどよく日焼けをして我が家にお土産を届けてくれた際、本人の口から聞かされるまで気づかなかったのですが・・・。

「メール、読んでくれた?」

気づかなかったのは、送られてきていなかったからでした。

「え? 知らない〜っ。見てないっすよ。つか、届いてないと思うけど。アドレス、間違っちゃったんぢゃないっすか?」

そんなことはない、しかも空港から2回も送ったんだから、と言い張ります。えっと、ボステリをフレブルだと言い張った挙句、あたしゃたいそう傷ついたと憤慨した彼女です。土産を貰っておきながら、ボケで送った気になっただけかもしれないっすねフヘヘなどと軽いジャブを浴びせ、このときもSさんを鼓笛隊の小太鼓奏者にしてしまったんですが・・・。

その翌日、Sさんからメールが届きました。

「今から旅立ちます」

ギャー!思った以上に心の傷は深かったのか?その傷の痛みに耐え切れず、投身自殺とか?どうしよう、ひょえ〜。

焦っていると数分後にメールの着信音。

「無事に帰ってきました。色々とありがとう」

この時、やっとこの2通が旅行中にSさんが送ったというやつなんだなと納得したわけです。

携帯メールの遅延の原因は、大量に送信されるスパムメールが原因で、各移動体通信事業者のメールサーバに負荷がかかるからといいますが、「旅立ちます」メールが届くまで1週間ですよ。郵便配達員よりも時間、掛かりすぎです。

手術の報告をヤキモキしながら待っていたEさんのストレスと、Sさんとの間に暫し流れた不穏な空気(そうでもない)、この責任は一体誰に? 前者は「直接電話すりゃよかったぢゃん」、後者は「アンタの口が原因なんぢゃ」・・・そうですか、そうですね、はい、ごめんなさい。

9月9日

除虫効果があるからと数年前に植えたハーブのルー。ヘンルーダとゆーのが本名らしいミカン科の植物です。ワサワサと零れ種で増えるので、植えたことを後悔しつつ蕾をつけるとギロチンの刑に処していたのですが・・・。今年も生き残ったルーの子孫は体長80センチ程に成長しました。

除虫効果があるくせに、よく見るとアゲハチョウの幼虫が所狭しとしがみ付いてます。その数、30匹以上。我が家の庭はビオトープを目指しているわけで・・・ほら、人間が手を加えず、生き物がありのままに生息活動する場所とゆーやつ。草むしりしたくないときや、蜘蛛の巣払いしたくない時だけ、そう呼んでるんだけど。

そんな与太話は兎も角、知ってました?

アゲハチョウって、1年に4回も卵を産みやがるって。

知ってました?

春先に育つやつより、夏に育つアゲハチョウの方がデカいって。

知ってました?

緑色をした幼虫ですが、もっとちっこい頃は真っ黒いただの毛虫で、そのうち胴体中央部に太い白いラインが入り体中疣だらけの鳥糞のようなキショいヤツになって、下の写真のような幼虫期を経てベテランの域に達すると角が生えてくるって。

いつ蛹になるのか楽しみで、毎日ボケ〜っと眺めるのが日課になってます。

上体を反ったまま寝ている姿なんて、背筋を鍛えるアスリートのようで敬服もんですよ。

なんかね、可愛いんですよ。足が・・・。

身体をひっくり返して、気づきました。奴らの足は、妊娠した雌犬のオッパイに激似なんです。摘んでも母乳は出てきませんでしたが(当たり前)、その代わり頭から黄色く臭い角をヌルリと突き出しました。まるで、BJの紅ちんこみたい。

入居率アップアップ状態のこのアゲハアパートに、今朝、新たな入居者を発見しました。茶色いナメクジ2名です。新参者だから枯れた枝が奴らナメクジ夫婦(何時夫婦に?)の住処なのか、奴らがいるから枝が枯れたのか。

ええと、ビオトープ推奨委員のようなコトを申しましたが・・・。

今日は雨降りだった昨日とは違い、ピーカンになりそう。直射日光を浴びて干からびていくナメクジ夫婦を想像し「バカモノたちめ〜フヘヘ」と喜ぶわたくしは、委員失格ですか。

9月10日

5歳年下のKさんが目出度く第2子を宿したという。そりゃおめでとう。そう言うと自分の平らな下っ腹を両手で摩りながら「いやぁ、そのつもりぢゃなかったから参っちゃってさー」と唇を突き出した。

小学1年生になったたっくんも、これで念願の兄弟ができたっつーことぢゃないの。随分前、弟が欲しいって言ってたよ?

「そう。欲しい欲しいって言ってた。だからさー、兄弟が出来たら、ファミコンソフトだって今みたいに買ってあげられなくなるんだよ、おやつだって半分なんだよーって言い聞かせてきたんだよね」

Kさんはたっくんが生まれる前にも数回流産の経験があり、彼を出産するときもかなり危険な目にあったため、子供はたっくん一人だけ、そう考えていたんだとか。

「でも、喜んだでしょー、たっくん」

3人兄弟の長女として育ったわたくしが、嘗て2人の愚弟がこの世から消え、欲しいものは何でも与えてもらえるお姫様のような一人っ子生活を夢見ていたんダ、なんてことは忘れたように「兄弟ブラボー!」「兄弟マンセー!」と連呼する。

「それがさー、一人っ子の方が良かったのに・・・とか拗ねちゃったんだよね」

妹や弟より、ファミコンソフト。Kさんの今までの刷り込みが、かなりの威力を発揮してるようだ。

「もぅさー、どうしたもんだか・・・困った困った。お金もかかるしさー」

産もうか堕ろそうかの相談には乗れないけれど、産むと決めたその先にある課題をこなしていくのに頭を悩ませているのなら力にはなれそうだ。といっても、出産も育児も未経験なので、たいしたことはできないけれど。

「ホント? 来年の3月30日が予定日なんだけど、この辺、皆小学生ばっかでしょ。同級生がいないんだよね。今なら間に合うからさ」

「・・・?」

「りえぴも産んで!」

相手を選んで言え。つか、もぅ9月だぞ。今即効で仕込んだとしても、キミの腹の子の同級生なんか産めるかーっ!

9月11日 その1

「あ、姉貴? もぅさー、名古屋に仕事で行っとったんやけど、大変なメにあって、ねみーし、きちぃーっちゃ。昨日帰れるはずやったのに、今、まだ京都のSAばい。え? どんな仕事かっち? 俺の仕事、知っとろーもん。そうそう、取り立てよ。おばはんが名古屋に住む息子んとこに逃げとってからさぁ。昨日、引っ張って帰ってきよったんやけど、広島ついたところで警察から連絡入ったんよ。

息子が『おかんが拉致監禁されたー!』とか勝手に話変えて警察に連絡しくさっとったっちゃ。んなもんで、おばはん連れて、また名古屋まで逆戻りよ。

いや、おばはんと息子ともちゃんと話をして、ほいぢゃ連れて帰ってくださいとか言うとったんばい、おばはんが。なーんが拉致監禁ねっちゃ。

取り調べ受けて、容疑が晴れるまで何時間もかかるし、今やっと北九州に帰る途中よ。おばはん? どげすんね、っち聞いたら息子んとこに残るっちゅーけね、たまらんばい。

返済? もぅ知らんが。今日のところは、なーも手出しができんけねぇ。

名古屋っち聞いたけ、兄貴んとこにでも泊めてもらおーかと思ったけど、そんな暇もあらせん。え? どこに泊まったんかっち? SAよ、サービスエリア! 風呂にも入ってないし。自慢やないけど、無茶苦茶くせーばい、俺。

あ、今、飯が出来たみたいやけ、ほなね・・・ガチャ、ツーツーツー」

いやぁ、バカ笑いし続けてメンゴメンゴ。手ぶらで社に戻って平気ですか? ホンット、サラリーマンって、大変ですね・・・。

9月11日 その2

老いるというのは、頭の片隅に立てかけた辞書の厚みがどんどん薄くなっていくとゆーことなんでしょうか。

老いるというのは、言葉とゆー宝物が入った引出しの、その引出しそのものの数が減っていくとゆーことなんでしょうか。それとも引出しを引き寄せる力がなくなることなんでしょうか。

年寄りの冷や水とは、その引き寄せる力のなさにもがき苦しむ姿のことなんでしょうか。

友人は、今まで旦那の義母さん@まさ義母に、何を言われても『ウヒャ〜、そうですか、アタシってダメ嫁ですね、カカカ』と笑って受け流すことができたのに、ここのところマジでキレて反抗的になってしまうんだと嘆き、少々鬱状態のようでした。

「病院から帰って、家の中がうだるように暑かったから『クーラーつけましょうよ』っていったら、『クーラーはお客さんの為に買ったんだから、アンタといるときは扇風機でいいの!』とか可愛くないコトいうしね。饅頭のコトで前回すったもんだあって、『賢い貴方の仰る通りにすることにしたわ』なんて毒吐いておきながら、ヘルパーさんが先月から新しい人に代わったんだけど、その初日に目が見えないなんて言っときながら近所の和菓子屋に饅頭買いに行ってんだよ。なんだ、見えるんぢゃん!でしょ。そういうと、いきなり盲目老人のフリするんだから。『目が悪いから買い物にも行けやしない』って愚痴るしね。しょうがないから洋服を買いにいくのに付き合ったら、つい先日マサちゃんに『この服、気に入らないのよね』って言ってんのよー。自分で選んで買ったくせに。お義母さん、それ自分で選んだんぢゃないですかって口にしたら何て言ったと思う?『そりゃ、アンタがいたからよ。アンタがいたからゆっくり選べなかったの。本当はこんなの欲しくなかった』なんて言うのよ、キェーィ!」

友人は喋れば喋るほど顔面が赤く色づいていきます。

「義母さんが白内障の手術をすることになったのよ」

その手術を受けても、視力が完全に回復するわけではなく、現状よりも視界が少しばかり明るくなるだけなんだそうですが。

手術を受ける為に、何度も通院しなくてはなりません。

その都度、友人は義母さんを自宅まで迎えに行き、一緒に病院へと付き添っているそうです。

「たまりに溜まってたモノが一気に噴出しちゃったよ」

昨日、我が家の玄関前で喋る友人の顔に、不敵な笑みが零れました。

「病院に連れていく最中、車内で、義母さんが口にした言葉に、思わず突っ込んぢゃったのよ!」と歯を見せ、拳を振りながら喚きます。え? 今までだって普通の嫁にしてはかなり突っ込んでる方だと思うけど、そんなの比にならないくらい相手にダメージを与えちゃったの?んぎゃっつ、そうなの? 聞きたいよ。

助手席でお義母さんが呟いた言葉を、聞き逃さなかったと自慢気に語る友人。

「あたしゃ、マサタカ(息子)より・・・先に・・・死ねないわ・・・」

「えっ!? 死ねないわ、ぢゃないでしょ! マサタカより先に死ぬんだから、でしょっ! 先に死ぬのっ! 死ぬ!ってのが正しい日本語なのっ! 先に死んでよっ! マサちゃんより長生きするつもりなの? 違うでしょーっ!」

友人だってわかっちゃいるんです。

老いで単語をどう繋げたらいいかわからなくなるって。いや、適切な単語がどの引出しにあったのかすらわからなくなるって。老いで、その引出しを瞬時に引き出すことさえもできないんだって。思うように体が動かない上に視力まで衰え不自由をしているから、その不満をつい一番身近にいる嫁にぶつけてしまうんだということを。

「言い過ぎたって、思ったでしょ?」

帽子や上着を脱ぎすてて思いの丈をぶちまける。そのときの帽子や上着って、建前や体裁、ちょっとした思いやりとかなのかもしれないね。その時は、勢いでいつもより脱ぎすぎちゃっただけなんだよね・・・。

「うんにゃ。すんげー、すっきりしたよガハハ。ざまーみろっ!」

3日後のお義母さんの通院日。そういいつつも、彼女はまた付き添うんだという。うーむ、嫁姑の関係って複雑。

9月12日

数ヶ月前、散歩で通る家の庭でチョコチョコと走り回る柴犬の仔犬を見かけた。我が家の2匹を見つけると塀の傍までやってきて、「遊ぼう」というようにお尻を突き上げ尻尾をブンブン振る。その仔犬が飛び跳ねる度に庭の土が舞い、2匹の顔にかかる。だから名前を知らないその犬を、わたくしは「砂かけお柴」と名づけた。砂かけお柴は、何時の間にか我が家の愛犬よりも大きくなり、その成長に合わせて撒き散らす庭土の量まで増えていった。

何時ものようにフェンス越しのご対面ショーを愉しんでいると、その家の娘らしきジャージ姿の中学生が門扉を開けて中へ入っていこうとする。

門扉が開いた瞬間、砂かけお柴は彼女の足元からスルリと表へ抜け出てしまった。

「コラッ、ダッシュ!ダッシュってばー!」

砂かけお柴が飼い主につけられた名前はダッシュだったようだ。わたくしの周りを愛犬のBJと一緒になってグルグル回るダッシュ。彼女が首輪を掴もうとするとヒョイとかわし、数メートル跳んで離れる。

「名前の通りだね。ダッシュ、猛ダッシュ・・・フヘヘ」

飛び出てきた瞬間ドキリとはしたものの、喧嘩をする様子はないので、こんなさぶいおやぢギャグまで出るわたくし。

「いや、それよりも、ダッシュって、ダッシュ村のダッシュからとってつけたの?」

「そうです。TOKIOのファンだから、あ、ダッシュー、こっちにおいでってばぁ」

戻ってきたダッシュは、再びわたくしの周りをグルグル。

「TOKIOの誰よ、誰のファンなの?」

「山口クン」

「えーっつ! それダメっ! それ、アタシがもらったっ。リーダーならあげるっ」

「ヤダーッ! グッサン!」

ダッシュ、グルグル。BJもグルグル。BJのリードがわたくしの足に絡まり、だんだん身動きできなくなる。

「アチシの方がトシ、近いんだからっ!」

「1月10日だよ」

ダッシュ、グルグル。BJ、グルグル。犬も人も大興奮。

「ナニガーッ!」

「誕生日。知らなかったくせにぃー」

彼女の出すTOKIOカルトクイズの回答がことごとくわからないわたくし。いや、別に死ぬほど好きとか、そゆんぢゃないけど、負けるのは悔しい。例え相手が中学生だろうが。ソーラーカーが宮城県通ったとき、顔なんかも見ちゃったもんねー、友達が(自慢にならず)。んぢゃあれだ、女としてどっちが魅力あるかだ・・・、いや、魅力はとりあえず置いといて(早くも敗北を認める)、寝技の勝負とかどーよ。これなら、アチシの勝ち(最低)。

つか、どっちも彼の方が相手になんかしてねっつの、この腐れ女。

「あぁぁーっ!ダッシュー!」

ダッシュ、猛ダッシュ。後を追うBJ。

「こらーっ!そっちは車が通るから危ないっつのーっ!砂かけおし・・・ハッ!ダッシューッ!ウギャッ!」

おばちゃん、絡まったリードに一本取られ、久しぶりに通りの真中で転倒。まいったーっ!そんなわけで(どんなわけが?)棟田康幸、井上康生、阿武教子の3選手・・・金メダルおめでとう。昨日は、いろいろと白熱した一日でしたよハァハァ。

9月16日

3連休、漫画もアップせずに何してたかっつーと、遊び呆けてましたごめんなさい。久しぶりにPC立ち上げたら、メーラーがぶっ壊れそうな勢いです。阪神優勝とかゆーメールなんか、いちいちよこさなくていいですから>該当者

先週の金曜日、定禅寺ジャズヘスチバルの前夜祭で久しぶりに生で板橋文夫(オフィシャルサイトはコチラ)のピアノを聴きました。OLになりたての頃、会社帰りに寄っていたジャズ喫茶であったライブを聴きそのパワフルで厚みのある音に惚れ、その後上京すると新宿のピットインやら横浜のエアジンやら、彼の演奏する場所に毎日のように押しかけ、俗に言う「おっかけ」みたいなコトをやってたんだけど。アイドー歌手ぢゃなく、おっさんをおっかけるって、どよ。イケてますかねハァハァ。

板橋オーケストラのチケットは、発売日を随分と過ぎて買い求めたんですが・・・。売り場のおねいさんに「アンダーラインの引いてある部分が、当店で販売している席です。お好きなところをどうぞ」といわれ、手渡された席表を覗き込むと予約済みをあらわす「×」印が一つもつけられてませんでした。要するに、わたくしたち高橋夫婦がこの店で最初に板橋文夫のライブチケットを買い求めた客だったわけです。

まぁ、ちょうどピアノの真ん前になりそうな最前列を予約できたんでよかったんですけど・・・。果たして席は埋まるんだろうかっつーいらぬ心配をしましたが、それなりの客入りで人事ながらおばちゃん安心しましたヨ。

会場となった「Zepp仙台」の最前列。チケット代もそれなりにいい値段だし、充分愉しんでやるぞー!音楽を・・・。

そう思いましたが、今回わたくしのハートを鷲づかみしたのは2人の関係ない若者でした。

前座で出てきた、仙台で活動しているとゆーなんちゃらバンド(名前失念)のトロンボーン奏者。

そして板橋オーケストラに、後半飛び入り参加した赤い帽子を被った青年(Zepp仙台のスタッフ?)。

パチパチバチバチ。あぁ恋の炎。3メートルのこの貴方との距離が切ないわ。許されるのなら、今すぐにでも走り寄って、貴方を・・・押したい。

何度も目が合って、その度に数秒間見つめあいました。でも、わたくしの両目から出ていたのはラブラブ光線ぢゃないんです。ごめんなさい。貴方の、眉間に張り付いているそのデカい黒子が気になってしかたがなかったからです。「押してみてぇー!あの黒子っ」。貴方の吹くトロンボーンのリズムに合わせて、ソレ、右とか左にちょっと移動しているみたいでしたよ・・・。

そして、小脇にトーキングドラムを挟み、腰をクネクネと振っている小太りで熊みたいなスタッフの横で、クイーカみたいなやつを首からぶら下げ、楽しそうに叩いている赤帽子のキミ。首で4拍子を刻みながら右手に力を入れドン、ドンと叩くキミ。ちょっと慣れてくると連打なんかしちゃって思い切りリズム外してたキミ。外れてたことにやっと気づいて頭を傾げると、鳩が豆鉄砲食ったような顔をして辺りを見回してたキミ。えへ、バレてないや、とか安心してニヤけたキミ。観客にはバレバレだったことに気づいてなかったキミ。最初から最後までずーっと口が開きっぱなしだったキミ。キミを見ている間、わたくしも口緩みっぱなしでしたよ。

つか、音楽聴きに行って黒子クンと赤帽クンだけを脳裏に刻んで帰ってきたわたくしって・・・。

9月17日 その1

土曜日は、かっちゃん@旦那の会社の友人が江戸からと地元からと、合わせて6名やってきました。「秋刀魚30尾持ってくるっつーから、駐車場でBBQでもすっか」とゆー話だったので、それならば、犬友達夫婦も呼んでいっそのこと盛大にやっちまおう。

そうは思ったものの、大人10人。いったい、どのくらいの食材が必要なのかさっぱりわからない。

大鍋一杯の豚汁。5合炊きの炊飯器で目一杯米を炊き、生協で購入した鮭と鱈子で握り飯を建造。

「ちょっと遅れそう」

牛タン運搬担当の犬友達から連絡があり、彼女らが到着するまでにこの握り飯の山は全て会社の友人たちの腹の中に収まってしまいました。

凄いですね、20代前半の男子の胃袋って。両手を使って流れ作業的に口に運び、モグモグと始終口を動かす。次から次へと皿が空っぽになり、それを見ているだけでゲップ出そうでしたよ。大食い選手権にでも出られそうな彼は、かといって太っているわけでもない。ありゃ、きっと腹にサナダムシ3匹くらい飼ってるね、うん。食事の姿が何かに似てると思ったら、高崎山の猿でした。けど、猿と違うのは、10回噛んだら「うまい!」と合の手を入れること。うーん、おばちゃん泣かせの可愛いヤツめ。

彼らが冷蔵庫の中のものをあらかた胃袋に詰め込んで帰った日曜日の午後、余った鮭の切り身を焼いて貧相な食事を採る高橋夫婦。

「なんぢゃコリャ」

塩鮭だと思っていたソレは、塩気なんて全くない生鮭でした。

「コレで握り飯作ったんだよな」

「不味かったハズだよね」

「俺、食ってねー」

「おでも」

「うまいとか言いながら食ってたよな、アイツら」

そう。10回噛む度に「うまい!」と言い放ってたアイツ。単なる味覚障害の欠食児童だったんでしょうか・・・。わたくしを誉め殺す気だったんでしょうか。何が目的で? この身体?

「うまい!」と言われ「あぁ、わたくしってデキる主婦!ウホウホ」なんて調子コイてた自分に溜息がでますよア〜ァ。今度来たら、塩と砂糖をわざと間違えて味付けしたヤツを食わせてみようそうしよう。

9月17日 その2

来客が退散した後、慌しく部屋を片付け、シャワーを浴びて、夕方出かけていったのがまたもや板橋文夫のライブ。かっちゃん@旦那の実家がある金成町の隣、若柳町の「JAKI」とゆーライブハウスで午後7時から始まるっつんで「ほな、行ってみるか」となったわけで。かっちゃんの実家なんて、お隣さんといっても随分離れてるし、煙草を買いに行く場合も車を出さなきゃいけないし、一昔前まで数キロ離れた場所にあったコンビニが「本州最北端のコンビニ」とかいわれてたし、要するに田圃ばかりのすげー田舎なわけで。7時開演とチラシには記載されてるくせに、6時半ちょいすぎにJAKIを訪れると、オーナーらしきおっさんに「7時からだから」と入場を断わられ、だったら近所の店で時間を潰そうかと思っても、そこは金成町の隣、若柳町。田舎臭満載で、入れるような店といったら隣の寂れた中華料理屋と道路を挟んで向かいにあるこれまた客が入ってなさそうな居酒屋の2店だけ。喫茶店っつーものがない。ホワィ!30分程度しか余裕がないこともあって隣の中華料理屋に入ったら、かに玉1100円、かにうまに1100円とゆーメニゥの下にもやしうまに1100円ですと。蟹ともやしが同じ値段の料理なわけですよ奥さん。普段スゥパで一袋37円とかで売ってるもやし。そいつをどう調理したら蟹と同じような値段になるとゆーんでしょうか。いや待て、もしかすると未だわたくしがお目にかかったことのない幻のもやしなんつーのがあって、その高級もやしを利用した料理なんですかね。えっと、もやしうまにに1100円支払う勇気と財力がなかったため、この店の「もやしうまに」ってのがどんなものなのかは不明です。中途半端なネタでごめんなさい。あぁ、そろそろ始まる頃だと注文した中華そばと中華飯をそれぞれかっ込んでJAKIに行ったら、最前列の席を勧められて、後から入ってくるお客さんが「もっと前へ詰めてくだちぃ」とか言う度に折りたたみ椅子を移動させてたら何時の間にか板橋文夫の膝にわたくしの膝が当たりそうな場所まできていて、演奏中、彼が頭を振るたびに汗やら涎は飛んでくるし、ちょっと腋を上げただけでおやぢ臭が漂ってきて気を失いそうになるし、いやそれはそれでかなりエクスタシーだったんだけど。とか、そーゆー話を詳しく書こうかと思ったけど、やめました(これだけ書いておきながら)。

どうしてかっつーと、昨日から頭の中で流れているのは、板橋文夫が「ブラジルの風をお届けします」とかいいつつブラジルらしいフレーズは途中観客一緒になって叫ぶ「サンパウロ!」っつーとこしかなくて他はモロ演歌ぢゃんプフフ、とゆーわたくし的お気に入りの曲ではなく、作詞・佐藤惣之助、作曲・小関裕而「六甲おろし」だからです。

「六甲颪に颯爽と〜♪蒼天翔かける日輪の〜♪青春の覇気麗しく〜♪輝く我が名ぞ阪神タイガース〜♪」

もぅね、どこいってもコレが流れてるのよー。

ココはとーほぐだっつのに。

しかもね、「チクショー!この渋滞の原因は一体何なのダ?!」とイラつく先に見つけたのは横断歩道の塗りなおし工事でした。しかも目的地まで3キロちょいとゆーのに、その間で2箇所。

白黒白黒・・・の縦縞。

この工事も阪神タイガース優勝と関係あるんでしょうか。

9月18日

Sさんの家の前に軽トラが停まってまいす。腐って穴が開いてしまったデッキの修理を、業者の人に2日間で修理してもらうんだとか。

2日ですか。プロがやっても結構かかるんですね。

いえ、我が家の腐ってベコベコになったデッキは、かっちゃん@旦那が修理をすると言い張ってますが、宣言してからかれこれ数ヶ月が経ってるんですが・・・。年内に完成するんだかどうなんだか。いや、デッキは諦めます。歩くたびに軋み、抜け落ちそうになるのはこの際我慢するんで、階段だけでも早いトコつけてもらえませんかね。貴方の息子さん(BJ)、しっこに出る度に頭からダイブしちゃってますよ。これ以上バカになってもいいんですか?

それに引き換え、ヤツの仕事は迅速です。強風で壊れた家を一夜のうちに建て直し、毎日自分一人で増改築なんかやっちゃってますから。いつ覗きにいってもリホーム計画に汗を流してます。ついつい家の支柱数本をへし折ってしてしまうわたくし。それでも、文句一つ言わず素早く修理に取り掛かります。

「こんな意地の悪い近隣住人のいるトコロなんか、引っ越してやるー!」とは思わないのでしょうか。

なんて心の広いヤツなんだ、おまへ

いや、今までいろいろと意地悪してごめんなさい。「お仕事頑張ってくださいね」と、お詫びの印にコーヒー(飲ませるとおもろい家を作るそうで)でもさしあげましょうか・・・。

9月19日

かっちゃん@旦那の通勤用に履いている黒い靴がアレなんで、「捨てる!」などと貧乏人にあるまじきコトをほざきました。先月、もぅ限界とかいいながら2足も葬ったのに。どこがどう按配悪いのかと調べたら、靴底がザックリ減ってました。でもね、でもね・・・。

わたくしが履いているこのサンダルが目に入らぬか!

靴底のゴム部分。正面側がどちらもペロリと外れて、歩くたびにパカパカ音がして煩いし、そのお陰でケ躓きそうになるんだぞ。地面に顔面強打して鼻骨骨折したり枯れ枝が眼球に突き刺さって失明したり野糞が開いた口に入ったりする可能性だってあったりなかったり。こっちは命がけでこのサンダル履いとんぢゃ。今回は、是が非でも修理に出してもらいますよ。キミの小遣いで。

そんなわけで、修理に一体どのくらいの金がかかるものかといろいろ検索してみました。仙台のとある修理屋。

「オールソール(全底取替え) ¥7,500〜」。

中敷もクッタリきてたから、とっかえるとするとプラス¥1,200〜。

うーむ、買い換えるより数千円安いだけか。いや、それでも安いだけまだマシ。

それにしても金額表示の後ろについた「〜」っつーのが、とても気になります。ついでに不安なのは「コレって、片方だけの料金?もしかして、右左のペアーでお願いすると料金倍バイばいなの?」ってこと。500円均一で購入したわたくしのボロサンダルのカパカパ靴底を修理してもらうとしても、同じ値段を請求されるんでしょうか。納得いかねーっ!でもほら、使えない=捨てちゃえ、ってことになるとエコロヂーに反しますからね。安物サンダルの外れた靴底は接着剤でくっ付け、磨り減った部分は輪ゴムでも貼り付けて・・・。

「今日、帰り遅くなるよ」

「そかそか、ソイツ、修理に持ってくっつことだな。全底取替えだとたけーから、減ったとこだけ継ぎ足してもらえ」

「あーうー、違う」

「・・・?」

「飲み会だから」

なんだとーっ!

9月20日

10月に入ったら、友達と「キャンプをしようネ!」と言っていたので、その下見に出かけました。数年前、2匹を連れて行った七つ森キャンプ場。いや、本当はその先にあるキャンプ場を目指してたんですが・・・。

七つ森キャンプ場の手前で遭ってしまいました。

早くも秋の味覚を探してたんでしょうか。

頭を振りつつも普通に歩いてましたよ、道路を。

前方50メートルを、ノッソノッソと。横断してました・・・熊が。

いやぁ、道路を歩いているナマの熊をこの目で見たのは生まれて初めてだったので、興奮しまくり。高橋夫婦はどちらもテンパってたため、写真を撮る余裕もありませんでしたが・・・改めて「田舎に住んでんだなぁ」と実感です(涙。

七つ森では、多分一生、もぅキャンプしませぬ。

9月22日

「最近、仮面ライダーのベルトとお面をつけた不審な男性が自転車で小学生を追いかけるという報告がありました。・・・(中略)・・・見かけた際は警察か班長さんに連絡をし、気をつけるように注意をしてください」。

先日、このような回覧版が回ってきました。

「新潟・村上の中3女子誘拐で無職近藤順容疑者(26)を未成年者略取誘拐の疑いで逮捕」。犯人は、以前から目をつけていた彼女を「かわいくて仕方がなかった。一緒にいたかった」という理由で、背後からワンボックスカーではね、車に乗せて連れ去り自宅に監禁していたという。

「岐阜市内の無職女性(20)を車に乗せ、逃げると殺すと脅してホテルに監禁した無職、谷口国光容疑者(27)と同市内の無職少年(15)を監禁容疑で現行犯逮捕」。

今月に入り、他にもあの長崎市で起きた誘拐殺人事件、神戸連続児童殺傷事件を起こした各少年に対する精神鑑定が行われ児童自立支援施設へ送られるだろうという「誘拐」に関するニュースが紙面を飾ります。

それだからか、近所の子供を持つ親御さんたちは「不審者」などという言葉に敏感です。

「えー!誰だよ、ソレ。気持ち悪い〜」

仮面男の話を初めて耳にしたとき、わたくしも一緒になってこう言ったのですが・・・。

「その男なら、あの人だよ」

かっちゃん@旦那は、出勤時に何度か彼を見たことがあるといいます。

「ほら、家の前を大声で歌いながら通ってるあの人・・・」

「ちょっと小太りの青年?」

「そう」

あぁ、いつも楽しそうで羨ましいね、って彼を見かけるとかっちゃんと顔を見合わせ話す、あの人でしょ。確か、B町のパン屋さんで見かけたことがある。

そのパン屋さんというのは、知的障害者の雇用を支援しているお店です。

雨の日も雪の日も、自転車で、時には徒歩で、決まった時間に我が家の前の坂を下り、かなりの距離があるそのお店へ向かいます。帰りは上りになる坂も、行きと同じように笑顔で歌いながら上っていきます。

「気持ち悪いっていうけど、ベルトして仮面をつけて自転車漕いでただけだろ?あの人が・・・。小学生が追いかけられたとかゆーバス通り付近だって、きっと彼のことを知ってる人は沢山いるんぢゃないのか? それをいきなり警察に通報しろってなんなんだよ。親たちが子供にキチンと説明すりゃいいだけの話ぢゃんか」

回覧版の内容を話すと、そういってかっちゃん@旦那は仏頂面になりました。

愛犬の散歩時、近所に住む年配の奥さんとこの仮面男の話になったのですが、彼女は「小学生たちが彼に『変身できないくせにー』とか『気持ち悪い』って馬鹿にしたようなこと言ってたことがあるんだよ。そーゆーのが重なってパニック状態になっちゃったんぢゃないかね」、そう言います。もしそういう経緯なら、加害者はむしろ小学生たちなのかもしれません。

「気持ち悪いね」

あのときわたくしたち大人が喋っていた話を、聞くともなしに耳にした子供たち。

無意識のうちに、なんてコトを言ってしまったんだろうと自己嫌悪です。

9月24日

ラーメンセット。この怒涛の炭水化物攻撃に立ち向かう男がいた。戦闘前の興奮からか、右足をせわしく揺すっている。彼が陣取った戦場は、カウンタから一番近い席。セルフサービスのその店に「53番、ラーメンセットのお客様〜!」というアナウンスが流れると、椅子を倒さんばかりの勢いで立ち上がり、カウンタへ向かう。大股で僅か3歩。トレイの上に決められた品が全て乗っているか指差し確認しながら頷くと、顎の高さまで恭しく持ち上げ、汁をこぼさぬよう、摺り足で指定席へ戻る。

「あり? チャーハンもあったはずなのに・・・」

土色に焼けた顔、入れ歯を填め忘れ窪んだ口元、斜め前に席を取ったその男のことが妙に気になり、食事の最中時折観察していたのだが、何時の間にか彼の目の前からチャーハン丼が消えていた。

手にしたレンゲには米粒が山盛り乗っている。

「あぁ、そんなところに置いてたのかぁ」

男は丼を太ももに挟んでいた。

テーブルの上にあるラーメンをゆっくりと啜ったら、テーブルの下にあるチャーハンをレンゲで掬い、急いで口に運ぶ。バラバラ・・・。山のようにレンゲに盛られた米粒の半分以上が男の口に到達する直前に零れ落ち、レンゲが口に押し込まれる際にも残った米粒の半量がバラバラと落ちるが、全くお構いなし。膝の上やテーブルの上に零れた米粒よりも、出口付近や近づいてくる他の客が気になるようでキョロキョロと落ち着かない。

大きく一つ溜息をつくと、レンゲを箸に持ち替え、またラーメンをゆっくり啜る。この繰り返し。

ううむ、怪しい。命を狙われてるとか? ますます目が離せない。

「ねぇ、かっちゃんの後ろにいるおぢさん、なんかおもろいよ」

彼も振り返って、しばし観察。

「あぁ、またおっかーに内緒で食っちゃったよ・・・って感じなんぢゃねのか」

「と、と、糖尿とかで止められるとか?」

「うん。モグモグモグ」

「おっかーに、どっちかにしなさいって言われてんだね。だから、両方食べてっとこを見られると按配悪い。おっかーが柱の陰から見張ってんだろーか」

「・・・」

「あぁ・・・口の横っちょに飯粒くっつけたままキョロキョロしてるよー。それぢゃ、チャーハン食ってないって言い張ってもおっかーにバレるがな・・・」

「・・・」

「めっちゃ零してるけど、全部太ももで挟んでる丼でキャッチしてんのかね・・・」

「・・・」

「まだ飯粒ついたままだよー。あ、掌で隠しながらチャーハン食ってる・・・でも飯粒ついてるの隠れてないってば・・・あ、口元拭った。違う違う、もちょっと下だって。あぁん、おしぃ。え?もぅいいの?付いてるってば、まだ・・・そのまま帰ったらおっかーの雷が落ちるよ。うぐーっ、気になるっ・・・あの飯粒」

「うっさい。いいから黙って食え」

小声で喋っているつもりでも、どうもわたくしの声はデカいらしい。

9月25日 その1

昨日、姪っ子の運転でかっちゃん@旦那の両親(はる子&すんづろさん)がやってきました。なんでも、市内の病院に入院した親戚の見舞いの帰りだとか。お昼頃やってくるとゆーので、肌寒い日にはピッタリの氷満載素麺やら冷奴やらアイスなんぞを用意して、骨の髄まで冷やしてやろうかと思ってましたが(鬼)、病院の食堂で昼飯は食ってきたと言われ、嫁ガッカリ。

それならばと午前中急いで買い込んだ茶菓子をドッチャリ並べると、飯を食ってきたばっかだと言いながら次々胃袋に収めるはる子さん。バキューム力は健在ですブラボー。

さぁ、落ち着いたら団欒開始だヨ!

ええと、まずは見舞いにいったとゆーその親戚の病状でも詳しく語ってもらおうか・・・。

と思ったら、姪っ子は購入したばかりだという(ローンで)デヂカメ風携帯電話を取り出し、我が家の愛犬の写真を撮るとあちこちにメール。着信音がひっきりなしに鳴り、その度に携帯電話を持ち「ココぢゃアンテナが立たない」とブツブツ言いながら部屋中をウロウロ。電波の届きにくい僻地で悪かったなウガーッ。いいさ、年寄りは年寄り同士で語ってやるさ。で、親戚って一体誰よ。って聞いとくか? いや、聞いてもわからないし、聞いたとしても話はそれ以上膨らみそうにはないけど。茶を啜り、切り出そうとすると、はる子さんはスックと立ち上がり玄関の外へ。アリリ・・・。

残されたすんづろさんと二人で語れってか? わかったよ、嫁、頑張ってみるっちゃ。 

「入院した病院って、どこにあんの?」

「×〇※〜∝」

「治りそう?」

「▽§ζ×=」

ええと、すんづろさんの言葉は訛りが強い上に渇舌がよろしくないので、何を喋っているのかわたくしには理解できません。できませんが、デキる嫁は答えます。

「フムフム。あぁ、そう。なるへそね」

まぁ、こんな感じで数十分間会話は激しく弾みました(そうでもない)。

しばらくして部屋に戻ってきたはる子さん。庭の草木に随分と虫がついていたと、嫁の庭仕事の手抜きを指摘。

「あぁ、パセリとかルーでしょ。パセリはあちしと尺取虫、どっちが沢山食べられるかって、しばらく競争してたんだけどね・・・負けたよ。向こうはさ、毎日パセリだけ食べてても飽きないんだから・・・。あ、ルーの方にも芋虫がついてたって? アゲハチョウの幼虫ね。ずーっと観察してんだけど、未だに蛹になったトコ、見てないんだよー」

そこまで喋ると、はる子さんは「シマッタ!」とゆー表情を浮かべました。

「なんだべ? 育ててんのか?」

「いや、別に育ててるっつーわけぢゃなくて、成長を見守ってるっつーかなんつーか」

「アリャリャリャ・・・おれ、さっき、3匹ほど毟り取って足で潰した」

9月25日 その2

「ホレ、近所で大きい犬さ飼ってた家があったべ。あの犬、飼い主を突然噛むようになったんだと」

はる子さんが言っているのは、実家の近所で泥棒避けにと外飼いされていたハスキー犬のこと。年は4歳。我が家の2匹を連れて帰省した際、散歩でその家の前を通ると歯を剥き出しにして吠え続けていた犬だ。

「それまでは、家の前を通る人には、んっと吠えてたけど、噛み付くようなことはなかったらしいんだけどねぇ」

じゃれていたつもりが次第に興奮してきて、自分をコントロールできなくなっただけなのか。それとも怪我をしていたり具合が悪くて、その痛む部分を偶然触られたから反射的に噛み付いてしまったのか。

「さぁ。わがんね。でも家族全員なんだっちゃ、噛まれたのは。ご主人は足をやられて、そこが化膿したとかで病院に随分と通ってたっけか。奥さんは手を噛まれて指が千切れそうになったんだと。大型犬だからって、かなり厳しく躾たのにって語ってたっけよ」

アルファシンドロームなのだろうか。飼い主がリーダー的な行動を示さない場合、犬が自分をリーダーとして位置づけようとするヤツ。

「厳しく躾たって、どうやって?」

「外飼いだったんでしょ、飼い主とのコミュニケーションの時間って1日にどのくらいあったの?」

「ご飯は毎日ちゃんと食べさせてたの?」

「健康管理とかには気をつけてやってたみたい?」

はる子さんに質問しても、「おれんちの犬ぢゃないしなぁ」と要領を得ない。

「噛み付くようになった原因は、一体何なんだろうね」

顔も知らない飼い主が角材を振り下ろすシーンが頭に浮かぶ。いや、まさかそんなことはするまい、と分からないなりに思いを巡らせる。

今度、帰省したら、その犬をしばらく観察してみようか・・・。

「もぅいねぐなったんだー。噛み付くような犬はいらねっつって保健所さ持ってったんだと。処分してくれって」

なんだとーっ!?

噛み付くのは心の病が原因だとしたら、その病を治してやろうとするのが飼い主の責任ぢゃないのか? いや、そもそも噛んだ原因をまず考えるべきなのに。

ペットは家族の一員だぁ? 噛み付くのは飼い主の責任だぁ? 冗談じゃない。番犬の役を果たさなければ犬とはいえない。番犬は残飯で生活するものである。番犬はタダで拾ったり貰ってきたりするものである。番犬は、多少の病気も野生の力で治すものだ。因って、蚊に刺されることで糸状の虫が体内に寄生する病気がフィラリアということなど知らなくてもいいし、犬だけでなく、感染した動物に噛まれれば人間だって命が危ないウィルスの病が狂犬病であり、この予防接種が義務付けられていることなど無視してよろしい。

少なくとも、この飼い主がこういった考え方の持ち主でないことを祈るばかり。

きっと、今ごろ飼育を放棄してしまったことに対して、罪の意識を持っているに違いない・・・。

「新しい番犬にって、今仔犬を探してんだと」

・・・一生、見つかりませんように。

9月26日 その1

午前4時50分。2階の寝室がグラグラと揺れているのに気づいて目が醒める。

「凄い風だね」

なかなか収まらないその揺れは、隣の調整池から吹き上げてくる風によるものとばかり思っていたら・・・。

「地震だ・・・それにしても随分続く・・・ってことはけっこう遠いのかも」

数日前、東海地震と富士山噴火の連動という最悪の事態が起きた場合、どのくらいの被害をもたらすのかという番組をやっていた。もしや、富士山噴火か?

慌てて飛び起き窓の外を眺めると、池の向こうに建っている老人ホームはどの部屋にも明かりが灯っていた。老人たちは天災に関わらず早起きで、午前3時に覗いても電気が点いていたりするんだけど・・・。階下へ駆け下り、TVのスイッチを入れる。

震源地は釧路沖。火災映像が映し出されていた。

「えー、トマコマキシの出光興産北海道製油所原油タンクから火災が発生しました・・・」

隣にいた男性アナウンサに小声で「トマコマイシ」と訂正される女性アナウンサ。

「失礼しました。トマコマイシの製油所原油タンクから火災が発生しました。各地の震度は震度6弱が幕別町、釧路町・・・震度5強が釧路市・・・震度5弱がトマコマキシ・・・」

「トマコマイだって!」

被害の映像も凄かったけど、頑固な女性アナウンサも凄かった。つか、あれは原稿の読み間違いぢゃないね、きっと。

いや、そんなことより大丈夫だろうか・・・道内に住む親戚や友達たちは・・・。

9月26日 その2

親戚が入院したという病院が我が家の近所だというので、はる子さんに「暇なときにでも見舞いにいってやってくれ」と頼まれた。彼は、はる子さんの姉の娘の旦那。病名は膵臓癌。膵頭部の腫瘍が胆管を閉塞しているからか、黄疸も出ているという。

法事で会ったことはあるらしいが、顔も声も覚えちゃいない。

昨日、九州に住む母親との電話で、だから二の足を踏んでいるんだと告げると、「大丈夫よ。顔なんかわからんでも。行ってあげなさい、喜ぶから」と母は言う。

「じーちゃんがまだ生きてる時分に、五島に住むじーちゃんのお兄さんのお見舞いに行った事があるんやけどね。じーちゃんと私と兄さんとで・・・。病院に着いたらTおじさんがいてさ。Tさんって、ほら、私の従兄弟。じーちゃんのお兄さんの息子なんやけど。要するに入院してたじーちゃんの子供よ。そのTさんに病室まで連れて行かれて『おやぢです』って紹介されてねぇ。見舞いにいったじーちゃんと兄さんなんて、手を取って泣き始めたんやけど、アタシはさぁ『あれ〜、叔父さんってこんな顔してたっけ? こんな声だっけ? なんかおかしいなぁ〜』って思っとったんよ。

Tさんはそのとき席を外してたんだけど、しばらくして病室に戻ってきて『ごめんごめん、ちごとった(違ってた)。病室が変わっとったけまちごーた』っち。

涙流しながらじーちゃんや兄さんが心配してたのは、全然知らん人やったわけよ。

じーちゃんの兄さん・・・14人も子供作って、Tさんは一番末っ子やけん父親と接する機会も少なかったっちゃろか。それにしても自分の親を間違うっちゅーのは酷いやろ。

それより驚いたのは、うちのじーちゃんと兄さん。

さっき見知らぬじーちゃんの手を取ってオイオイ泣いとったけど、『こっちが本物やった』っちゅって連れていかれたら、またそこで手を取って泣き始めて。よう同じこと喋って2度も泣けるもんっちゃ。

まぁ、あれよ、年取ると顔形は似てくるしね。

年寄り見舞いにいって間違ったりするのは、よーあること。だけん、大丈夫」

よくあること? ないないっ! かっちゃん@旦那はそう言ってましたが、わたくしは勇気がでたよ。有難うママン。

9月27日

かっちゃん@旦那が車を洗うと、必ず雨が降る・・・。

9月29日

「レーコちゃま、やったわね。ついにこの日が来たのよ。貴方の美貌を下々の者たちに知らしめておあげなさい」

「はーい」

「貴方の美しさを引き立たせるために、メークもきっちりね。そう、ナチュラルがよろしいわ。貴方のこの顔が世に広まったら、言葉遣いも気をつけなきゃいけなくってよ。テヤンデー、だなんてこれからは絶対言っちゃダメ。貴方は今日から下町育ちぢゃなくて、山の手のお嬢様なの。アタクシのコトもかーちゃんぢゃなくて、お母様、そうお呼びなさいな」

「わかったよ、かーちゃん」

「違うでしょ、かーちゃんぢゃなくて・・・」

「はいはい、お母様」

「そう。それでよろしーわ。あ、あと、ハイは一回ね。では、いってらっしゃい・・・」

「なんなのーっ! アタクシのレーコちゃまの顔、どこにやったのよ! くぅーっ、何てことしやがんでぃ・・・ハッ・・・てんざますーっ! 親戚一同にも自慢したってのに、この仕打ちは何なのーっ! アタクシのレーコちゃまの顔の、一体どこが気に入らねぇのかよっ! アタシに似た鷲鼻か? 鱈子唇か? 首、挿げ替えやがって! しかも嫁入り前の娘に、何てーコト言わせてんだぃ!

娘にわざわざ言われなくたって、こちとら分かってるってんだ! あぁ、そーさ、今の旦那にだって昔の男にだって言われたさ。いつだってパンツからはみ出してんだよ。だから何だっつんだ! 悪かったな、太くて縮れてボーボーでっ! テヤンデーッ!」

日清のラーメン屋さんのCMの舞台裏では、こんな悔しい思いをしている母親がいたりして。

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