■ 6月の戯言 ■

6月1日

本日より官僚や各省庁の間でノーネクタイ&ノー上着活動が実施されとるそうです。

軽装で過ごせば冷房を控えめにでき、電気代を節約できるから省エネに繋がるし、地球温暖化防止にもなるんダ!

んだ、んだ、んだ。その通りだ。

てなわけで、夫のために特に涼しそうな通勤ウェアをチョイスして、昨晩用意しておいたんですが…。しかも、2種類。好みと気温に合わせてどちらでも選べるように。

朝、夫よりも遅く起きてみると、ネクタイをきっちり締めて、長袖のワイシャツの上に上着を羽織り、いつもと変らぬスーツ姿でコーヒーを啜っている夫。わざわざ用意した例のアレは、妻がハンガー吊るしたときと寸分違わぬ状態で放置されとりました(見向きもされなかった模様)。

なんでよーっ!

妻の努力はどうして報われないっ!

作務衣と甚平(浴衣は去年の夏から吊るしっぱなし)。

下駄と雪駄を出してなかったからかな、てへ。

6月2日

洗濯した夫のワイシャツにアイロンかけようとしたら、胸ポケットにカンロ「ノンシュガー果実のど飴 巨峰味」が1個、入っとりました。

何の躊躇もなく、その場で封を開けて口の中に放り込んだんですが、その行為を見て「うわ、考えられない!」といった夫。

そっちの方がわけわからん。

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時々会うN(男性)さんと、道路で与太話。

治りつつある妻の顎関節症から、話は毎朝使う歯ブラシへ。

妻が使っているのは大量購入している1本98円の代物だが、Nさんが愛用しているのは、豚毛の高級歯ブラシなんだとか。

「食肉用の豚がおるでしょ。やつらの毛を歯ブラシにしとるらしいですよ」

思わず生きた豚にむしゃぶりつくNさんの姿を頭に思い描いてしまった妻。

夕飯の支度をしようと取り出した鶏肉。

その皮の突起からは、短いけれど堅そうな毛がニョキニョキと伸びておりました。

鶏肉の皮を撫でながら、またもやNさんの顔を思い出してしまった妻。

そういえば、今日は一日中Nさんの顔が消えたり現れたり。

も、も、もしかして、これは恋?(Nさん推定60歳)

6月3日

朝、9時ちょい過ぎ、便意をもよおしトイレに行きかけたときチャイムが鳴った。

「ちょっと遅れてすいません〜」

玄関に立っていたのは、胸元まであるゴム長ズボンをはいたおいちゃん。そう、今日は年一回の下水管の掃除をしてもらう日だったのだ。

台所や洗面所、浴槽、雨水などの汚水ますの蓋を開け、長い管状になった高圧洗浄機で配水管やパイプの目詰まりを掃除してもらう。この間、家内にある蛇口を全て開けて水を流す。上からと下からの水攻撃で、正に家の腸内洗浄。

汚水ますの蓋を開けてるっつーことは、今、トイレに入ってうんこをしたら、それがポットンと落ちてきて、作業中のおいちゃんに妻のうんこの形状や色、臭いがバレちゃうってことなのかしら。

「うわー、一体何食ったらこんなデカいのが出るんだよー」

「ちょっと赤くね? もしかして血便? 老い先短いんでねーの?」とか。

しかも、高圧洗浄でジュバジュバやってる最中だから、突然出てきた妻のうんこを思わず粉砕しちゃって、当たり一面ミンチ状になった妻うんこを撒き散らすことになっちゃったり?

「ぎゃー、顔についちゃったぢゃねーかよ、くせーくせー」なんて。

だめだめ。まだ出しちゃだめ。

よし、別のことを考えよう。

TVをつけると花田家の確執報道とやらで、貴乃花親方と花田勝氏の顔。

「相撲取りっつーのは、やっぱ体がデカいだけあって、うんこもデカいのかなー」

いかんいかん。行き着くところはやっぱりうんこ。

腹が痛くて脂汗が滲む。

体をくねらせながら待つこと40分。

「作業終わりましたから、蛇口閉めていいですよー」

料金3000円を押し付けるように渡し、とっとと帰ってもらうとトイレに駆け込む。

ドバーッ。危機一髪。助かった。

途中で配管が破裂することもなく、妻の尻掃除もなんとか終了。こっちの掃除は、相変わらずウォシュレットは壊れたままのため、下からの高圧腸内洗浄はできなかったけど…。

我慢の先には、お花畑がありました(快感)。

6月6日

「バルサミコ酢とワインビネガーって同じみたいだけど違うんだよー」

そりゃそうやろ。呼び方からして違うし。で、どう違うのか言うてみ?

「えーと、何だったっけな。作り方かな。もぅ忘れたけど」

けっつ。

「でさーでさー、バルサミコ酢は体にいいんだってよー」

そりゃ、食い物は何だって体にいいやろ。空腹を満たしてくれるし。これ、最大ポインツね。で、他にどう体にいいのさ。

「ええとー、血をサラサラにするとか、あ、それはバルサミコぢゃなくて納豆だったかなぁ。お肌をツルツルにするとか、ええと、そうは言ってなかったかな…、んもぅ、何だったか忘れたけど、兎に角いいのよ。一日に大匙1杯分の摂取でいいんだってー。体にいいんだからー」

けっ。

「いつだったか、はなまるでやってたもんー、いや、あるあるだったかな」

あっそ。

「いいんだってばー。体にいいんだってばー。あのね、あのね、牛乳に入れても美味しく飲めるらしいよ。200CCの牛乳に大匙1杯のバルサミコ酢混ぜて。だから、りえぴもやってみ。体にいいんだからー」

今度はバルサミコ酢教に入信したらしい健康おたくの友人がしつこく言うので、試しにやってみました(どうも、彼女は妻の体がたいそう気になるようです。愛か?)。

バルサミコ酢も牛乳も、若干賞味期限は切れておりましたが、消費期限的には大丈夫かと。

ゴキュゴキュゴキュ。

すげームカムカして吐きそうなんですけど、確かに空腹は満たされた気がします。体にいいですね(涙。

6月7日

妻のパンツのファスナー。なぜか右を向いちゃってて、上げ下げし辛いったらありゃしない。で、毎回イライラしながら直すんですけど、やっぱりしばらくすると真横を向く。これだからファスナーつきのパンツってのは嫌いなんだよーっ!

YKK、何か文句でもあるとゆーのか妻に。いや、妻の腹に…。

そっぽ向きっぱなしのファスナーにも凹むけど、パンツを膝まで下げて写真撮ってる己の姿のほうが情けなかったり…。

6月8日

湿度が高い日でも、車のドアを開け閉めするたびに指先にプチ稲妻@静電気が発生します。そりゃもぅ物凄い勢いで。バチバチバチーッ! 

妻はもしかしたら、ミュータントなのかもー。おーし、これで今後の生き方に目標ができましたよ。ミュータントX(AXNのドラマ)の一員になって悪と戦うんダー! 当面は英語が喋れないので日本国内で。

悪いやつは誰だー?まずは道路公団のOBやら賄賂に手を染めた政治家やらハレンチ行為やった公務員やら、おめーら全員そこに並べーっ!おーし、そこで待ってろ。今バチバチしてやっからな。

車のある場所まで走るミュータントりえぴ(鈍足)。その隙を狙って、全員逃走。

ダメぢゃん。

なんてゆー妄想に昨日は一日浸っておりました。ダメ人間まっしぐらです。あ、ミュータントなんだった、てへっ。

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頭髪が伸びてきたので、文房具屋で売っているちゃちな鋏でチョキチョキとカットしてみた。もう少し、あとちょっと、などと思いながら鏡も見ず俯き加減で鋏を入れていくととんでもないことに。

昨夜、飲みすぎてボッテリと浮腫んだ顔。頭には張り付くように乗っかったヘルメットヘアー。

北朝鮮戦とゆー言葉を口に出して喋ると、どうしても「きたちょーしぇんしぇん」になってしまう滑舌のあまりよろしくない妻ですが、この頭髪を真っ黒に染めて、黒縁の大きな眼鏡をかけ、マイクを持てば「ハイ、やってきました街かどテレビ〜」なんつって、スムーズにお喋りできるようになっちゃうハズ。

つーか、どーみても鏡に映った妻の顔が大木凡人に見えちゃうんですけどーっ!(涙

以前はかまやつひろしだったのに…(昇格したのか?)。

いっそのこと真っ白く染めちゃえば、文才が上がるんでしょうかね。司馬遼太郎みたいに…。

6月10日

中田がサッカーパンツ(てゆーの?アレ)を太股の根元までグリグリと巻き上げて、艶かしい半ケツを見せながら練習している姿をみて、

「あぁ、こーゆー履き方が今、若者の間では流行っているのか」と。

妻、ストレッチパンツ(長ズボンっつーやつ)の裾を両手で掴むと思い切り引っ張り上げてみる。 太股が“色っぽい”を遥か昔に通り越して逞しく横に成長したため、ストレッチパンツ、膝より上には引き上げられず。

これもアリ?

十分イケてる?

流行にちゃんと乗っかった?

半ケツは見せらんないけど…。

なんなら大サービスでファスナー全開にしてケツぢゃなくて陰部見せちゃうよー、なんちって。

数時間後。 血が通わず、妻の足先は冷たく紫色に…。

ファッションて命がけですのー。

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ご近所の、それはそれは穏やかなAさんご夫婦がワンコを飼い始めた。長年連れ添ったビーグル犬が老衰で亡くなり、随分と長い間気落ちして「もぅ新しい犬は迎えられないかもしれない」とおっしゃっていたけれど、やっと悲しみを乗り越えたようで妻としてもとても嬉しい。

笑顔の戻った奥様に、以前「今度はBJ君みたいなワンコが飼いたかったんですよ」

そう言っていただいた。

その言葉の最後には「サラちゃんぢゃなくて、BJくんみたいな」とゆー気になる言葉がくっついていたので、ちょいと凹んだりもした飼い主なのですが(笑。 同じ犬種なんですよー、サラとBJは。一応ね。まぁ、性格とか行動のことを言ってるんだろうなってのはわかったからいいんですけど。

で、随分と探し回ったんだとか。

昨日、やっと3回目のワクチン接種が終わったらしく、初めての散歩で我が家の前を通って声をかけてくださった。

「ね、BJ君にそっくりでしょー」

奥様の連れていた仔犬は、…ボストンテリア…でございました。

「ホント、泣きたいくらいそっくり…」

6月14日

去年のGWから放置しっぱなしの裏庭のデッキを6月中にはなんとしてでも造る!と夫が言う為(尻に火をつけたのは妻ですが)、野営やカヌー、里山登りなどのアウトドアの予定は一切ナシ。

そんなわけで、妻、フラストレーションたまりまくりです。

うずうず。

「つまんなーい、つまんなーい、お外に出かけたーい!」

てなわけで、一人アウトドアやりました。

つっても、目的地までは僅か数歩。

裏庭の草むしりでござる(アウトドア?)。

顔を出したての雑草は引き抜きにくいからって、伸びるのを待っていたらあらビックラ。妻の背丈ほどに伸びた葉っぱがあちこちに。

でっかいバケツに毟った草を入れていく。

で、ゴミ袋に移すわけでもなく、こいつらは高さ1メートル程の我が家の塀を越えて、隣の調整池に「食らえ!肥料ぢゃ!」と妻に投げられるのですが…。

おーし、この高校時代ソフトボールで鍛えた豪腕(太いだけ)で、なるべく遠くに投げてやるゾ。ドリャー!

バラバラバラ〜。

ぐわーっ!

うまく放ったつもりが、バケツの中身、塀を越えずに殆ど全てが何故か妻の頭に。

泥と砂と小石と雑草とミミズと蟻んコと、尻尾のところに鋏があるなんかよーわからん黒い気持ち悪い虫に塗れた妻。シャツの中にまで何やら動く小さいモノが入ってるしー。痒い!痒いよーっ。5分ほどその場で暴れて身なりを正し、もう一踏ん張り。

引っこ抜いてバケツへポイ。引っこ抜いてバケツへポイ。

おーし、今度こそ!

ドリャー!

バラバラバラ〜。

なぜーーーーーっ!?(この後、5度繰り返すも3回失敗。おばちゃん、半泣きですけど「老い」だなんて絶対認めませんからーっ)

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買い物をした帰り、そういや生理用品を買うのを忘れたと思い、近くのコンビニに立ち寄る。

レジには冴えない若い男子アルバイト。

おばちゃんは、別に恥ずかしげもなくスーパーサイズのタンポンの箱をドカリと置いて、金を払う。

多分20代と思われるその男子、「ありがとうございました」ではなく小さな声でこういった。

「あと5分で自分、上がるんですけど…」

はぁ?

「お茶のみにいきませんか?」

なぬー?なぬー?

もしかして、これってにゃにゃにゃ、にゃんぱってやつですか?

いや、遠慮しときますけど。

一瞬迷惑そうな顔しちゃいましたけど、実は内心すげー嬉しかった妻40歳。例え彼がユニチャームの回し者で、スーパーサイズのタンポン使用時の感想を聞かれるだけだとしても。そりゃもぅ、その場でいきなり踊り出しそうなくらい。今日のこの日をナンパ記念日とかいって、祝日にしちゃうヨ(妻にとっては既に年中祝日みたいなもんだけど)。614事件とか言っちゃうヨ。ルンルンルーン♪

ついつい浮き足立って、スキップしそうになる両足に力を入れニタニタしながら出口へ進む。

背後でボソボソとさっきのアルバイト男子の声が聞こえた。

「あと5分で自分、上がるんですけど…」

別の女性に声かけとるやんけー。誰でもいいのかよ、おめーっ。つか、ちゃんと時間内は働けーっ!

6月15日

「例えば、交差点で貴方は右折しようとしています。右折、分かる? 右に曲がることね。あ、それくらいは知ってるか。ごめんごめん。まぁ、大きな交差点の場合、たいていは右折専用の信号があるんだろうけど、ありませんでした、ってことで話を進めるよ。

おーし。

んで、貴方の車はええと、前方の信号Aが青だったんで、前の車に続いて交差点の中央まで進みました。紫色のコイツが貴方の車ね。

で、そこまで進んだとき、目の前に見えるBの信号。これが赤色でした」

ふむふむ。

「さて、貴方はどうしますか」

止まる。赤だもん、勿論止まるよ。

「やめとけ…取るの、やめとけ。取ろうとかも思うな」

ええと、車の免許を取得しようかどうしようか悩んでいた頃、行きつけの喫茶店のマスターが「ほほう、それなら」と出した質問に真顔でこう答えた妻(実話)。

そんなダメ妻ですが、立派に免許は交付していただきました。

あと一歩だね、頑張れー>うり子さん

6月16日

散歩でしょっちゅう目にする看板。

どうしても「タ」の後で一呼吸置いて読んでしまう自分をなんとかしたい。ソコだけ浮かんで見えちゃうんですよー。写真をmouse overしたみたいな感じで…。

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ビーグル犬リュウ君のいるお宅の玄関先に、千切った新聞紙が敷き詰められた小さなダンボール箱が置いてあった。

おや、もしやハムスターでも飼い始めたのかしらん?

それにしてもハムスターを外飼い?

散歩仲間と喋っていたら、リュウ君の飼い主にツバメの糞対策に箱を置いているだけなのだということを教えていただく。

見上げればなるほど、軒下に泥や枯れ草で造った小ぶりの巣。

「息子なんて、何回頭に糞を落とされたことか。でもツバメが巣を作ると、その家は幸せになれるっていいますからねウフフ。壊せなくて。今は卵がかえるのが楽しみなんですよー」

そうおっしゃっていたのに。

昨日、糞受けの小箱はなくなっていた。

巣はどうなったのだろうと見上げると、横半分がパックリ剥ぎ取られたように崩れていた。

「カラスに悪戯されちゃったみたいなの。卵ね、何個か食べられちゃったみたい。食べられなかった卵も、いくつか落ちて割れてたのよ…」

肩を落とすリュウ君の飼い主さんには言わなかったけど…。

それ、絶対カラスぢゃなくて蛇ですよ、蛇。

こーゆー場合、リュウ君ちの期待していた幸せは、遠のいてしまうんだろか。

6月20日

某MIXIとゆーところに、先日冷蔵庫の野菜室で発掘した萎れたアボガドについてはちょろっと書いたんですが、本日、再び新たな謎の物体を発見(いや、あることは分かってました。分かってましたが見なかったことにしてました)しちゃいました。

茶色く変色しくさって、ボコボコしたコイツ。

小惑星のように見えますが(見えん)数ヶ月前までは「グレープフルーツ」と呼ばれていたものです、多分。

長期に渡り放置されたコイツの尻は平らになり、床ずれを起こしております(黴ですが)。

ついでなので、包丁を取り出し、パックリ二つに切ってみようとしたら…。うひょー、皮がゴムのようにグニャグニャとしていて、なかなか刃が入りませんヨ。刃元を強引に突っ込んでなんとか切断。

スカスカしてるけれど、視覚的には身は大丈夫そう。

しかもフラッシュたいて写真を撮ったら…。

みずみずしさが倍増してるしね(勘違い)。てことで、勿体無いので食ってみたんですが、ナンですかっ! 下の写真の期待を見事に裏切り、蒸した蜂の子食ってるようなこのパサついた食感は。いや、蒸した蜂の子って食ったことないけどさ。まずーっ。

アボガドを発見したその前は、毛虫か?と思わず仰け反りそうになった二回り以上も小さくやせ細ったキウィが出てきたし…。

もともとフルーツというものを、妻は普段好んで食べません。だから買いません。

買ってくるのはたいてい夫。

しかも、こっそり。

そして「妻に勝手に食われないように」と思うのか、冷蔵庫の奥のほうに突っ込むのです。優しい妻は、勿論「あぁ夫が食べるんだろうな」と思って放置。

その結果がコレですよ。

隠していたことも忘れる夫。

けっつ、まるで犬だな。しかもダメ犬。

なーんて毒を吐いてたら…腹がちょっと痛くなってきた。

妻もやっぱり犬並の、似たもの夫婦ってやつですかね。

6月21日

風呂上りにバシャバシャと顔に振りかけていたローションがなくなってしまったので、化粧品売り場のコーナーへ。同じものをもう一本!と思ったら、ブツが棚から消えとりました。ありゃりゃ。

美白効果を求めるなら、コラーゲンの入ったコイツが効くんだとか、ハイドロキノン配合ぢゃないとネだとか、いやいや、繭に含まれるセリシンがええだとか、マンゴスチンのエキスやらアロエのエキス、海草のエキスなんかも捨てがたいですヨだとか、んもぅ、何がなにやら。全部混ぜた究極の一本つのはないのか? いや、いっそのこと馬油でも塗りたくってやろうかいな。

悩める妻ににじり寄ってきた一人の女性。

「お肌が乾燥してらっしゃいますね、奥様にはコレがよろしいかと。コレはですね、気になるシミやくすみにもよく効くんですよ〜。ヒアルロン酸となんちゃらかんちゃらを配合してうんたらかんたら」

おぉぉ。

頑固なシミには酸が効く!サンサンサンサン、サンポール♪なんてゆーCMもあったしね。

そうっすかそうっすか、と疑うことなく無学な妻は彼女の勧める商品が並んだ棚からムンズと一本掴んでレジへ。

で、自宅へ戻り早速洗顔を済ませて、新たに購入したローションとやらを顔にぶちまけてみることに。

あら?

酸はいずこへ。

妻が購入したのは、女性が勧めたものではなく、同じような容器に入った「アルブチン」と書かれたもの。

何だよ、アルブチンて。或るブチンて。或る不細工なチンて。なんだか、何度も声に出すと、顔に塗るのを躊躇しちゃうね。

6月23日

鳩間島の美しい海を見ながら砂浜に腰を下ろす。隣には愛しの豊。女の背中に回された彼の腕。

「暑いね」

そういって、彼は座ったまま着ていたシャツを脱ぎ捨て、女を抱き寄せた。

豊の温かい胸板。耳を当てると心臓の鼓動が…。

アレ?

うっそーん。いつこんなにモッサリ胸毛ガ生えちゃったの? いや、まぁいいけど。胸毛で男を判断したりしないヨ、大人だもん。豊の胸毛なら、毛根の奥の毛乳頭まで愛してあげるスリスリ。

豊は女の肩からうなじへと指先を這わせる。

きた、きた、キターッ。

顎を掴まれて、ほいでもってグイっと顔を豊のほうに向かされて、ブチューってくるのよね、ブチューっと。女、大興奮の舌なめずり。

やっぱ、こーゆーときは目を瞑ってなきゃいけないのかしら。

でもでも、キスするときの彼の表情を見逃すなんて勿体無い。

彼は自分の左頬を女の左頬に押し付けてきた。

あぁ、愛しの豊の鼻息ブハーッ。荒々しくてなんだか逞しいわ。長〜いキスの前の深呼吸ね。

薄目を開けたままの女。準備はOK。さぁ、コイッ!

プチュ。

素敵。柔らかくて湿った豊の唇。女、たまらず豊の顔を両手で挟み、舌を入れようと試みる。

ジョリジョリ。

あれ? さっきまで髭剃り直後のすっきり顎だったのに…僅か数分でもぅこんなに生えてきたの?

女、ちょっとだけ身を引いて豊の顔全体を確認。

ぎゃーーーーー!

ペナルティのワッキーぢゃねーか! またお前かっ! いつの間に変身しやがったんだ。こないだは赤ヘルに赤褌で登場したと思ったら、今回はエアロビインストラクターメイクで登場だし。

とゆーところで目が覚めました。

首括って死にたい気分。

もう一度眠りにつけば、白い砂浜で豊と並んで座っていたシーンまで巻き戻せますか? 今度こそ、豊がワッキーに変身しないように、ずーっと監視を続けてるから、神様お願い。

つーか、夢の中とはいえ、胸毛モッサリのときに気づけバカ!バカバカ、妻のバカ!

げんなりしながらパンツ一丁で部屋をうろついていると、夫、いきなり妻の下っ腹をムンズと掴み笑いました。

首括ったら、重みで綱が切れて自殺失敗、そんな気分。

6月26日

ファンというわけではないけれど、他に取り立てて見たい番組もなかったのでバレーボールの試合をTVで観戦。

相手チームがサーブをするとき、ネットに張り付いた前衛の選手たちが両手を高々と上げるあの仕草を見て、妻はいつも思う。

「強烈な腋臭の持ち主だったら、その臭いで相手をとっちめることができるんでわないか」と。

アメリカ軍は、けっこう真面目に最異臭兵器とゆー臭い爆弾なるものを開発しとるとゆーぢゃないですか(これって成功したのかね?)。人を殺すんでわなくて、臭いで戦意を喪失させるとゆー爆弾。

元関脇力士だった故蔵間氏も、「腋臭のきっつい力士と当たると、力が入らず試合放棄することがありましたねゴッツァンデス」と言ってましたよ確か。

「ね、強烈なスパイクが打てるとか、どんな球でも高さでブロックしちゃうとか、そーゆーのと同じくらい腋臭も立派な武器になんね? もっすご臭い腋臭だったらさ」

「ナルホド! 言えてる。腋の臭いを消す薬っつーか化粧品っつーか、いろいろ売ってるけど、逆に臭いを付けるやつだって売っていいよなー。んで、腋臭持ちぢゃない選手もバレーの試合のときにつけんの」

「だよねー」

「だよねー」

「ねー」

珍しく夫婦の意見が一致。どうですかね、試しに作ってみては>花王さん

6月27日

両手と両膝をつき四つん這いになってみる。

愛犬(焦点の定まらぬ頭の弱い方)が口にオモチャを咥え目の前にやってくる。おぉ、引張りっこをやりたいのだな、とそのオモチャの端を握ろうとしたら、プイとそっぽを向き走り出した。妻の右手、虚しく空振り。

くそう、してやられた。

愛犬(デブで口の臭い方)はツタツタと部屋の隅まで走り、妻の方を振り向いた。妻をバカにしたような顔をして。

ムッカー。

ちくしょう、負けるもんかっ。

妻、四つん這いのまま愛犬(うんこを大量にひり出す方)をバタバタと追いかける。

咥えたオモチャを振り回しながら、楽々とすり抜け、部屋の反対側へと走っていった愛犬(ときどきカラカラ声をあげる方)。

待てーっ!

妻はこうやって、愛犬と戯れ(サラはあんまり相手にしてくれませんの)、少しでも犬の気持ちに近づこうと努力しております。

嘘です。

ヲツムのレベルが一緒なんだと思います。

で、1時間ほど膝で床を拭き掃除犬になってみたら、片足を上げておしっこしたくなりました。

嘘です。

擦り切れて穴が開いとりました(知らずにこの状態で買い物にも出かけたけど)。

口を開けたまま時折涎を垂らし、愛犬と戯れる姿をずーっと無言で見ていた夫。

「安いズボンなんか買うからだよ」

アホ面で遊んでいたことは、非難の対象にはならないらしい。

6月28日

思わず顎が外れそうなものを見つけてしまった。

コレ

うわー!

若者の間で大ウケだとゆーのに、ちっとも知らなかった妻。改めて己のトシを感じる瞬間。

つか、漫画グソのカタチにする理由がわからん。

6月29日

久し振りに実家の母と長電話。話の流れでついでに父の様子を聞く娘。

「おとーさんは? 元気にしとるん?」

「知らんっ!」

うわーうわー。

「朝、ボケ〜っと座っとるけん、プリン(実家の犬)の散歩行ってきてっちゅっても『あぁ』っち言ったまま腰上げんけね。こっちは仕事に出かける前に洗濯やら掃除やら、やらないけんことが山ほどあるのに。そうこうしよるうちにだんだん日が昇ってきて暑くなるしさー。痺れ切らして『アタシが代わりに行こうか?』っち嫌味っぽく言ったら『ありがとー!』っち。爽やかに『ありがとー!』よ! ニコニコして『ありがとー!』よっ」

ブーハーブーハー。

受話器に母の荒い鼻息がかかる。

「47インチの薄型テレビ、あれを買うとかいいよるが」

でたーっ。

買い物好きの父。電化製品だけに及ばず、「安かったから」といっては台所用のラップだのボールペンだの突然大量に買って帰ってくる癖が未だに抜けないんだという。

「あるのに買ってくるんよ。沢山あるのにーっ!誰がそれだけ使うんね、っちゅーんよ」

うわうわ。

そんなことより、テレビの件は夫婦間でどう解決したのよ。安くなったとはいえ、けっこうなお値段しまっせ。

「今だってこのうちに何台テレビがあると思っとるんねっち。6台よ、6台! 二人しかおらんのにぃぃぃー!」

一人につき3台だね。すげーすげー。録画なんかしなくても、裏番組も側面番組(なんだそりゃ)も同時に見ることができちゃうんぢゃん、便利ー(そうでもない)。

「でも言うても聞くような人やないけんね〜。そんな高いモン、いらん!っち文句言ったら『一円二円のことでガタガタ言うな』っち」

すげーっ。

とーちゃん太っ腹! ウン十万円もする商品が、彼にかかれば一円二円の代物になっちゃうんダ!

「なん感心しよるんね。病気(脳梗塞)してからお金の単位が分からん(後遺症)だけっちゃ、もぅっ!」

いつものことだけど、やっぱり今日も母、おかんむり。

父の買い物癖は今に始まったことぢゃないからね。

もぅさ、病気なんだから。病気と思って諦めるしかないね。脳梗塞はある程度治ったけどそっちは特効薬が見つかんない難しい病気。つか、むしろ悪化しちゃったっつーかさ、不治の病だと思って…ゲハハ。

「うぐぐーっ、いくら娘とはいえ…うちの亭主のことをアンタにそんな風に言われたくないわっ!」

口は災いの元。親しき仲にも礼儀あり。

つーか、とーちゃーーーん!

47インチてどのくらいの大きさかわかってる? デカいよ。かなりデカいよ。そして家は小さいよ。

お金の単位だけでなく、長さの単位についての理解も、どの程度なされているのか心配するところでありますですよ。

 

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