■ 12月の戯言 ■

12月1日

「はじめまして」のタイトルで同じフレブル飼いの方からメールを頂くことは多いのですが、最近ではこのタイトルでも開くのを躊躇してしまう内容がドッチャリ送られてきます。

「あんたメル友を募集してましたよネ、そのときのアドレスを控えてたのでメールを送りました〜」なんつーやつ。

聞いてもいないのに自らのプロフィールをつらつらと綴り、スリーサイズが聞きたい?でもまだ教えない〜などと出し惜しみするどっかの馬鹿女。

「はじめまして☆平田です♪〜平田のことは、平田と呼んでください☆ 」

そ−か、おい平田!お前だお前。

興味がないので放っておいたら、その後も執拗にメールを送りつけてきます。

「先日メールをしたのですが、届いてないのでしょうか」「お返事、まだ届かないんですけど」なんつって。

その後には、ハウルを観て来ただの、女子高時代の友人がどうだの、お前の日常生活なんか興味はないんぢゃー!

無視し続ける妻に対して、今度は五十嵐と名乗るやつからのウザメール。

「逆援助女性紹介やエッチな女性紹介のメールに返事をだしたら、もぅモテモテ。秘伝をお教えするので興味があったらメールをくれ」という、つい最近筆下ろしをしたらしい三十路過ぎの男。折り返し、自分の体験談をお教えしますだと。

いるかーっ!そんなの。

平田と五十嵐、二人で勝手にちちくりあっておけ。

12月2日

某アウトドアショップから届いたメールで、クリスマスセールのお知らせ。アドレスをクリックしてみると、新調しなきゃと思っていたシュラフがお安い(旧モデルだけど)。

はぁはぁ、欲しい。凄く欲しい。妻、悶絶。

現在使っている封筒型のスリーピングバッグ2個は、どちらもファスナーがぶっ壊れて筒状にはならないし、筒状にならないため1つを掛け布団として使うと、目覚めた時には決まって2匹の豚に取り上げられてる始末。去勢前のBJがほどよくちんこ汁をつけまくりドット模様にしてくれたり、極め付けにサラが小便をぶちまけてくれたので、ウォッシャブルでもないのに無理矢理洗濯して中綿なんてペタンコだ。夫のマミーシュラフだって15年以上前に購入したものでヘタってる。買い時ですよね。

そうだよ、今買わなきゃどーするよ。数に限りがあるって書いてあるぢゃないか。ほれ、とっとと数量を入力してクリックしちまえ。

おぉ、神よ。その声は貴方なんですよね。

妻、無意識のうちに2とゆー数字を数量欄に入れ、次頁へ進み、そしてまた無意識のうちに各項目欄に必要事項を書き入れる。送信、そーしん、ソーシン〜〜〜。

ぎゃっ! やっちゃったよ。買っちゃったよ。

合計金額、税込み20,370円。うわっ、うわっ、うわ〜っ。

貧乏が妻をモニタの前で躍らせる。

一応、夫に報告せねばだよな。きっと言うぞ、あいつは言うぞ。

「エアマット使えば前回の野営のときよりヌクヌクだってば。新しいシュラフなんか、まだいらねってば〜つったの、おめーぢゃんか」。

あぁ、気が重い。

メールにしとこう。

「ええと、シュラフ、安かったので買いました。ご心配なく、夫の分もちゃんと買いましたから」なんつって。

送信、そーしん、ソーシン〜〜〜。

聞き覚えのある音楽が、階下からする。

くそーっ! あいつ、携帯忘れていきやがった。

12月3日

年賀状をそろそろ書かなきゃいけないと思うと、溜息しか出てこない妻。いっそのこと、毎年「高橋家は喪中」っツーことにしちゃいたいところです。

あぁ、ゲンナリ。

ゲンナリしちゃって何もする気がおきないのは、もう一つ原因がありまして。

あとはコトコトと煮込むだけ〜鍋を火にかけ、ついでに湯を沸かそうと奥の五徳にヤカンを乗せてスイッチオン。読みかけの本を手にすると、妻は愛犬をいぢくりながら読書タイムです。

しばらくすると、例えようもない不快な香りが台所から漂ってきました。

首を傾げつつ台所へ足を運ぶと、あわわ、おたまさん、一気に老け込んで腰が曲がっとるがなっ!

ヤカンの口からシュポシュポと出ていた蒸気で、鍋に突っ込んだままにしておいたおたまさんの下半身だか上半身が、溶けて変形しちゃいました。夫は「ユ、ユ、ユリゲラーだなぁ〜」などと暢気なことをほざいて笑っておりましたが、もぅね、使いにくいったらありゃしない。引き出しにどーやって収納しろっつんだか。

数ヶ月前にも、片手鍋の取っ手を同じ状態にしたとゆーのに…。

学習能力のない自分が哀れでなりません。

12月6日

今晩は宴会にて遅くなる。晩飯もいらぬと当日の夕方7時過ぎに夫から電話をもらった金曜日。ウダウダとTVを見ながら夫の帰宅を待ったが、日付の変わる頃諦めて先に寝た。

午前2時半。下腹部に猛烈な痛みを感じ、目が覚める。

隣に目をやると、いつ帰ってきたのか、酒臭を漂わせた夫が高鼾で寝ていた。

ソロソロと這い起き2階のトイレへ。3日ぶりに無事出産を済ませ、これでもぅ腹痛ともさらばだと再び布団へもぐりこむ。けれど、その後2度も刺すような痛みを腹に感じ目が覚めてしまった。

貴重な睡眠時間のうち、3時間以上も便座に腰掛け悶絶していたことになる。

朝6時。まだシクシクと痛む腹。寝不足で疲れきった体。拭きすぎて熱を帯びた尻の穴。

前日、突然晩飯いらねーと言った夫に「なぜもっと早い時間に連絡を寄こさぬか、このバカチンが」と腹をたて、大枚はたいて購入したステーキ肉を2枚平らげてしまったのが原因か。

いや、自分の分の肉を食われた夫の怨念だ、きっとそう。

食い物の恨みとゆーものは、恐ろしい。

そして、土曜日。

心優しき友人から、アクアチタンが含浸されているとゆー腹巻をプレゼントしてもらった。あぁ、コイツが金曜日の昼間に届いていれば、昨夜腹痛で何度も起こされることはなかったのに…そう思いながらも白いTシャツの上から、早速つけてみる。

腹巻なんぞ、年寄りがするものだとこばかにしていたのだが、これがかなり具合がよろしい。

温かいのはさることながら、なんといっても、よく似合っている。腹巻がこうも似合うやつなんて、バカボンのパパと自分くらいだな、などと言いつつ鏡の前でポーズを取ってしまうほど。

早速、この日から財布と通帳の隠し場所が決まり、妻、大満足。

贅沢をいえば、温かいだけぢゃなく、装着するだけで腹の肉を金に替え、自動的にその通帳に預金しちゃいますヨ、なんて機能があればいいのに。

12月7日

昨晩、うーちゃんが亡くなった。

今月の11日には4歳になるはずだった。

灰になり、軽くなってしまった彼女。

きっと、今頃は天国の広場で跳ね回っているんだろうね。

12月8日

昨日泣きはらしたお陰で、今朝の妻の顔は打たれまくったボクサーのような目になっている。あれだけ涙を零したのに、うーちゃんの飼い主さんと話をしたり、うーちゃんを撫でた時の表情や乾いた舌の感触を思い起こすたびに、まだ涙とゆーものはどんどん出てくる。いろんな方に電話を貰い、その度にまた涙。涙腺に螺子があるなら、捻って止めたいほどだ。

我が仔ではないけれど、身体の強くなかった彼女をどれだけ気にかけて育てていたのか知っていただけに、なんだか、心の臓にポッカリ穴をあけられたような焦燥感。

昨晩遅く、また携帯が鳴った。

うーちゃんの訃報を知った人からかしらと、濡れた頬を手の甲で拭って携帯を取る。

メールだった。

タイトルは「危ないメール」だと。

「サイト管理部使用料金が未納です下記口座に至急入金下さい三井住友銀行船橋支店6905539」

ご丁寧にアドレス(http://f9d.net/s/?u=T4duyWo)まで貼られていたが、このアドレス、携帯電話からでないと接続できないらしい。

サイト管理部使用料金ってなんなんだ?つか、入金しろと書いているくせに入金額を記載してないバカっぷり。

凹んだ妻に、追い討ちをかけるこの糞メール。

送ったやつ!

死刑だ、死刑!

ついでに亜細亜大学の野球部員5人、お前らも死刑だ、死刑!

国士舘大学のサッカー部員15人、お前らも死刑だーっ!

いや、その、取り乱しました。

でも、そのくらいやっちゃってもいいと思うのだがどうだ? 

「1週間後はいよいよお前も最後だな。痛いぞー痺れるぞー、目ん玉なんて飛び出すぞー」などと恐怖心を煽り、ちびったしっこもそのままで…死刑執行当日に免責にするとか。死にたいする恐怖心で、二度とバカなことやろうなんて考えないと思うんだが。

兎に角、昨晩から今日にかけて、妻の頭の中には「死」という一文字が飛び交っていたのでありますよ。

12月9日

八宝菜を作ったときに残った水煮の筍。賞味期限切れの油揚げと一緒にだし汁で煮て、酒と醤油とみりんで味をつけたら、いつ購入したのかも忘れた乾燥わかめをぶち込んでひと煮立ち。食べる直前にかつおパックを破って山の様にぶっかけて食すことに。

「今日の晩飯のおかずは何?」

帰宅した夫に聞かれて、妻、答える。

「たけのこたいたん」

「はぁ〜〜〜っ?」

なんぢゃそれ。新しく開発された宇宙食かなんかかといった、不思議そうな顔をしとりましたが、標準語ぢゃないんですか、これ。いや、標準語とゆーか、ちゃんとした献立メニューでしょうが。

実家のおかんは言うとりましたよ。

「おかーさーん、今日の晩御飯のおかづはなぁに?」

「たけのこたいたん」

「おかーさーん、今日のおかづはなぁに?」

「ふきたいたん」

たいたん、の意味を聞かれ「多分、炊いたモノ→炊いたの→たいたんっつーことなんぢゃねのかな」と頭を捻りつつ説明する妻。その言葉に、夫…

「炊くぅ?煮るぢゃないのか?米ぢゃあるまいし。もしかして、お前んちは筍と蕗を主食にしてたのか?ぐはは〜タイタン、タイタン、タイターン♪今日のおかづはタケノコタイターン♪(気に入った模様)」

主食はどんな食材だろうが「炊く」と表現するものなのダ!などと間違った解釈をしている夫はこの際無視したとしても、筍と蕗だけは、何故か煮るといわずに「炊く」おかんの不思議。

ついでに、「タケノコタイタン」と「フキタイタン」をオムライスーとか焼きそばーといった立派な独立献立名詞(なんだそりゃ)だと思い込んでいた娘の不思議。

バカは遺伝し、そして感染するっつーことですかね。

タイターン!

今後も、フード業界でタケノコタイターンとフキタイターンがギューニクノタリアータくらいの社会的地位を確立するまで(低)、妻、普及活動に専念しますよ。言い続けるだけですが。

12月13日

歩く人はウォーカー。

走る人はランナー。

ジョギングする人は?

ジョギンガーっつーんですか?

ジョギンガージョギンガー。ついついジョギンガーZとかいいそうになる妻。

某公園でジョギングしている人を見つけると、勝手に耳穴から黄色い槍みたいなやつ突き出して、頭に鉄兜被せて、あの額の部分、あそこに小人が入っていて、そいつがジョギンガーを操作しているのダ!などと想像し、「ガシャン、ガシャン、ウィーン、ガシャン」とジョギンガーの足踏みに合わせて小声で口ずさんでしまうこんな妻にも、聖なる夜はやってくるんでしょうか。

12月14日

「友人がつい最近愛犬を亡くしましてね。『できることなら今度はあの仔をアタシが生みたい!』と申しとりましたんですよ、はいはい。で、その言葉を聞いてですね、ワタクシも『それが出来るならBJと結婚してサラを生みたい』などと返したんですわ。返した後で、いやBJと結婚するよりはBJを生んだほうがいいなぁ、なんて思いなおしたりしてね…いや、そんなコタァはどうでもいいんですけど。

例えばですよ、うちの場合はホラ、ご存知の通りBJはタマとっちゃったし、サラだって避妊手術しちゃったから無理な話なんすけど、フレンチブルドッグみたいな短頭種以外にもお産が大変な犬種っているぢゃないですか。ええとええと、チワワとかチワワとかチワワとか(他に知らなかったり)…。

そこでですね、雄の一番活発な精子と雌の卵子を採取して人工授精をするわけですわ。

で、そいつを飼い主の腹に着床させて出産させる、なんつーことは…。

人が犬を生む。こりゃ楽チンですよ。妊婦さんのように腹だって大きくならないでしょうしね。生まれてくる仔の頭なんて、握りこぶしより小さいですからね、産道に引っかかって取り出せない、なんてこともない。あ、グレートデーンとかグレートピレニーズとか、グレートな犬の赤ちゃんが生まれた瞬間グレートだったらそりゃ困りますけど。でも、たいていはええと、1週間近く我慢した便秘糞ひり出すよりは、楽なんぢゃないんすかね。

まぁ、それだけにうんこしたつもりが仔犬を出産してたってこともあるでしょうけど。産湯が便器、なんちって」

アホ

え? 今小声で何と言いました? アホって…? 言ったわね。言ったな、患者の飼い主に向かってアホてーっ! 真面目にちょっと考えてたのにぃーナンデスカーッ!

「え、え、ええと、着床さえ成功すれば、うまくいくかもゴモゴモゴ…でも人間の子供ですら代理母とか非常にナイーブな問題なわけですし…つか、そんなくだらないこと考えるのよしなさい」

長々と先週参列した結婚式の様子と、禿げだろうが同じ料金を取る床屋のおやぢの話を聞かせておいて、妻のこの画期的提案をくだらないとはっ。でも着床さえ成功すればうまくいくのかそうなのか。

今晩、夢に見そう〜。

「はぃ、力んで〜っ、いや、そんなに力まなくてもいいけど、ちょっとだけ踏ん張って〜」

「はぁーひぃーふぅーへぇーほぉー」

「ちょっとボステリちっくだけど元気な男の仔なんですけど、子宮口から一度頭を出して、また潜っちゃいましたーっ!」

12月15日

Tさんとまさちゃんは結婚して6年。Tさんは二度目の、所謂バツ1とゆーやつだが、まさちゃんは初婚でTさんと一緒になった。結婚式は挙げてないという。

「でね、義母さんが写真くらい撮れってゆーのよ。写真を撮るなら、義母さんが20万円出すって」

なーんだ。毎回眼科に車で送り迎えをするたびに「あたしゃ嫁のアンタに2000円払わなきゃいけない」と文句をいい、Tさんが「お金なんかいらない」といって受け取らずに帰ろうとすると、「あげるっつってんでしょ!」と喚きながら紙幣を道路に放り投げるような義母さん。だけど、嫁のためにそこまで考える優しいトコロもあるんぢゃないの。

そのお金で純白のウェディングドレスでも借りろって? つか、40過ぎの女にはウェディングドレスは抵抗あるか…やっぱり白無垢?

「でしょー、でしょー、普通はそう思うでしょ!?」

はて…。

「それがさー、20万円…写真を撮るならその20万円で、まさちゃんにカツラを買ってやれってゆーのよ!コンチクショー!」

Tさんは、未だにメンタルクリニックに通っている。

12月17日

昨夜、11時過ぎから風が強くなり、あれよあれよとゆーまに暴風警報。風呂に入ろうと裸になり浴室の扉を開けると、強風に煽られて上下にワサワサと揺れている配電線の影が小窓に映っている。ピアノが動いた去年5月の地震のときよりその揺れは大きく、万が一ぶち切れて制御が利かなくなったアイツ、踊る大配電線が、窓を割ってこの風呂場に入ってきたら、湯船に浸かっている妻は感電死してしまうかもしれない。

ビリビリビリ〜!

浴槽の中で眼球飛び出させ痙攣する自分の姿を想像し、身震いする。

「例えば浴槽の中で感電中の妻を夫が発見して、助けようと思ったら、どうすりゃいいんだ? 浴槽から引っ張り出そうとすると、あわや自分もってことになりかねんし。うーむ。まずは風呂の栓を抜くのか? ゴム手袋かなんかして。風呂の湯がすっかりなくなる頃には、感電中の妻、死んでるぢゃねーか。それ以前にゴム手袋がどこにあるかアイツは知らんだろうし…探してる間に昇天だよな。つか、ゴム手袋ごときのヤワな代物で安全は確保されるのか? いやまて、そんなことより、そもそも風呂の栓を抜くなんてこともしないんぢゃないかアイツは? きっと痙攣が完全に止まるまで待つな。ボ〜っと突っ立って見てるだけだよな。痙攣が止まるっつーか、息が止まるっつーか、心臓が止まるまで…」

勝手に想像して、勝手に夫に腹を立ててみたり。

小窓に注意を払い、風呂椅子にも腰掛けず、中腰のまま頭髪と身体をチャチャッと洗い湯船に浸かると、もし配電線が小窓を破って侵入してもいきなり湯船にボチャンと落ちぬよう、風呂の蓋を完全に閉めた。湯面と風呂の蓋、僅か10センチ程度の暗い隙間に顔を出し、水遁の術をやってる忍者気分を味わってみる。ぐるぢぃー。

そのとき、始終聞こえていたゴーっという不気味な風の音と、風で飛んだ小石や砂が窓や外壁に当たる乾いた音に混じって、ベリベリと何やら木が裂けるような音。

濡れた身体にバスローブを羽織って脱衣所から慌てて飛び出した妻。

夫は強風でグワングワンと揺れる2階の部屋で、暢気にパソコンをいぢっていた。それでも、風の音が大きくなり、家の節々がミシミシと鳴ると、おぉー!と口をあけて驚いたような顔をしておったけど。

いやもぅ、震度3以上の地震が収まることなくずーっと続いてるような揺れだし、隣の調整池から吹き上げる風で屋根がもって行かれそうだし、柱の継ぎ目なんかの螺子だか釘だかが1,2本抜けてるような気がするし、2階だから揺れが激しいんダ!と階下に下りても、こっちは時々地面から突き上げるような揺れがあってもっと恐ろしいし(2匹はソファーの上でグースカ寝ておったのだけれど)、行き場がなくて妻は家中をウロウロ。

玄関先に広げたままの野営グッズを目にして、これさえあればいつでも避難はできるんだが…一度に全部は運べないしな、うーむ、優先順位を決めねば、などと腕を組み、もしもに備えてイメージトレーニング。

その前に、パンツはけよっつー話なんですが…。

「いろいろ心配したって始まんねーし、寝るべ」

0時半、夫は揺れる2階の寝室に入り、3分後には高鼾。妻も布団に入るが、3時半過ぎまで轟音と揺れが気になって寝付けなかった。

えーっ…昨夜の暴風が我が家に齎した被害を調査してみました。

塀の一部がボッコシと外れて(積んである木材はデッキを作るといったくせに放置しっぱなしになってるもの)、見通し最高〜(涙。外れた塀がどこに飛んでいったのかと探したら、隣に落ちとりまーっす。あぁぁ、修理のことを考えると、妻の心にも塀と同じような穴がポッカリ開いた感じ。

今朝も風は収まることなく、時折我が家を揺らしてくれとります。次はどこの塀を持っていくつもりなんぢゃ?>風

12月21日

我が家を建てたK社に電話をして、2階の屋根の一部がぶっ飛んでいったので補修工事をやって欲しいと頼む。が、実はこのK社、経営不振により倒産してしまい、只今財務処理を行っている最中。「そういわれても、人手も足りないし、できるわけない」と無下に断わられてしまう。

妻、仕方なく、数年前に大雪で雨樋が壊れたときに修理してもらい、ついでに雪止めをつけてくれたY板金屋さんに電話。

足場を組む必要があるため、その担当の人も引き連れてY板金屋のにーちゃんが早速やってきてくれた。

ゾロゾロゾロ。

3人が庭を突っ切り、風で剥ぎ取られた屋根の真下に移動。そのとき、隣の調整池から吹き上げてくる強い風が男たちの頭髪を吹き上げた。

ビュワ〜〜〜ン。

「ひょえ〜こりゃ凄いっすね〜〜〜」

彼らの顔には明らかに、やりたくね〜な〜という表情が。足場を組まなきゃならない狭いスペースの真横が、調整池との境である崖。しかも頼みの仕切りである塀すら、ぶっ飛んでしまってるから、ちょっとした風でフラリときたら、そのままダイブしちゃいかねない危険な場所だ。

「塀がないと屋根の修理も危険で、安心してやれないっすよねー?」

ここからが妻の腕の見せ所。

「一応、ぶっ飛んだ塀は回収してきたのよ、ほらここに」

泣き脅しと褒め殺し作戦で、結局、畑違いの塀の修理まで板金屋のにーちゃんにやってもらうことにした。しかもサービスで。

「ほいぢゃ、見積もりをなるべく早く送ってくださいよ、ファックスで」

「わかりました。戻ったらすぐにでも送りますわ」

「うん。電話番号と一緒だから」

「わかりました」

板金屋のにーちゃん、2人を引き連れて帰って行く。

ほいぢゃ、よろしくなーアディオス♪

そして、数時間後。すぐに送るといっていた見積書がなかなか届かないのに気づき、電話を一瞥した妻、ギャ!と叫ぶ。

そうだった、我が家の電話…ファックス壊れて買い換えたんぢゃないかっ! 留電機能もファックス機能もないちっこいシンプルテレホンに…。

12月22日

ブラインドが半分下ろされたリビングの向こう側では、Y板金屋のにーちゃんたちが作業を進めている。チャチャっと足場を組んでいき、流石、プロの仕事はトロい夫の日曜大工とは違うもんだと妻、いたく感心。

が、いつ何時家の中を覗かれるかとゆー不安で、おちおち股座掻きながら歩いたり、無駄毛の処理したり、鼻糞もほぢれない有様。いや、別にやんないけど。

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午前3時過ぎ、いきなり鳴ったチャイムの音に目が覚めた。玄関のデッキの上を誰かが歩く足音もする。その音に反応して、階下で寝ている2匹が吠えた。

昨夜、寝る前に玄関先で煙草を吸う夫に、コーヒー片手に付き合った妻。玄関デッキに放置されっぱなしの灰皿。夫が完全に煙草の火を揉み消したかどうかは確認しなかった。もしや、デッキの隅っこに溜まった枯葉に火種が飛び、今までくすぶり続けていたソイツが、まさか大きな炎になってしまったとか? チャイムは、それを発見した見知らぬ人からの救済の合図なのか?

ジットリと脂汗が出てくる。

神経を階下の玄関に集中させ、思い切り鼻で息を吸い込んでみる。

ううむ、臭くはない。

火事ぢゃねーぢゃん。

もしかして、熟女ハンターとか。街中で狙った獲物を仕留めにきた男。それか誰かに頼まれた殺し屋。今、玄関から裏庭に回って、壁をよじ登ってるのかも。このカーテン開けたら、銃口こっちに向けて窓に張り付いてたりして…キャー。

寝室の窓に目をやる。

変化なし。ホッ。

それぢゃ、泥棒か? どうしよう。様子を見に行ったほうがいいのだろうか。あぁ〜、でもパンツ一丁だしな。さみーしな。もし泥棒だったらチャイムなんか押すか? 押してみて反応なかったら、しめしめって感じで大胆に入ってくるってことなのか? でも、うちには現金なんてないしな。通帳、どこに置いてあったっけ…。電話んとこだっけ。いや、違うよなー。板金屋のにーちゃんに金払わなきゃいけないから下ろしてこなきゃいけないのに、いやマジどこやったっけ・・・。

などと布団の中で身悶えること1時間。

結局、チャイムの主よりも通帳の在り処が気になってバスローブを羽織り階下に下りた妻。

なのに、階段を下りて既にソファーの上で丸くなって寝ている2匹を見ると、無意識のうちに便所に入り、放尿を済ませそのまま2階へ上がってしまった。何をしに下りてきたのか忘れてしまっているというバカっぷり。

朝、目覚めて昨晩のことを思い出し夫に尋ねるも、チャイムの音など聞いていない。それはきっと空耳だったんだと否定される。しかも、妻が確認しに階下におりたことも覚えがないという。

お前たちは吠えた。吠えたよな。吠えたってことはチャイムの音も聞いたんだよな。足音だって聞いただろ。誰だ?誰が来たんだ? つか、妻が下りてきたのは覚えているよな。2匹に真顔で訊ねるも、答えは得られず(当たり前)。

2匹が玄関に向かって吠えたのも、厠で放尿したのも、熟女ハンターに狙われているのかもとドキドキしちゃったのも、どれもこれも全て夢だったんでしょうか。

12月24日

クリスチャンではないけれど、まぁ、年に一度のお祭りだからと奮発して飯にフルーツをトッピングすると、サラは味わう余裕もなくガッツいてその後ゲロゲロと畳の上で吐き戻ししてくれた。拭けば拭くほど奥へ奥へと入り込んでしまうゲロ粒。キノコ栽培を始めよとゆーお告げなのね、素敵すぎ。

少々寒気はするものの、こんな臭い身体でトシを越すのはナニだからとBJを風呂に入れ、いつもより時間をかけドライヤーで毛深すぎる体毛を乾かし、ようやく仕上がったと肩の力を抜くと、ヤツもケツの穴の力を抜きやがって肛門汁を漏らしてくれた。わぉ〜、脱衣所に広がるアロマの香り。素敵すぎ。

使用済み歯ブラシを取り出し、普段は見向きもしないようなタンクの螺子なんかにも注意を払い、便所を念入りに掃除すると、その後夫がコッテリネットリうんこを便器に擦り付けてくれた。ポリープできてるくせに、ちゃんと茶色に色づけできる夫の胆嚢。頑張ってるぢゃない、素敵すぎ。

そろそろ年賀状を作らねばとPCの前にへばりつき、さて印刷するべと印刷キーをクリックすると断末魔の雄叫びを上げて息絶えたプリンター。素敵すぎて言うことありませーん。

あぁ、サンタさん。

最高ですか〜っ?

最高で〜っす!

クリスマスイブに、数々の素敵なプレゼントどうもありがとう。糞!

12月25日

イベントの夜は好物メニューをテーブルの上に並べる。夫のために用意した、キノコとパルメヂャンチーズ大量投入特製巨大ハンバーグ(妻も食うけど)。妻が食いたかった刺身(夫も食うけど)。汁物は目出度いときに欠かせない(そうか?)雑煮。クリスマス・イヴというのがわかるように、直径18センチの、どう見ても2人では食いきれないケーキなんぞも焼いてみた。七面鳥は、捕獲できなかったので今回はなし。我ながら、なんとゆー取り合わせの悪いメニューなんだろうと、食う前からゲンナリするがまぁよい。だって、その昔、クリスマスだから、誕生日だからとおかんが用意してくれた晩飯メニューだって、寿司にから揚げにケーキといった感じだったものな。

食後にケーキを食うという夫とは対照的に、甘いものがどうも苦手な妻は白飯、おかづ、ケーキ、汁物という三角食べの順番に無理矢理ケーキを滑り込ませ、スポンジと餅を口の中で攪拌すると汁で流し込んでいく。

残さず食えよ。食うよ。

ぐえ〜。なんだか、まるで罰ゲーム。

ハンバーグだけでも、ジーンズのボタンがはちきれそうなのに。

ふぅふぅ。はぁはぁ。

夫も苦しい苦しいと言いながら、ケーキを頬張る。

クリスマスって…

クルシミマス、ってのとなんだか響きが似てるね…。

12月30日

明日は大晦日。高橋夫婦及び2匹の子豚は、夫の実家である金成町で元旦を迎える。嫁である妻としては、別に何をするわけでもないのだけど、やはりルンルン気分で実家に出向くとゆーわけにはいかない。

先日、受信料を払ってないくせにNHKをつけていると、れっきとしたニュース番組のくせに大晦日に放送する第55回紅白歌合戦の各ゲストの曲順が発表されていた。nobodyknows+、誰やそれ。中村美律子とか知らんしー。いや、知らない人はもっと沢山るし、曲名だってほとんど聞いたことがないものばかり。

そうそう、これよこれーっ!

夫の実家では、除夜の鐘を聞きながら年越しそばを食べるとゆー習慣がない。

31日、日没後から元旦が始まるんダー!という考え方らしく、大晦日の晩飯から正月料理が始まるんである。

で、この宴を盛り上げる最大のアイテムとなっているのが(とゆーか、田舎の連中はそう思っている)紅白歌合戦。

卓を囲んで料理に箸を運びつつ、「ありゃ〜っ、緊張して音を外しとる、ガハハ」だの即席音楽評論家たちがやいのやいの。紅白に全く興味のない妻は、もぅ飲むしかない。

1時間ほど経過すると、若い姪っ子たちは席を立ち、じーさんばーさんは眠気に勝てずその場でトドのように横になる。酒の入った兄夫婦もしかり。ふと横を向くと、夫までもが船を漕いでいたり。

残された妻と、耳障りな紅白歌合戦。

くそぅ、チャンネル替えたるど!と、じーさんの手元に転がっているリモコンを取ろうとすると、じーさん「次は誰だ。そうそう、こいつが見たかったんだ」などと条件反射で嘘をつく。

そしてまた再び画面を睨みつけ、耐える妻と鼾をかきはじめるじーさん。

ちくしょー!

去年の大晦日も、その前に実家で過ごした大晦日も、まぁこんな感じで終わった。

きっと今年の大晦日もそう。

どんどん妻は紅白嫌いになっていく。

 

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