■ 10月の戯言 ■

10月4日

電化製品が次々と壊れていく奇怪な館、高橋家。

終に、ウォシュレットがイカレポンチになってしまいました。

強弱のツマミを「最弱」にしても、常時最強ジェット噴射で尻の穴を刺激してくれていたのが既に壊れた状態であるとゆーならば、「終にイカレポンチになりました〜」とゆー言葉は間違ってるような気もするんですが。

便座に腰掛け「ケツ」ボタンを押す。さぁ、来い!といつものように括約筋を緩めて口を開けるマイ・コーモン。

それなのに、あぁそれなのに。

痰が絡んで咳き込んでいる年寄りのような豪快な音を立て、息も絶え絶えに出てきたノズルには、いつまでたっても潮吹きタイムがやってこないのです。うんこ、干からびてマイ・コーモンに張り付いちゃうヨ。

こーゆーばやい、瞬時に立ち上がってノズルの状態を観察するのには勇気がいりますね。しかも、パンツ思い切り下ろした状態で。

覗き込んだ瞬間、顔面シャワーなんて御免被りたいし。

座り込んだまま呼吸を整え、再度「ケツ」ボタンを押す。押す、押す、押しまくる。

ンガー、ガガガッ、ンガー、ゴボゴボ。

何度やっても結果は同じ。打ち止めなら、最後に粉くらい噴いてもよさそーなのに(違。

妻の鋭い臀部センサー(皮膚感覚)でゲットした情報によると、どうも出てきたノズルは数秒間、引っ込まずに停止したままの状態のようです。よし、その数秒でノズルチェキラしてやる。

ケツボタン、スイッチオン。

当然、パンツは膝まで下げたまま中腰になり便座に顔を突っ込みます。

オーマイガー。

顎が外れてしまいそうなくらい、ノズル、糞まみれでした。

いやん、もしかして、ノズルの周りにこびり付いた糞の層が引っかかって、あんな音がしてたわけ? ノズルの噴出し口を糞が塞いで水が出てこないわけ?

そうかそうか、うんこ地獄で窒息しそうだったんだな、ノズル君。おばちゃんが、今、助けたる。

シンクの下から強力便所用洗剤を取り出し、糞まみれになったノズル君救出大作戦を決行しようとしました(勿論パンツ下げたまま)。

で、ふと便座の蓋に貼り付けられていた注意事項のシートに目が行く。

「トイレ用洗剤、住宅用洗剤…の使用はプラスチック・金具をいためますのでやめてください」

ギャー!

便座や便蓋を取り外す方法は書かれておるんですが、ノズルはいったいどーすれば?

修理をメーカーさんに頼んだら、ノズル君に付着した糞の犯人が目の前のうら若き妻(違)であることがバレバレぢゃないですか。いや、糞の半分は夫も共犯ですけど。ちょっと恥ずかしい…ポッ。

とりあえず、今日のところは近くのホームセンター(ウォシュレットつき)で尻を洗ってきます。

10月6日

便意をもよおさなくても最強洗浄で毎日いい気持ちになってた、マイ贅沢コーモン(時々、激痛走って空中浮遊することもあったけど)。

ウォシュレットが壊れて以来、自力で白いキャンパスに立体糞アートを描かなきゃいけなくなったわけです(芸術家気取り)。生みの苦しみったらそりゃもぅ…ウガググググ。

と思ったら、あら不思議。

2,3日平気で溜め込む便秘腹の持ち主の癖に、一昨日、昨日、そして今朝と安産ですよ。ステキ。洗えないとゆー不安と緊張感のなせる業?

やっぱ、贅沢は敵ダー!ってコトですかね。

拭き残しあって、パンツにうんこついてるかもしれないですけど、目が悪いのでそんなこたぁ気になりません。タオルも一緒に洗濯機にぶち込んで証拠隠滅です。

ところで、今週末は大滝農村公園キャンプ場に行く予定になってるんですが(天気悪そうだけど)…実はココ、犬連れ禁止の野営場。

「普段は禁止してるんですけど、当日は他に1組しか予約が入ってないので、まぁヨシとします」と役場の方に許可を得ました。が…。

「管理棟の人には犬連れだってこと、内緒にしといてください」ですって。

そ、そ、そんなぁー。

管理棟に車を横付けしてサイト使用料払ってるとき、後部座席にいる2匹をどーやって隠せと(袋詰め?)。

管理人のおいちゃんの目と耳が悪いことを祈るのみです…。

10月7日

抜糸のために、BJを病院へ連れていく。

縫い口を見て、挟みを取り出しチョキチョキと切ったあと、少し舐めたようですねぇ赤くなってるトコロがありますヨ、と言い棚から取り出した塗り薬をペロン。

時間にして僅か5秒。

受付で申し渡された料金は、診察料500円と抜糸代800円。

は、は、は、はっぴゃくえーん!?

僅か5秒で800円とゆーことは、時給に直すと576,000円ぢゃないですかっ!

その後、飼い主の与太話を30分以上も聞かされるという重労働が待ってはいたんですが、それにしても恐ろしく稼ぐゴッドハンドだ。

10月9日

今朝から野営に出発する予定だった高橋家。

台風です。

仙台では今晩あたり、猛威を振るってくれるようで…。

土砂降りくらいナニさ〜行ったるでー!と息巻いていたのですが、ご近所の方々に「アホか、やめとけ」「死ぬ気か貴様ら」と散々言われたので、出発日を一日延ばすことにしました。あぁ、暇。つまんねー。昨日の夜、必死こいて野菜の皮剥いたり肉の下ごしらえしたのに、徒労に終わるっつーことかよー。

普段は干上がっている隣の砂防池が、みるみる水嵩を増していく様子を鼻糞ほぢりつつ眺めていると嬉しいお客様。

大雨の降る中、郵便屋さんが小包を届けてくれました。中に入っていたのはB−Dogさんから届いたサラのネームタグ入りの首輪、リードと糞バックです。鬼に金棒とゆーか、サラにスパイクカラーとゆーか。極悪犬っぷりもこれで益々パワーアップ。近いうちに、その昔背後から近づいてきていきなり尻に噛み付き振り回し、そして投げ飛ばしてくれた近所のハスキー犬に恨みを晴らすことができるかも(せんでええ)。

いつでも出発できるよう、玄関前に散乱した野営グッズが写り込んでいますがそこんところはスルーしてください。

10月14日

色とりどりのパンツで引き出しが埋め尽くされている光景を眺めるのが好き。すごく贅沢な気分に浸れるから。出来ることなら、真新しいショーツを被ってショーツの山にダイビングして、ひとしきり泳いだ後は溺れたいくらい。そんなわけで、密かに買いためたブラ&ショーツセットなるものが軽く200以上はある。といっても、普段使用するのはそのうちの10セットくらい。しかも、乳汁が漏れてるわけでもないし、ブラヂャーなんてたいして汚れてないよな、と2,3日は平気で装着している。いや、下手したら1週間くらいつけっぱなしっつーこともある。

個人的にブラヂャーの消費期限は、ホックが取れて乳バンドとしての役割を果たさなくなったときと、ワイヤーが(あれば)布を突き破って下着というより凶器に変身したときだと思っているのだが、ショーツの場合が難しい。

前述したように、ブラヂャーは毎日とっかえないので、ショーツのみ毎日洗濯。そうなると、必然的にショーツの布の磨耗の方が激しいわけで。かといって、どんなに擦り切れてもショーツが凶器になることはないわけで…。

ゴムが切れたら捨て時だ。

そう思っていたのだが、スカートを全く履かなくなってしまってからは、多少ゴムが緩んでいようが上からジーンズを履けば、こんなボロショーツでも当て布としての役割は十分果たしてくれるのだ。

「いつ何時素敵な人に出会うかもしれないのに…。毎日勝負下着つけろとはいわないまでも、雑巾みたいなパンツぢゃ格好悪いんぢゃないの?」

昨日、友人にこう言われたが、あのねー、別にこのトシになったらさー、胸がキュンとするような出会いなんてないのだよ。胸がキュンとしたときは、そりゃ病気。だからさ、新しい下着なんて旅行のとき以外勿体無くて着てらんねっつのー(履きおろしちゃうと真新しいショーツの山が低くなるし)。

というか、以前から捨てよう捨てなきゃと思っているショーツが2、3枚あるにはあるのだが、残尿やビチ糞やその他もろもろのシミを多量につけたままゴミに出すのは流石の妻も気が引けるわけで。で、それなら洗濯してから捨てようと洗濯機に放り込み、乾きあがった段階で、なんだもぅ1回くらい履けるではないか、とこれを何度も繰り返してしまうのだ。

そして昨晩の風呂上り。一番手前にあったこのボロ雑巾にしか見えない布を引っ張り出し、また履いてしまった。ショーツというものが、衣服に直接汚れをつけないクッションだというなら、これでも十分…だと思っていたら…。

さっき、便所に行って膝まで下ろしたそのボロ雑巾の股間部分を見て仰け反った。

ゴムが伸び切っててるわけでもなく(多少ヨレ気味)、縁が擦り切れてるわけでもないのに(全体的に色落ちは激しい)、股間部分の2枚仕立てになったあの布が破れポッコリと穴が開いて、その穴からジーンズの裏側が丸見えぢゃないか。まるでエロ本の通信販売欄に載ってるセクシー穴あきショーツみたいに。この穴を開けた犯人はダーリン?それともマイケル?(誰それ) もしかして、妻のちんこがデカすぎて磨耗したとか? さっきちびったしっこは、直接ジーンズを攻撃したのか? ギャーーーー!

この穴から風が吹き込んで風邪ひいたら、穴あきショーツは凶器ということになる。

慌てて別のショーツに履き替えた。

勿論、凶器は洗濯せずにゴミ箱へポイだ。

10月15日

しばらく前から乾いた咳をしていたビーグル犬のチロ。普段は長い鎖に繋がれ、店先の駐車場でのんびり日向ぼっこをしていたのに、ここ数日間姿を全く見せなくなってしまいました。

チロの飼い主さんは、坂を下ったところにあるサッシ工場を営んでいるMさん。去年の暮れに娘さんを亡くされたあの温和なMさんです。

16歳になったばかりのチロ。高齢ということもあり、もしやという気が働いて、どうしても飼い主さんに「どうしたんですか?」と聞けないでいる他の犬飼の面々。

昨日、3人と4匹でMさんの工場の前を通ってみました。

チロがいたその場所には、動く度にジャラジャラと音をさせていたあの長い鎖はありません。

よく見ると、チロが出入りしていたガラス扉に二枚の張り紙がしてあり、優しく丁寧な字でこう書かれていました。

「チロを可愛がってくれた皆様へ

10月10日 午前3時40分、チロは肝臓疾患のためこの世をさりました。しばらくの間、肥大した肝臓が肺を圧迫し、辛い闘病生活を送っていましたが終に力尽きてしまいました。16年間、皆様に愛され、チロは幸せだったと思います。本当に今までありがとうございました」

そしてもう一枚。

「いつもあそんでくれたチロのおともだちへ

ボクはお星様になりました。大好きなおねーちゃんのところへいきます。今まで遊んでくれたみんな、ありがとう。今までなでてくれたみんな、ありがとう。ボクはいなくなっちゃっうけど、チロパパ、チロママとはこれからもずーっとなかよくしてあげてね チロ」

悪戯盛りの仔犬にも、牙を剥き出し飛び掛ろうとする犬にも、尻尾を振り続けたチロ。チロの回りだけは、いつもゆっくりとした時間が流れていたっけ。

今朝、M家のご主人に会いました。

目に涙を溜めたご主人は、空を見上げながら言ってました。

「肥大した肝臓だけが燃え残ったんですよ…」

10月18日

先日、TVの某番組に「カラーテレビのくせに、しばらく見ているとモノクロになってしまううちの壊れたテレビを修理してくれ」という依頼があり、「電化製品の大概のモンは、水洗いすりゃ直る!」と断言するおっさんが、その手荒な修理方法で見事カラーテレビとして復活させてしまいました。

「故障の原因の多くは、汚れなんすよー」

おっさんは言うとりましたが、後ろのカバーをパッカと外してホースでジャバジャバ水をぶっかけたあと家庭用洗剤がタップリついたブラシでゴシゴシ洗って泡だらけになったテレビの内臓の姿なんて、アンビリーバボーでしたよ。

すっげ。

「中に使われてる基盤なんつーもんも、そういや仕上がったら綺麗に洗浄して組み立てるんだもんなぁ〜」

夫は妙に納得。

昨晩、突然我が家のコンロの一つが使えなくなりました。ボタンを押すとパチパチと音をたて、発火はかろうじてしているので電池切れとゆーわけではありません。

普段、五徳や受け皿は掃除してたんですが、バーナーキャップてのは、どうも「取り外す=分解」のイメージがあって躊躇してたんですよ。汚れているような感じもしなかったし。

「でも、故障の原因の多くは汚れだ、つってたよな」

このバーナーキャップなるものを恐る恐る取り外し、ガシガシと歯ブラシで洗ってみました。両手は煤で真っ黒ですが。

そしてスイッチオン。

見事復活。

おっさん、すげー。

購入次の日からキーキーと奇怪な音を立てながら頭から湯気を噴いている炊飯器や、水がちっとも出てこなくなったウォシュレット便座、「ファックス用紙をセットしましたか」メッセージを発し続ける糞ファックス、尻から異臭と塵を放つ掃除機、テープを入れてもすぐに吐き出す2階のテレビデヲ…全部纏めて分解して水洗いしたろーか(それにしても、我が家には壊れた電化製品の多いこと…)。

「洗浄後はしっかり乾かすことが重要なんすよ。夏は3,4時間程度で乾くけど、冬場は天日干しするのに3日以上かかっちゃうんですよねー」

3日間、飯炊きは野営の真似なのか。

しかも、3日間ジーッと待っても、完全復活できる確率は100%とはいえないし。

ううむ、妻、決断のしどころ…。

「ちょっと待て。おまいが掃除機分解して洗浄して…組み立て直したら炊飯器になってた、なんてことにもなりかねん」

10月19日

「ホームページ、実は随分前からこっそり見てるよ。チロちゃんの話、いい文章だったね。思い出して胸が篤くなったよ」

思いもかけない知人にそう言われて、照れる妻。きゃーヤメテ、恥ずかしい。

そういえば、韓国土産にいただいた大量一味。あれ、なかなか美味しいネありがとう。発汗作用はすこぶるあるのに、それでいてあんまり辛くなくって、いや、どっちかっつーと後味が甘いとゆーか。ついかけすぎちゃうんだよねー。キムチ鍋やったんだけどさ、取り皿の中に一味の山ができちゃうくらい。

「あ、そう。そんなことはいいんだけどさっきの話…感動するような文章書けるのに、なんで普段は下ネタばっかなの? ってゆーか、出てくる単語がさぁ…」

げっ。また話を戻すのか。

ええと、言い訳をさせていただけば、この駄文@戯言は、所謂妻のマスターベーションなわけですよ。自慰行為ってのは個人のやりたいようにやるもんでしょ。右手を使いたい心境なのに「利き腕は使うな!左でヤレ!」って強要されても、絶頂に達するなんて無理。逆にフラストレーション溜まるっつの。アレ?話が違う?

「放送禁止用語がいっぱいなんだもん…漫画だってさぁ…子供に見せられなくて困るぢゃないの」

もぅさ、いいぢゃないの、くだらないサイトの話なんて。

いやそれより今朝、びっくりしたよー。

一味効果覿面。うんこが真っ赤。血便か、はたまたこいつはカプサイシンの塊か、と思うくらい。あのうんこ、絶対辛かったね。笊で濾して乾燥させたらまた使えるんぢゃねーの?

「んもぅー!分かった!真面目な文章書くほうが自分らしくないってことねっ!」

10月20日

また台風がやってきます。レポーターが強風に煽られている映像を見るたびに思うんですが、全国各所に点在する駐車場に壊れた傘が山積みになっていたり、屋根の上に自転車が乗っかってるような所謂「ゴミ屋敷」といわれる家は、どーなってるんでしょう。海岸沿いよりも衝撃映像が撮れると思うんですが、どうですか、レポーターさん。

今日明日と、仙台も恐ろしいくらい雨が降るらしいです。

そんなわけで、昨日はいつもよりロンガーでハヤアルキィーなサンポーに繰り出したわけですが…。

隣の西N団地を抜け、曲がりくねった坂道を上り、N団地の中をグルグルと徘徊し、M団地のを通過し、入ったことのない路地に進入。

「右折して、さっきもう一度右折したから…この後左折を3回繰り返せば元のバス通りに出られるハズ」

妻は、碁盤の目状態の住宅地図を瞬時に頭に描き、指を折って曲がった角の数を数えていきます。

あともう一度左折すれば…と、数歩進んだところで仁王立ち。

「左折する道がなぁぁぁーーーーぃっ!」

ここで、引き返せばよかったのに、開き直って「ええぃ、道は続くよどこまでも〜♪」などと暢気なことを言いながら適当に前進(右折)し続けたものだから、ドツボに嵌ってしまいました。

近所といえば近所だっつーのに、完全なる迷子(子?)。

そうだ、こういうときは太陽の向きで己の位置を知れ!

空を見上げる。

どんより〜。

お日様なんて見えやしねーぢゃないか、コンチクショー。って、そもそも、お日様が右上に見えたからって、おらんちがどっちの方向か貴様に分かるのかーっ!?わっかんねー。

午後3時前に自宅を出て、汗だくになり帰宅した時間は午後5時半。

帰省本能の全くない飼い犬を持つ自分が、憐れでなりません。

10月21日

「ダイエー、どうなっちゃうんだろうねー。秋野陽子が、最近のダイエーは品薄で買いに行く気も失せちゃうんだー、なんてこといってたけど…もしかして、近所の潰れたスーパーみたいな品揃えなのかね」

「あぁ、妻がパートやってたあのスーパー?」

「そうそう。あそこ、潰れる前はすげかったよ。いや、潰れる前から酷かったけどさ。倒産の噂が流れだすと、メーカー側の方が『あんたんトコはヤバいんだからもぅ取引はしない』って言われたのかどうかしらんけど、定番商品が入ってこないんだもんねー。どこの店にでも置いてあるキューピーマヨネーズなんてのがなくってさ、聞いたことないようなメーカーのマヨネーズなんてのがどっちゃりよ。お菓子だって乾物だって冷凍食品だってそう」

「ややや、ちょっと待て。てことはもしかしたら倒産寸前のスーパーだけをターゲットにした、そーゆー工場やちっこい会社だってあんぢゃねーの?」

「おぉ、そうだなー。不景気万歳、不景気こそわが社の生き残る道〜!なんつーマイナーメーカーな。いるな、いるいる絶対」

「いいよなー、不景気万歳だなんて」

「キミもさ、不景気だー、給料カットされるかもー、ボーナスあんのかなー、なんて情けないことばっかいってないで何かないの? 不景気こそ売れるソフトを開発するとかさー」

「あるならおせーてくれ」

「これがあったら楽に会社を立て直せますよーっつぅソフトだな。うぅーん、例えば…」

「…」

「『ラクラク脱税』とか『ニコニコ水増し請求』とか『ルンルン二重帳簿』とか」

「アホか!犯罪ぢゃんか」

「そうだ犯罪だ。買って使うやつは犯罪者だ。だからパッケージだけ作ってさー。中身なんてどうでもいいわけよ。うちで使わなくなったゲーム…『ウキウキ釣り天国』あたり入れとけ。買ったやつだって、バレたら犯罪なんだから文句は言わねーべ?」

「だよなー。妻、すっげー! 名案ぢゃん!」

「だろー、妻、頭いぃー!」

その後、パッケージのデザインや販売ルートをどうするか、などと真顔で語らせる、酒の力とゆーものはやはり凄いなぁと…。

10月27日

「14個!14個だってば!」

隣のレジで叫んでいるおばはんがおりました。何があったのかと目をやると、レジ係りの人が手にしていたのはバイキング形式で欲しい分だけ欲しいモノを客がパック詰めする100円均一の握り寿司。一番大きなパック一杯に詰められたその寿司が2段。ご丁寧に幾枚ものビニール袋に入れられてます。

レジ係りのおねーさんがビニール袋からパックを取り出し、寿司の数を数えようとすると、おばはんはスイッチが入ったように「14個!」と叫び、その度に袋から取り出すのを躊躇するレジ係りのおねーさん。

えっと、一番大きなパックに文字通り寿司詰め状態に握り寿司を入れるとですね、10個入るんですわ。毀れた爪楊枝を瞬時に数えちゃうレインマンのダスティンホフマンぢゃなくても、1段目のパックに入った握り寿司が10個入ってるのはみえみえですよ。しかも、2段目だって妻の位置から見てもビッチリ隙間なく詰められとるぢゃないですか。

おねーさん、そんなおばはんに負けるんぢゃなーいっ!

心の中でエールを送る周りの客たち。その誰もが、間違いを正され赤っ恥かきまくる中年夫婦の様子を想像してるに違いありません。

意を決して袋の中のパックに手をかけたおねーさん。

そうだ、その調子だ。おばはんの呪文なんか、聞こえないフリしろ。

「14個だって言ってるでしょ。7個づつそれぞれ選んだんだから、ねぇ」

おばはん、おねーさんの手から寿司入りの袋をひったくり、後ろにいた旦那と思われる中年男性に目配せ。レジのおねーさんに歩み寄ったおっさん。

「あぁ、14個だ、14個っ! いちいち数えるのが大変だろうと思って、親切で教えてやっとんのに、客を信じんのかっ!?」

きゃーーーー!脅しですかっ!たかが100均の寿司で。

結局、レジのおねーさん、その迫力に気圧されて言われるまま14個で計算しちゃいました。

2段目のパック、おもっくそ寿司が詰まってたのにー。

斯くして、中年夫婦はこの日、見事600円近く荒稼ぎ(稼いだ?)したのであります。すげーすげー。

自宅に戻った妻、早速鏡の前で睨みを利かせてトレーニング。

「4束よ!大葉4束!4束だっていってんでしょ!親切で数を教えてやってんのに、客の言うことが信用できないっての!? 妻が1束、夫が3束、って数えながら入れたんだからっ!何で2束づつぢゃないのかって?あるあるだかスパスパだかで脂性には大葉が効くって言ってたのよっ!うちの夫は飛んできた蚊も顔面に張り付いちゃうくらい脂性なのよ!墨なんか塗らなくても、和紙ひっつけたら顔拓できんだからっ。石鹸の泡立ちだって、悪いのよ。顔拭いたタオルなんて、すぐ臭くなるし。洗ったその瞬間から、毛穴からは新しい変なシルが出てるに違いないのよ」

吊り上げてた眉もいつの間にかハの字。これ以上やると、恥部を全部さらけ出しそうなので、やっぱ妻には無理だ。

10月28日

頭痛の為、布団から這い出ることができない妻に代わって、午後出社にした夫がサラを病院へ連れて行くことになった。大安である本日は、サラの避妊手術の日…。出かける前、夫に抱きかかえられ2階の寝室までやってきたサラに、布団の中から手を伸ばし「頑張ってきなさい」と頭を撫で握手をする。先日、手術のことを聞いて友人が送ってくれたお守りも、ちゃんと首からぶら下げている。よし、それなら大丈夫だ。

妻の首から後頭部にかけ、針を刺されているような痛みは、昨晩からずーっと続いていた。別に手術のことを考えすぎてるからぢゃないとは思うのだけど…。

午前11時、夫が帰ってきた。

1時間後、いよいよ始まるんだなぁと布団の中で両手を組み、ぼんやり「うまくいきますように」と祈る妻。そこへ、2階へ駆け上がってきた夫が言った。

「あのさぁー、手術、中止になったよー」

ナヌ?

「診察台に上げるとさ、いつもみたいにハッチャケちゃってさー。で、目とか口のチェックしてもらったんだけど、歯茎と舌の色が異様に白くなってたんだよ。興奮しすぎが原因なんだけど。どうも興奮しすぎると血圧が急激に下がるみたいでさぁー」

ちょっと待て。

診察室に入って暴れまくるのは、いつものことぢゃねーか。しばらくすれば落ち着くから、血色だって戻るだろうに。

「いやだから…診察中、ずーっとだったからさぁ…こんな状態だったら麻酔は危険だろうって」

頭の痛みが針から五寸釘に変わる。わけがわからずソロソロと布団から這い出て病院に電話をする妻。

ええと、結局延期になりました。

1時間ほど長々と先生とお話をしたんですが、手術をするときは前泊して気持ちを慣れさせてからの方がいいだろうと、まぁそういうことになったわけで。その際は、前泊分の料金は必要ありませんからと、嬉しいお言葉。今週末、再度手術の日程を決め直すために病院へ出向くことに。

難を逃れた(逃れたのか?)サラの首には、友人から頂いたお守りが日の光を浴びて輝いております(笑。

 

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